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赤松林衰弱立ち枯れ・青色腐朽菌の拡がりと抗体抗菌反応バイタルサイン Waldsterben 松林枯死進行 Insight 木の内科-41
各地で松喰い虫被害防除の農薬散布を続けて半世紀あまり、松枯れは止まらない。「赤松枯れ死」イコール「松喰い虫被害」ではなく、台風・大気汚染・酸性雨・雪雨氷、土壌変化、寿命、都市化等による衰弱で昆虫や腐朽菌がとりつき立ち枯れる。
赤松の樹体にとりつく「青色不朽菌 Bläuepiltz Blue rot fungus 」は木材を分解する菌類で黴びの一種。樹勢が旺盛で抵抗力が強い樹体には寄りつけず、一旦とりつくと細胞壁をジワジワ分解し腐らせます。
白太辺材から放射髄線に繁殖した菌が黴び盛り原木の木口。芯央赤身まで到達して一旦止り、更に芯央へ。土場放置が長いと白色腐朽菌も混じる。
芯央の赤身には脂分・抗体色素があり、立ち木を支え倒れないように頑丈で軸芯となる木質化した組織ですが生命維持活動は続き、直ぐには菌類に犯されません。腐りが著しい丸太は、衰弱立ち枯れ死倒木後の玉切りです。
立木が損傷したり、衰弱した樹体では樹皮・木肌から辺材白太部に腐朽菌が入り、放射組織から色変していきます。玉切りカット面には、繁殖した菌の黴び吹きが現れ、全身にまわって木の細胞壁を分解し腐りが進みます。
玉切り木口は、衰弱から腐朽菌が侵入して拡がり、樹体組織細胞を分解していく様子が鮮明です。
伐採から半年から一年程度の時間が経過し枯れ死立木 赤松枯れ集積土場にて観察記録 安曇野市明科町荒井20171219
衰弱したこの赤松は、立ち木状態で青色腐朽菌が樹皮や損傷部から木部放射組織に侵入、白太辺材部全体へ拡がります。最近、この「青入り」を「青変色菌」とか「ブルーステイン材」と言い替えて売りつける業者が現れています。ステインとは、木工の木材塗装では下地着色化学染料のことです。
抵抗力があり、抗菌抗体が残存している樹体は、芯央から樹皮周縁へ抗体色素が動いてセルフキュア・防衛反応を起こしています。水分が一定以下になると増殖はとまり、乾燥状態(含水率20%以下)では、仮死状態のまま内部に残り青色は消えません。
抵抗力のある樹体は、抗菌・抗体が働いた芯央色素の移動バリアが残るバイタルサイン(生命活動痕跡)
抵抗力のある樹木は(変色・青黴び)が入らず、抗菌、ダメージ治癒力があるうちは、芯央から脂・抗体色素移動(カット面木口に波・突起状の色班)がおきます。衰弱していない赤松も伐採されて少し混じっていました。
樹皮害傷部(左)へ抗体色素異動が起きています。
目詰まりで、しっかりした年輪層に脂分が多く、抵抗力がある60年生の健全な自然木 芯央から抗菌・抗体色素移動が激しい、まだ衰弱していない樹体 。
脂吹きだしガード 土場接地面から樹皮に白色腐朽菌が入りはじめる。
マツクイムシ防除の農薬空中散布効果実証林現場調査(松枯れを考える住民の会)2018年3月 ネオニコ農薬空中散布連続5年10回の立ち枯れ死続く市有赤松林 (松本市四賀地区反町)
エリア内で調査木幹の番号が新しい伐採木の殺虫薬燻蒸施業が行わていました。農薬散布効果検証を撹乱します。昆虫・小動物の気配はなく農薬の臭いがする沈黙の林内。赤松の枝葉が枯れ落ちているので、林床は乾燥して明るい。木喰い虫防除連続5年ですが、天空林冠の枝葉は枯れ続けWaldsterben 森林枯れ死状態でした。
青色腐朽菌が入った衰弱樹 2017 秋期伐倒。芯央赤身から樹皮周縁へ抗体色素がダメージ方向へ動き、抗菌防衛反応のバイタルサインが残る。新番号に付け替える
枯れ死後翌年に生える「一口茸」のナメコ風幼菌 農薬空中散布効果追跡木102本中三本ありました。 前年衰弱枯れ死のバイタルサインの一つです。 長期農薬散布しても松枯れは止まらず、枯れ続けている現実。現場でのF教授による推計は、枯れ死16本 / 年でした。
林内では農薬の臭いが残り、この日参加した庭師は気分が悪くなるほど。昆虫のいない沈黙の林床谷筋。参加地元古老の話では、川の鰍や小魚の姿は消えて自然の生物はめっきり減ってしまったといいます。
この広域松枯れ山の北方に高速自動車道路トンネル口があり、谷筋に排気ガスが漂い、松枯れ死が拡がる様子がGoogle Mapでも確認できます。高速自動車道の影響は否めません。
枯れ死樹木は、農薬散布や木喰い虫殺虫剤燻蒸処置をしないで伐採し、早急に林地から搬出して焼却処理するのがまともな里山林施業です。利害が絡む人々は本質を見失い、迷走してきました。
健常赤松伐採木に入る青色腐朽菌 2016 唐松一条間伐林地 入山辺財産区・県有林
健常な樹木でも春先から秋口に赤松や唐松を伐採し原木丸太を土場放置すると、直ぐに樹皮やカット面から青黴びが入ります。厳冬期新月伐採で直ぐに製材・乾燥すればならば、黴び変色は少ない。特に春夏の水揚げ期に伐ると、黴びが入り、建築・家具材には使えなくなります。早期に製材乾燥しないと黴菌はジワジワと拡がり腐る。空気を遮断したり、土中水湿環境では腐蝕菌の活動は抑えられるので、脂の強い材は松杭になりました。
唐松間伐林内の自生赤松 (50-60年輪) 2016年 9月入山辺県有林
健常な赤松伐採原木の玉切り木口
芯央赤身が急速に拡がる「伐採ショックの抗体治癒反応」で色差が鮮明に現れます。冬期伐期木2018年 2月
木材市場ハエと製材所土場置き (中信・松本地区)
健常赤松の抵抗力の強い材質組織
衰弱し腐朽菌にとりつかれた樹体に比べると、樹皮が規則的で脂や赤身芯材部の抗菌抗体を蓄積され、抵抗力があるものは年輪が緻密で脂分が多く、玉切り木口カット面の赤身コントラスト色差がしっかりしています。逆に、成長が速く年輪幅が広いもの、脂・赤身色素の少ないものは弱く、ダメージを受けやすい。生育した環境により、肥大虚弱な個体と厳しい環境で屈強な性質となる抵抗力の違いは大きいのです。
松は成長は速く、白太材は傷み腐りが速い
肥沃でない裸林地に真っ先に侵入して林床土壌に根を張り、枝・枯れ葉を落として有機物を増やし肥沃にします。立ち木は成長は速く、樹体を護るため松脂を多く分泌し、粘りがなく枝は折れやすい。白樺などと同じ生態循環系のファースト樹種ですが、傷み易い白太に昆虫や腐朽菌が素速くとりつき、始末される森林循環の先駆けなのです。里山林では、樹齢50年~70年ほどで自然更新されていきます。倒れたり衰弱して立ち枯れすると、たちまち昆虫に喰われ、微生物に分解されて土に帰ります。
赤松は、高度経済成長期から燃料革命で薪として使われなくなり、木毛、木箱の梱包材や土木資材、建築小屋組み・荒床の用途も消え、松林の維持管理も遠ざかりました。古代から自然林を巧みに利用してきた山里の暮らしも激変したのです。公害もないとされた「マツモト」では半世紀遅れて松枯れがひどくなり、さらには木材の扱い方が伝承されず、樹木の知識、人と木の関わりもキハクになりました。
※ 次稿に脂松・赤松の材質、マテリアルトリートメントを掲載板します。
「脂松・赤松の青入り「白太(辺材)落とし、赤身(芯材)使い」がウッドワークの基本 青色腐朽菌は消えず芯央へ拡がる 赤松テーブルの芯材木取り 松ヤニロジンの抗体活性 木の内科-42」に続く。
ⓒ2018 , Kurayuki Abe
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木の総合学研究2018 「赤松の抗菌・抗体レジスト・バイタルサイン」「ネオニコ農薬空中連続散布の松山市有林枯れ死」「健常赤松原木の木口組織にみる伐採ショック、抗体治癒反応」
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