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高熱人乾で失われるオーガニック成分 木香・木味 | 素晴らしいフルーツウッド鬼胡桃の木味・美質 | 天乾反り曲がり・白太黴蟲喰いをガードする活きている材質|好感度の高い質感とプロフェッショナルの見方 | 気が付かないことを、見えないものを明らかに- 続 Insight 木の内科-59

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

人工乾燥では、オーガニック成分を高熱で分解し棄損してしまう。木香、艶・木味は失われ、抗菌・抗体色素、樹性をネグレクトした構造躯体だけを使う商材の扱い。自然素材のイメージだけを強調し、均質な工業材料に変えてきた近代ウッドテクノロジーがスタンダードになりました。

いくらでもあるとされた天然材は伐り尽くされ、高樹齢の大径木ソリッド材は貴重なマテリアルとなります。木目は自然だからいいものとすっかり刷り込まれ、プロでも識別が難しい。

目を見張る鬼胡桃クオリティウッド

元口70 x 60cm  4m 枝節損傷のない貴重な大径木良材 (青森県二戸 20071110 )

木喰い蟲は樹皮から糖質のある辺材へ、心央赤身へと喰い進む

辺材白太に入るピン虫

天乾曲がり

天乾では、蟲喰い、白太辺材黴入りは覚悟。活きている自然素材の宿命。立木テンションが残り、反り暴れることもあります。樹皮・耳付き材では、必ず蟲喰い。白太・両耳落としが原則です。(松本市入山辺包石 20051225 )

テッポウ・木喰い蟲が入ると、損傷ダメージん」抗体バリヤをつくります。

抗菌抗体バリア、治癒リアクションの色素凝集。人乾では白太辺材境界が崩れ、滲み出ます。(安曇野豊科町 20030225)

「木味」を知るのは、親方筋をひくもの   至福の時間

 「木味がいい」というコトバをつかうのは、彫師、指物師や数寄屋・堂宮大工だったように記憶しています。味わい深い優れた材質を表わすだけではなく、削り刻みの感触や品格、余韻 を引き、身体記憶に残るも含まれます。

その意味するものは、甘い苦い辛いではなく、美味しいだけでもない。好感度が高い、かなり複雑なニュアンス。削りものが多い仕事ほど仕上がりに影響するので、木目だけではない別格の質感を表す職人用語なのです。

「しっとりして美しい   個性があり素性がよい   刃物アタリがよい   気持ち良く疲れない 仕事が速い 仕上がりが綺麗 風合いをそなえ 活き活きした表情 艶があり照り輝く 豊饒:富貴   ノーブルで気品が漂う  育ちがよい 調っている 素晴らしい雰囲気が漂う 語りかけてくるような  共奏するような手応え  感応して歓喜する時間が訪れる   うっとりする」

キャリアを積んだ腕利きが味わえる至福であり、仕上げた後は美麗な木目、輝きが映ります。因みに、優れた手仕事・デザインの品格は、材料に支配されるといっても過言ではありません。

和胡桃(鬼胡桃)の素晴らしい好感度材質 マテリアルトリートメント・長期自然乾燥による熟成・富貴化

 従来、胡桃材は優れた銘材という扱いはありませんでした。桜、欅、楢、樫、水目、黒柿、シオジ、楓、ホウの木、桂、桐などの上質高級材が多く、ケンポ梨・栃・トネリコ・シウリ、シナ、アサダ材は、エコノミークラス。

 鬼胡桃が優れた材質とされたのは、銃床台尻で、戦争時代の材木商は、陸隊のハネ材をほくそえんでいちばんいいところを「ハネ」でつかう。知られないほうが助かるという材木業界の常識でした。

こうして、オニグルミ材は良質で美しいということを言いふらすのが憚れ、家具・内装材として注目されず、評価は低いまま。因みに、最近では広葉樹の良材が少なくなり求める人が多くなりました。

「胡桃」を高く賞揚したのは、数寄屋建築家 掘口捨巳で、ケンポ梨、黒柿、楓の銘材を語っています。

「胡桃はウォールナットとおなじようなものですけれどちょっと違いますね。あんなに素晴らしい木目はないですから」

S;  座談会 数寄屋今昔2 掘口捨巳先生に聞く 「木」1965 – 4 篠田銘木店刊

長期ナチュラルシーズニングによる熟成、マテリアルトリートメント富貴化 メディカルウッドワークスの注視点

 鬼胡桃の材質感は、しっとりして美しく「木味」が飛び抜けて良い。長尺大径木はすっかりなくなり、木材市場にも出なくなりました。

本来、陽当たりがよい緩傾斜の南面を好み、周辺に高木がないと枝張りが大きく枝下が太り、通直な枝下ロングサイズの幹にはなりません。

長期ナチュラルシーズニングによる熟成、マテリアルトリートメント富貴化で銘材となります。さらに、トレーサビリティーは素材のクオリティを語ります。

天然乾燥長期熟成、富貴化材使用のダイニングチェア しっとりした木味の雰囲気が漂う   デザイン・制作:ベンチワークタテヌイ日野 健

©  日野 健 2019  作品番号145 NS-14/AQ-5

 

和胡桃Jウォールナットの特徴

世界のウォールナットには、イースタン、クイーンランド、カリフォルニアブラックウオールナットなど生育地で樹形・材質がことなりますが、どの樹種も素直な加工しやすく、好感度が高いポピュラーな材質です。

 日本産の鬼胡桃には赤と白(アオ)があります。樫胡桃、姫くるみは、葉形、樹皮、実の形から識別。栽培種「しなのくるみ」は殻を割り易く、核果が大きい。商材として伐らないので材色は不明。谷筋など生育地の土壌で、心材は色素の濃淡があります。

鬼胡桃人工乾材と自然乾材の心央色識別・色差・打音・刃物アタリ

 人乾材は、心央色素・脂分が高熱で滲出が起き、白太辺材色染まり、自然乾燥材では抗菌抗体反応で色素集積してバリアラインをつくります。色相と辺材白太境界の滲み、コントラストの違いで識別します。

水揚げをしない秋冬期伐採木では、オニグルミの心央色と白太辺材の境界は曖昧なのでややこしい。九月なかばには葉枯れがはじまり、一番早い。冬目の生育はとまり、眠るために春夏材との差がハッキリしないのです。

人乾材と天乾材の識別

ブラックウォールナットのようなハッキリした色差、コントラストがないため、人工乾燥では芯材域は混じり、ぼやけます。

人乾材の識別は、打音が甲高い「カンカン・コンコン」。天乾材も長期ストックでは「ゴンゴン」。鈍い音から軽い響きに変わりますのでトレーサビリティーが重要です。

刃物アタリは、人乾材は「カリカリ」「カンカン」スルーする感じ。油気なくカサカサ、バサバサ。天乾材は「コンコン」「ガンガン」しっとり重低音の響きです。

* 植物名の方言

松本地方では「おとこくるみ」といいます。沢グルミは、油気樹脂成分が微少で材質は軟らかく、心央色素(赤身)が集積しない無地。食べられない翼果で「くるみ」といえば鬼胡桃をさします。

人乾から天乾の違いについて、オニグルミのソリッド材を引き合いにしました。意外と知られていない好感度最高のマテリアルなのです。

※ 熱変形・材質への影響については、次稿に続きます。

ⓒ2019 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2019  「オニグルミの天乾NS材・熟成と品格」「木味」「人乾材と天乾材の識別」

 

 

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