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赤松・脂松・姫子松の青入り「白太(辺材)落とし、赤身(芯材)使い」がウッドワークの基本|青色腐朽菌は消えず芯央へ向かうから赤松テーブルは芯材木取り|松ヤニロジンの抗体化成 Insight 木の内科-42
材質の狂いをなくし、黴び・木喰い虫を抑える「耳・白太落とし」は木材利用の初歩基本。肥大成長する軟質で養分の多い白太(辺材)は水分が多く、乾燥収縮歪みがおきる。抗菌・耐久性のある赤身芯材部だけを使うのがプロの常識でした。
「青」入りは、松材の青色腐朽菌がとりついた欠点材です。抵抗力が無くなると、白・赤紫・オレンジ・黒色の黴腐菌もジワジワ拡がり、木材は静かにゆっくり腐り崩れます。
原木丸太は雨ざらしの土場置きで黴びがつきやすく、木口に「青色」サインがあると製材後に両耳落としが必須となります。この白太部分をカットすると使える部分(歩留まり)はかなり減り、もったいないのですが、材料管理や木取りのコモンセンスです。青黴が入った材料を「ブルーステイン」木材といいだし、売りまくる木材会社や建築家・家具職・販売店は、怖さを知らないのでしょう。
赤松の脂が多い樹体は水湿耐久性が強く、仕上りが次第に飴色にかわり、工芸品や室内造作で「脂松」と呼ばれ趣のあるテクスチャーが尊重されます。
冬期伐採の姫子松原木は、四月になれば「青」が入る。
飛騨産出のヒメコマツ原木丸太は、彼岸前には製材を終了しないと白太辺材に青色腐朽菌が樹皮剥がれ部分・切断木口から入ります。もちろん、春から初冬までの期間には伐採できません。飛騨森林組合・製材所の常識です。
「赤松・脂松」の「青」入り白太両耳落とし
一旦、「青」が入ると細胞壁を通過しどんどん拡がり、芯材部赤身まで止まりません。 伐採製材後、自然乾燥12年で厚板内部白太全体に拡がる。更に、赤紫褐色の菌が現れ、セカンドステテージへ進行する気配。
芯材赤身にできる「ヤニツボ」 脂溜まりが見えます。脂成分には抗菌抗体があり、そこで菌止。脂松は赤松の脂細胞が著しく発達した樹木ですが、製材時は白太と芯材赤身のコントラストは鮮明ではなく、脂色は目立たない。「両耳をおとせ」物騒な職人コトバであります。
松ヤニロジンの化学的活性
松ヤニ成分には様々な工業材料成分が含まれています。樹脂からテレピン油をとり、電子機器のハンダ付けSoldering Fluxは、金属表面の酸化皮膜を除去する重要な機能を発揮します。ソルダージョイントのバイプレーヤーですが、製紙原料や添加物につかわれ、飲料にまでなる優れものです。昆虫や黴菌を抑制するのは、植物由来の化学物質の活性によるもの。松は、化学工業にも重要なマテリアルリソースです。陶芸で釜焼きに使われる赤松薪材は、高温で燃えて窯変を起こす作用があり、還元化成反応をおこす松ヤニには化成作用の不思議な力があります。
脂松製材
製材時は、はっきり青入りは見えないのですが、多雨多湿の日本では、腐朽菌は地面・空気中に存在し、湿気があると直ぐに侵入します。
脂松 174yrs.元口径 590mm x 末口460mm 4.4mL 赤身芯部110yrs. ~白太(辺材)64yrs. 里の樹(五寸釘・コーチボルト打ち込みあり) 2005年秋期伐採 / 2006年4月製材/ 2010年 白太耳落とし幅ツメMT 出産地:長野県中部安曇野地元材
一度とりつくと消えない始末に困る腐朽菌
赤松生材の含水率は70%程度あり、切断面が露出すると真っ先に青色腐朽菌が寄りつきます。
立木が損傷したり、衰弱した樹体では樹皮・木肌から辺材白太に菌が増殖し色変していきます。木口カット面に腐朽菌の色がでるようになると、全身にまわってしまい、木の細胞壁を分解し腐ります。水分が一定以下の乾燥状態になると増殖はとまり、仮死状態ですが、青く残り消えません。
腐朽菌は、建築・内装・家具で湿気の停滞した部位で木材表面にとりつきます。菌糸が発育し始めると菌自体と材質が水分を保有しやすくなり、含水率が20パーセント程度でも内部へ侵入していきます。
一定の温湿度条件で広がり、消えることはなく、乾燥材でも青色があるうちは活きているか仮死状態。死滅したものは黒ずみ、繁殖したものはいわゆる「青黴」なのです。
建築や内装では、白太込み材をつかいますが、家具・工芸品では芯材赤身使いが原則です。最近では良質材が少なく高価なため、白太込み材にステイン(化学染料着色材)を塗装し調色。表面のカビ変色をカモフラージュしています。
「ブルーステイン」木工着色塗料製品
土蔵通し梁赤松材 110yrs.築90年 のリユース 200年古材をダイニングテーブルに造り替え 2017 柏木工房作品
赤松赤身 250mm W 四枚矧ぎ 甲板脚部:蟻駒接合 オイルフニッシュ樹齢110yrs. 太鼓落とし成一尺 x 通直 6mL 制作:柏木 圭 作品撮影:柏木 圭 http://www.miasa.ne.jp/~kay/Kay_KASHIWAGI_Wood_Works/Table.html
* 土蔵梁 6m ・築90年解体材に入った「青」は、200年経過してもブルー鮮明色で生きています。日本では良質広葉樹材が多く、針葉樹の家具はすくない。この赤松テーブルは、ソリッド材を活かした丁寧な手仕事です。冒頭の画像は幅ツメ前の伴材予備板。
この「青入り」は、一旦とりつくと木材組織の仮導管から芯央へ拡がり消すことは出来ません。湿気があればジワジワと腐朽していきます。腐朽菌が繁殖すると材面が「黴び」状態に覆われます。
黴び菌を抑えるには、含水率を20 -25%以下に下げ、黴び止め含浸塗装をすることでしのぎ、土木工事で土中で腐るに任せる荒い使い方には向いています。最近ビックリするのが、「ブルーステイン」とか「青色変色菌」「味わい深く、きれいなブルー木目模様」と欺く建築、木材業者が現れてきました。松枯れ死材を化粧利用するあざといビジネスです。
木造プレカット赤松材青入り 木造建築小屋組み材の刻み蟻鎌
赤松生木の梁・桁材は「青腐朽菌」が入りやすい
赤松を伐採し原木丸太を土場に放置すると、直ぐに樹皮やカット面から青黴びが入ります。次第に黒ずみますが、厳冬期新月伐採で直ぐに製材・乾燥すれば黴び変色は少ない。春秋の水揚げ期に伐ると黴菌が入り易く、建築・家具材には使えなくなります。過去には、工務店の施工瑕疵責任が問われたこともあるのです。
樹皮・耳落とし・白太トリミング
板材にすると外側は波型になり、面(ツラ)に見立てて両縁を「耳」と呼びます。食パンの耳と同じ。内皮辺材部は成長部分で色素の分泌集積はなく、淡い無地で白いので周辺部を「白太」といいます。
樹皮付き材は木喰い虫が入り易く、白太は肥大し栄養分が多いので喰い荒らされ、保管中に黴びもつきます。製材時には、樹皮がついている辺材部分(耳)をカットして、虫喰いを予防し乾燥を促進させ材質を安定させるのです。板材は「両耳落とし」が原則。因みに、芯材(赤身)のできない樹種は、樹皮はとりますが、辺材部をカットする必要はない。(栃・トネリコ・栓・沢くるみ、真弓、槙、樅、姫子等)
外周辺材部・白太(Sap wood)で囲まれている樹種では、含水率・材密度の違いから収縮・反り変形を起こし、虫が入ることが多いので白太をトリミングすることが必要です。建築構造材・造作材では、檜杉材がカビを呼びにくいので白太付きで使われています。「赤松青色腐朽黴菌入り木の住まい」とか「ブルー腐菌つき内装家具」と知ったら居心地はよいでしょうか? 食品や衣類を収納する箱材につかえば保健衛生上の問題が起きます。
地上最大の重い生物である樹木は、倒れまいとして肥大成長の構造をつくりだし、長時間の活動を記録している存在です。害傷ダメージをうければ樹体内で即座に反応します。抗菌抗体を出してガードしたり治癒するなど、ミクロの細胞レベルでは専守防衛の高等な生命活動をしていることを知ることも必要です。
脂が多いシベリア紅松でも白太辺材は日本の多湿・高温で青入り
紅松材(極寒シベリア産)も高温・多湿の日本では自然乾燥数年で「青入り」となり、芯央ピンクと辺材白太のコントラストが美しい内装材に使うことも難しいのです。KD人工乾燥後の白太付きランバーにも「青」菌が入り、室内保管など細心のトリートメントが必要です。
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木の総合学研究 2018 – 2019 「赤松・脂松・姫子松の白太落とし 青色腐朽菌の処置」「耳落とし、赤身使いが木工の基本」
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