「木」の道具・工具 | ジョイントシステム | 工具・刃物 | 木工 | 産業イノベーション
日本台鉋の進化 第三次エポックメイキング 20世紀初頭 発明家的指物師伊藤吉之助のイノベーション 刃型フリー、台のセパレーツ合せ構造、隅丸脇取りルータ鉋の独創に系統的拡張性を見出す。
錐からドリル刃、脇取り隅丸脇取り台鉋からルータ鉋を考案 伝統木工芸指物から精密木工新分野へのシフト
明治後期より、計装・測量器具や鐵道・建築製図定規を製作し続けた祖父の業績は、日本の近代産業を支え、精密木工業技術史に耀くものでした。次世代への相伝は、身体記憶が基本であり、保存維持は難しく、門外不出としてきた製作道具は損耗していきます。時代とともに消える運命ですから、見失う前に書き留めます。
蓄積された技能と経験に加え、コモンセンスを覆す頭脳の閃きが追随を許さない高度な仕事を成し遂げます。業界随一の評価と信頼を得て、優位に安定した事業を持続。軽合金・プラスチックの登場まで、都内ではトップメーカーサブコンとして計装・測量・製図器具業界にサプライし続けました。腕はピカイチ、研究開発をする発明家的職人です。
刃物と技術ノウハウをPAT.にせず、公開しないことで類似品が作れない。安定した工場制作を継続することが出来ました。誰もが使える市販された道具を購入して、優れた独創的な仕事を生み出すことは大変難しい。同時に利潤が外に出てしまう。道具刃物はあくまで自作が原則でした。買えば楽ですが、創作する渦中で新たな閃きがあるもの。手仕事の「モノつくり人」なおさらです。
保存された往時の道具を実測図面に落として行くと、次第に細部の工夫や構造的要件を語り始めます。
隅丸脇取り「ルータ独楽鉋」の考案|20世紀初頭 TOKYO 麻布六本木「指吉」
水準器レベル木製ボデイ水泡ガラス管埋め込み窮孔 モデルは七寸・櫻材追柾
非シンメトリー回転ツール|複合台鉋・重心位置G偏芯 | 際脇隅取り台鉋の応用とドリル装着|窮孔バランス異形構造
● #1 径54mm
● #2 径43mm
● #3 径55mm
● #4 径39mm
● #5 径30mm
非シンメトリー・上角型下独楽複合構造|独特の削りドリル根掘り|ルーティングバランス
回転運動するボデイが角型で、鉋刃が仕込み重心G位置は偏芯、遠心力で傾き被削面を抑えつつ切削縁は綺麗に仕上がります。木材の板目面→木口切削へと移行し穴径を広げてルータ削りとなります。
径の大きい円形深座繰りをドリルであけるには切削り縁が綺麗に仕上がることが重要です。刃自体の鋭利さと回転バランスと形状、仕込み角度・表楔固定が安定させ、重心G位置が偏芯して遠心力で被削材を抑えるようにカットします。ボディを円盤形シンメトリーにしない構造上の要件がみえてきます。
鉋刃の仕込みは台打ち彫りではなく、側面に溝切り込み後、サイドカバー材をはりつけるセパレート構造を考案。微妙な刃の削りアタリを調整しつつ、軸下部のガイドで回転ブレを抑さえ、孔仕上がりを綺麗に仕上げる合理的な構造です。長年の出番で低部刃口の損耗が激しい。
切削抵抗は木目の逆目 – 倣い目と交互に変わり、刃当たりは鋭角に研磨。 木口切削は、けば立ち、軸下端は、下穴で安定させるガイドピンの役目を担います。ボデイには、回転バランスをみて振動ブレを消すために調整した削り跡がついています。木製だからできる調整方法。世界でもこの独楽ルータ型鉋の類似ツールはありません。
窮孔回転切削の着想に結びついた台鉋際底取り ルーター鉋の原型
切り刃角、削り屑の連続上方排出がスムーズであることが仕上がりに大きく影響します。この独楽型成形部とボデイ上面の鉋刃固定構造は、普段溝突きや脇取り、底取り、隅丸を使いこなし、刃先の動作を熟知していたことから発明できる連続性が見えてきました。
■錐・ドリル刃の考案 木製くりっ子白樫材(道具は自作)
明治期には西洋鉄工ドリルは輸入されていましたが、木工専用品はありませんでしたので職人は自作で切刃・ケガキなど改造しています。多くの産業分野で木製ハンドツールが使われていました。
150年の産業技術メモリー 系統的な発展と拡張性を見出すツールジャパン
PAT. 特許は、公開されると、直ぐに同業他者のマネモクが現れます。重要な道具や技術は、納品先には非公開とし、家人にも説明しませんでした。日本台鉋の系統的発展とその拡張性は現在なお続いており、台の変形・刃型の自由度獲得、割り台セパレーツ構造化、アタッチメント装着等、今尚、手工具の進化は止まず、発展途上にあります。
ⓒ2019 , Kurayuki Abe
All Rights Reserved. No Business Uses.
複製・変形・模造・引用・転載・画像転用・作り替え、ロボット・Ai無用、業務利用を禁じます。
木の総合学研究 2019 「台鉋脇取り隅丸からルータ独楽鉋への進化」「木工芸指物から近代工業技術を支える計装・測量器具・製図定規制作の精密木工へ」「日本台鉋の系統的発展と拡張」「白樫台打ちからセパレーツ台、合せジョイント構造化へ」
▼ お気軽に一言コメントをどうぞ
← クラフツ志料 – 4 クラフトフェア ムーブメントのイニシエーション1984/85 グレインノート「木目の音」モダンと松本木工研究会トラド 同期対奏の工芸松本メモリー