木工教育論・エッセイコンテスト1924 アメリカ全土の熱いハイエキスパート参画から
「木工を通した教育」Education Through Woodworking
受賞エッセイシリーズ A SERIES OF PRIZE WINNING ESSAYS
Practical hints on the Operation of Wood working Machines
Floor Plans and Machine Specifications for Woodworking Departments
発行:アメリカンウッドワーキングカンパニー教育部門 Educational Department , American Woodworking Machinery Company
Rochester, N.Y. 1924
168 x 148 mm p.352
木工機械メーカ-による木工教育・技能訓練分野での専門家エッセイコンテスト・受賞論文記録出版
(応募エントリー 487名)
立派なマッキントッシュスタイルの装丁で、箔押し・手漉き紙風の初期オフセット印刷特装本。
キャビネットメイキング技能教育の文化的研究と高度な価値ある教科内容を教員が共有出来るように実践的な大要を作成する二つの目的でこのコンテストを開催。
全米の木工教育及び関連分野の専門家、教師、研究者によるさまざま提言と現場成果報告、教育科目の改善方策など、小論の内容は多彩。エントリーしたエキスパートリストは、氏名や専門分野、所属を記載し、短い紹介コメント付きでリストアップ。技能インストラクター・教科職員、工芸アーテイスト、マネージメント実務系の人材情報も掲載していますので、コンテスト参加者には自身のアピールと共に他の部門や同じ教科分野の知見にふれ、キャリアアップに繫がるなどのメリットがありました。
一企業のコンテストで大がかりなこの企画は、国家プロジェクトとして全米のハイスクールや技能養成校に木工ワークショップを設置し、機械設備や教員指導者を充実させる国策があり、当時の主要産業である木材加工・建築系技能スタッフの育成がその背景・ベースに有るようです。エッセイ(小論文)の題目からは本文の具体的な内容がわかりませんので(全文掲載ができないため)各文節の見出しタイトルを拾い出して見ると概要がつかめます。(数例別記載)
企業の営業・マーケッティング・広告もかねて、Shop Practice and Equipment ページでは、工房の機械製品・オペレーション等を紹介。説得力溢れるイラストで汎用型WoodworkingMachinesの当時の詳しい歴史資料となっています。 90年経過、現代のモデルと比較しても基本形がさほど進化はしていませんがモータが異様に大きく(写真トレース)、角鑿機のコピーモデルも登場しています。現在のハイテクマシンと比べると鋳物構造は頑丈、重工なモデルですが安全装置も見えます。
リーディング産業が社会への寄与貢献を計り、インテリジェンスの高い専門技能指導者・学校教員・大学研究者を対象にしたエッセイコンテストを行い、教育関係者のモチベーションアップと業界向けプロモーションをしっかり狙った類例のないイベントレポート。
装丁も当時の最先端製本技術でページを開くとフラットになる綴じ製本、造本も立派な「木工」の本です。現場作業、実技・実務教育を通じた次世代育成のビジョンと教科科目への新しい構想や提案、多くの知見が披瀝されています。手工・職人技能は、範疇外でした。
業界関係者の注目をあつめ、ビジネスや専門家同士の交流にも繫がったことでしょう。学術的イメージよりは、教科内容の実践的プログラムや提案に近い実務エッセイ論文集です。
目次 Contents
Foreword
Introduction by Arthur Dean, Sc.D.
最優秀賞 First Prize of $500.00
・From Seven Cardinal Principles p.11
二位 Second Prize of $250.00
・ From The Angle of Case Studies p.23
優秀賞(10)Ten Prizes of $100.00
・Motivated book work p.35
・Taste and superior craftmanship p.55
・Value of Productive Method p.65
・Training teachers of Industrial Arts p. 83
・The instincts of boys p.91
・The teacher and his boys p.101
・The teacher who found himself p.115
・Wood – a basic Materia p.125
・A teaching program p.133
・The creative impuls p/143
入賞(10)Ten Prizes of $25.00
・Training leaders of industry p.151
・Production and instruction p. 167
・A seriies of outstanding points p.177
・Habit formations p.185
・Thinking – basis of woodwork p.193
・As a tie – up with educatiopn p.201
・A very practical illustration p.209
・From acrosss the border p.215
・Class papers as an aid p.223
・The higher education value p.229
エントリーエキスパート Expert from essayists p.233
487名の専門家リスト
Operation of woodworking machines p.275
Floor plan and equipment p.296
Machine specifications p.299
Machines adapted to]school p. 323
Motor drives and controls p.339
1972年 吉祥寺サンロードが出来た翌年,外口古書店の前を通ると、店内から呼び込む本があり。引き寄せられて購入。こういう経験は、時々あるのです。一見革装(?)の綺麗な洋書で棚の中に目立ちました。長期収蔵され傷み無く、出てきたばかりの深窓の雰囲気でした。(サンロードが出来る前には、足を運ぶ古書店が6店ありました。武蔵野ののどかな郊外タウンは激変していますが、古書店が町の文化のバロメータといわれたものです。)
「木工」教育分野での教科や指導的理念の在り方を論文コンテストで公募するオープンなイベント記録書籍は、お目にかかりません。貴重な資料となりました。「木」に触れる、工作・木工刃物加工体験が義務教科から外されて久しい日本ですが、自然や環境・資源、モノつくり体験からリアルな生活総合力の獲得からも再考の余地がでてきました。
現在、工作技能力は学校成績評価にはないのです。デザイン系大学で初めて刃物を使い木を削るのでは、まさに「手遅れ」です。
教育課程も旧来の技能訓練・職業技術専門養成から、時代の変化を先に読み取り、新しいカテゴリーの「木」の総合的な実学、実業、実務仕事へシフトしていく方向を見定める必要があります。
手足の関節・筋肉が固まらない内に身体絵で覚える手仕事の基本的な動作訓練、技能習熟から生まれる波及効果は大きく、思考判断の基準軸や制作段取りセンスを身につけるのにも大いに役立つと感じます。
論文中見出しタイトル:3例
1. From Seven Cardinal Principles p.11
by Ambrose Caliver
A goal for Woodwork
Aid to fundamental processes
A means to an end
The value of it all
Using the head
Leisure and worthy home-membership
New out of old
An avocational value
Vocation sign posts
A part in a health program
Looking toward citizenship
Meaning of life and work
Social and ethical
Material into Human values
Contribution of manual arts
10.
Wood – a basic material
by Frank H, Shepherd
Proposing and disposing
The swinging pendulum
The field of vision
Man and his work
The stimulus of carving
Ceder as an example
Mission still predominates
Biblical references
The finishing of woods
Love of nature
Making alive
13.
Training leader of industry
by George B, Cox
Fundamental distinctions
Exploration and purpose
Appealing to three types
Develop – not merely make
Interrest lags
Something more needed
The managerial side
A misconception
What beyond manipulation?
A thorough grounding
The production
Management and production
Rotation of jobs
Specific suggestions
Study and practice
Standardization
A suggestive outline
計 22点
ⓒ 2013 Kurayuki, ABE
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木の総合学研究2013 – 2019 「木と教育」「技能養成・職業訓練」「木材加工機械設備」
Woodworks :「木工」「木材加工」「木材工芸」「木材工学」「木材工業」「木工作」「木の仕事」
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