「木」の本「樹木イメージ・図象」デザインデザインの目木と人間の関わり木の内科木の総合学環境生命構造と機能

「木」の本 森林の隠れている生命_アメリカンベストブック−1. THE SECRET LIFE OF THE FOREST

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

樹木の進化の歴史、森林内部の自然の生物相、樹の内部構造、巨樹、林業・木材利用までを細密イラストで説き明かすし、総合応用研究へ近づく。

 森の秘密の生命 THE SECRET LIFE OF THE FOREST

リチャード M.ケチャム 著 by RICHARD M. KETCHUM 

 American Heritage Press, a subusidiary of MaGrraw-Hill.Inc,New York
1970
Published in Canada by itzhenry & Whiteside.
 Library of Congress Catalog Card Number: 73-117353, 07-034418-3
ハードカバー Hard cover  250 x 285 mm   p.114 、図版 Drawings :  201点
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1965年、 セントリジス製紙会社The St. Regis Paper Company の広告デザインプロジェクトか契機になり、人間の依存している森林の隠れた生命についてパブリックに広く報知する目的でシリーズ広告を再編・発行された本です。
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生物環境や樹木の細部・木材学の豊富な知識を一般向けに視覚的な表現でまとめ,動物と樹木の実相を解説し、生き物の連鎖や生態系の重要性にもふれた重要な内容です。
当時、製紙会社が広告宣伝に森林・樹木、自然の生物の姿と重要性を伝えようとする画期的な先駆けデザインアプローチに業界は驚き、そのインパクトは現在の環境・資源問題への関心を呼ぶイニシエーションとなりました。樹の内部構造・細胞をはじめ、内科的細密イラストや説得力の高い図版がサイエンスメディア、絵解き表現の手本にもなりました。アメリカの歴史的遺産プレスです。
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斬新で細密な美しいイラストの一部は、グラフィックデザインや家具、プロダクトデザイン雑誌に度々紹介されてきた代表的な樹木の本です。長年、木材産業、建材メーカーの広告に転用され、木材展示施設で類似イラストを見かけてもこの原典書名が判らないままでした。(やっと判明したのが2000年)広告デザイン・パブリシティに大きな影響を与えた名著作です。木取り製材のイラストを3次元の彫刻に仕立てたアート作品「Frozon Mid-Cut: log Sculpture – 」 by Vincent Kohler  が2013年に現れています。
また、自然の豊富な生命に人間がいかに依存しているかなど、多様な実用性を強調しており、理科の教材テキストとしても判りやすく魅力的です。北米の「木」の製品は、5000アイテム以上でとても全てを収録出来ないほど。産業材料として大きく依存しています。
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従来、木と人間の関わりの自然史は、あらゆる分野で親密で完結したものでした。資本産業経済への移行で森林利用の増大、自然林壊滅により環境生物も変貌してきました。まだ一般の人びとに理解されていない樹木や森林環境、生物に関する知識を包括的にとらえ、姿や構造を関連付け、精密イラストで高度な専門知識を解説しています。
アメリカ移民社会の歴史・生活伝統文化は、まだ母国の流れで浅く。アメリカンクラフトも伝統・歴史を辿ると先住民族が主体となり、木と人間の関わりや独自の表象・造形を特長づけるのは、本来、ネイティブ民族です。あえて触れず、メジャーなヨーロッパ文化からの観点で描かれています。(本文では55種 掲載 /北アメリカの発見樹種約1,200とあり、製紙会社資源関連ゆえの記述は興味深い 。チップ・パルプ・製紙の記述は、製紙用材としてのヘムロック、ロータリベニア剥き芯や製材残余部分の利用のみ数カ所。製紙会社の森林伐採、公害問題などのネガティブな側面には言及していませんが、製紙会社がスポンサーとなったアドデザインの成果物を編集・刊行した経営者の度量は、たいしたもの。)
秀逸な細密作画が伝承遺産として評価された結果、生まれた素晴らしいアートブックです。当初の広告デザインシリーズは、どのような商業宣伝美術だったのか。時代を震撼させるほどのデザイン力がある創作だったことが判ります。本文中にそれぞれ引用ソースはありますが、詳細な参考図書・出典記載は有りません。まだISBNコードがない時代でした。
内容 : Contents
・謝辞 ACKNOWLEDGEMENTS    p.6
 目次 無し
・INTRODUCTION    p.7
本文内容
樹の誕生(First Tree)木と生物進化の歴史    p.8
種の芽生え   p.14
いろいろな種子   p.19
樹の組織・細胞   p.25
樹の内部構造   p.26.
年輪成長   p.28
樹形 – 針葉樹・広葉樹   p.30
樹皮   p.32,
葉の組織と樹種葉形   p.38
根系・地表構造   p.41
自然林の生物、昆虫・小動物の食物連鎖    p.53
森林分布・気象・地勢 及び植生    p.54
巨樹と保全  p.68
広葉樹と針葉樹    p.74
森林伐採と育樹    p.84
商業林の管理    p.96
木の製材方法と利用   p.98
木材の用途    p.100
(ホワイトパイン、ホワイトオーク、ハードメープル、バルドサイプレス、ブラックウォルナット、ホワイトアッシュ、レッドスプルース、ヘムロック、ヒッコリー 9種 )
樹木に依存する動物と自然保護   p.102
 ・INDEX   p.112
発行当時には既にエコロジーやエコシステムへの関心が起き、更に、環境保護ムーブメントを経て再生循環系生存資源、生命維持装置として森林・樹木をミクロからマクロ、総合的にとらえる視点まで半世紀経過しました。さても、有史以来の加速度的な侵食・森林破壊・木材消費ですが、アメリカ・カナダ・メキシコ各国の木の文化圏・「Wood Spots 」は、まだ点在していると希望的に観ています。
「木」の知識・経験を網羅・集大成するには、あらゆるジャンルで相当な時間がかかります。これから、次世代には増大する課題に立ち向かい、総合的なアプローチからソリューションを実現できる事案に取り組み、新たなクリエイティブワークが展開されて行くでしょう。既往の作品・研究資料等がベースとなり、新しい発想のステージが開きます。「楽」には「木」の脚が支え「極」には木ヘンがつくのですから。
 ⓒ 2013 Kurayuki, ABE

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木の総合学研究2013 – 2019 「樹木の実相と森林内生物」「森・樹木の時間」「木の内科」「樹と木材利用」「木の表現手法・グラフィックデザイン」

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