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発明家的指物師伊藤吉之助の第九・第十の道具抽斗から -2   測量用アリダード Aridade 国産モデル精密木工ワーク 鉋刃型フリー割台セパレーツ構造|目盛り定規スライドメカ|面取り剣先溝突き際脇底取り|より専門性を極め、拡張される鉋切削機構

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

明治期から測量に使われた平板・三脚、アリダート、磁針箱は木製でした。初期のアリダードボデイ、及び、磁針箱は、緻密で収縮のない優良なツゲ材、追柾・柾目取りでした。ボディの切削・溝突き、成形、定規目盛り付けを行い、測量機具メーカーから支給される気泡管、視準板と水平微調整棹金具を装着して完成納入に至ります。測量具にもメーカー流派があったのです。

「アリダード Aridade」初期モデル

初期モデルには目盛り定規面がスライドするT型溝レールを内蔵

 このスライド機構には、高い加工精度を要する微細な横溝作里、極細溝ツキ、蟻・剣先、面取り鉋を使用します。台上に孔掘り、指かかりをあけた際底取り鉋は、指をいれて刃先を押しつけ、底取り平滑面を切削できる。すべて自作の特殊専用鉋を開発。良質の本ツゲや櫻材が豊富にあり、さらに、優れた木工鉋鑿刃の鍛造職が多くいて、刃型成形や転用もしやすい時代でした。

原型モデルは欧米輸入製品ですが、内製化の過程では、いろいろな加工技術の進歩と波及効果を生み、精密木工業の受注は続きます。光学機器の計装木箱や保存展示ケースの製造を手がけ、高い品質を維持していました。世紀末に休止廃業。

目盛り定規内部の竹のスライドレール部は、油気があり、摩耗に耐え、オーガニック素材で木のハードウエアーとしても注目されます。

アリダート製作専用の溝突き・際底取り鉋揃い

●気泡管 窮孔掘り込み 改造ドリル刃と鉄工用リーマによる下穴加工

■極細溝作里  白樫台に真鍮薄板ガイドプレート埋込み

■極細横溝作里 刃表楔締め 白樫台

■際底取り肩付き割台|台表指孔あけ |刃上楔締め|ナデ肩テール

 従来の際鉋刃は、斜め筋違いに拈り寝かせで台打ちがかなり難しく、熟練の仕事でした。刃先先端部は、斜め剣先形になり、切削抵抗が高いと浮くようになり、刃口アタリを押さえつけるようになりがち。

この吉之助モデルは、台に左肩を付け、側面から押さえ溝を切り欠き、刃をいれてから被せて肩を付け木ネジ止め。鉋刃先のみ斜め研ぎ、通常の勾配で刃口のみ斜めに出ています。肩は屑排出の彫込みを大きくとることができ、台上端角の残余肉厚を増やし補強。台表に指抑えと鉋屑排出を増す孔彫りは、指かかりで作業性をあげ、底取り刃先の押しつけも出来る。祖父吉之助は、次々とコモンセンスを覆す頭脳の持主でした。

台形は右傾斜にすることで、際アタリをシャープに、底面を平滑に仕上げます。台表の左頭部とテール部には、ナデ肩にキザ目をつけ、指・手のひらが落ち着く、持ちやすい形です。

使い勝手が熟慮されており、台鉋の矩形ボデイが定型化して長い年月が経ちましたが、ナデ肩・テールのパーソナルカットモデルが出てくるでしょう。系統的な拡張とイノベーションは続きます。

▼剣先作里 割台セパレーツ構造|木ネジ合わせ・刃上部楔締め

磁針箱 平板測量に使われる方位定測器  (本ツゲ材)アリダードボデイ伴材

A : 磁針固定ネジは南側 考案者名:鳥神流  針先マーク:象牙

B: 後発品 磁針は北側固定 箱側面取り・固定木ネジ減らし体裁改良モデル

 この測量用アリダード(視準器・視方規)は、当時の土木建築を牽引する当時の最高レベルの技術で製作され、高価なものでした。この他、鐵道定規、製図板、三角スケール、雲形定規など付加価値が高く収益もふくらむ仕事が多く、定規目盛りつけ職人が8人という時期もありました。

精密木製器具は、やがて軽合金・プラスチックの出現で工作機械による量産化がはじまり、敗戦後の一時期を過ぎると、家内手工業による木製道具類は次第に衰退していきます。

針先見附セル張り

大正期には、セルロイドが輸入されると高価な象牙の代用、「張りもの」化粧のはじまり。コスト節減が本物に似せるテクニックを生み、磁針外れ修複の開閉底蓋を木口開閉で簡略にする改良モデルに変わりました。

 

電動工具メーカー製品を次々に買い足す現在、人と同じ機械工具では才能がほとばしる革新的な仕事は無理な話し。凡様に落ち着きます。道具の自作は、アイデアを触発し、閃きは続きます。独創的ノウハウは外にもれず、良質な固有の仕事を拡げます。ツールジャパンは、工人が創り出すネイティブな世界であり、本来クリエイティブなのです。

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木の総合学研究 2019  「木工芸指物から近代工業技術を支える計装・測量器具・製図定規制作の精密木工へ」「日本台鉋の系統的発展と拡張」「樫台打ちからセパレーツ合せ台・ジョイント構造化」「脇・際・底取り・溝突き鉋のイノベーション」

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