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高熱人乾で失われる木香・樹脂、オーガニック成分、微細放散物質、艶・木味 | ケンポ梨板材の炭火炙り 「反り直し曲げ」セルロース・リグニンの軟化 國政流相伝-7. | 気が付かないことを、見えないものを明らかに – 続々 Insight 木の内科-60

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

木材を構成するセルロース・リグニンは、加熱されると、熱分解し構造組織が軟化し始め変形する。さらに温度が上がると焼け焦げ状態に。人乾は水分を下げるために長時間炉内で高熱に曝し、結合水まで脱水させると同時に、樹脂や他のオーガニック成分も熱破壊してしまう。強制乾燥で油気を失い、しっとりした感触や潤いも消え、カリカリ、カサカサ・バサバサ。

板材の「炭火炙り 反り直し曲げ」遠赤外線輻射熱による内部ヒートバランス

 肉のタンパク質は、おおよそ58℃で溶解しはじめるので、肉汁がでる調理は加熱具合をみて旨味がぬけないようにします。美味がぬけてしまう加熱温度域は素材を損なう。

木材では、繊維組織・セルロース、リグニンの熱分解軟化温度域が約65℃ ~ 75℃。板材表面温度は、ジンワリ内部まで熱が通ると軟化。ガス火・電熱では、熱伝導パターンがことなり、表面だけ熱くなります。曲げ木加工では、ソリッド材を煮沸したり、高温蒸気で蒸すと木材繊維組織は柔らかくなり、型にはめて冷却・硬化させて木材組織を改変します。

板材の炙りは、曲がる具合をみながらですが、乾燥具合をみて、時間と火力は経験で判断します。表面に濡れ布で湿すこともあり、一度火気を浴びると、さめた時に硬くなります。直火加熱・乾燥は、部分的な矯正、接着面の炙りなどには効果的です。膠を常用していた時代には、何時も炭火の火鉢が仕事場にあり、火おこし膠壺は小僧の仕事でした。

 

軟化が進む68.5 ℃       焦げない程度の75℃

ケンポ梨4分板 楢炭火鉢コンロ炙り 反りの矯正・曲げ (白墨がポロポロ落ちるヒートストップサイン)

 炭火などの遠赤外線加熱では、波長の特徴で中身までじんわり輻射熱が伝わるのがよいのです。内部水分は徐々に蒸発しはじめ、同時に繊維組織セルロース・リグニンは爇分解で軟化。熱風炉乾燥で急激な温度変化でおきる、収縮・表面硬化、内部応力・歪みは、短時間の加熱では大きくならない。材質を損ねることは軽微、大きな設備は不要で少量のボリューム向きです。

低温火傷状態から焼き焦がし加熱

木板の平衡温度が18℃ほどの時に、45℃で火傷。更に65℃になると焦げるようになると診ています。 因みに、人体の皮膚は、 50℃では2分~3分、  46℃では30分~1時間での低温火傷がおきます。(「製品と安全 第72号」1999年3月・製品安全協会)

反り直しでは、2 ~ 3mm程度の直しは、素速くできます。

手間はかかりますが、その都度、穏やかな乾燥法で無難です。望ましいのは、しばらく室内で人の暮らしに近づけ、エアーコンディショニングを体験させることも効果的です。

工場生産の製造ラインは、個性的な材質ではなく、機械生産のためには活きていない均質なマテリアルを必要とします。謂わば、活きているオーガニック材を高熱で本来の性質を消し、殺して動かないようにしているのです。最近、「木を活かす人工乾燥」という某企業のブログをみて驚きました。デリカシーの欠如極まり。

ソリッド材打撲ヘッコミ傷の修正

ぶつけて凹んだ傷直しは、熱湯を含ませた布でダメージ部分を押さえます。お湯を含ませた布にアイロンの先でジュウと当てて回復。木地の組織に熱水が入ると膨潤して戻る木の性質を知るプロの裏技です。(深手は別の方法で修正)

やってはいけない炎炙り・表面焦し「炙りの目安」

木取り板は、ゆっくり炙る。経験で判断できます。炙り部分を白墨で印しておくと、焦げる寸前にパラパラ落ちていきますので目安になります。材質を損ねるような強火はさけ、火加減は慎重に。

急ぐので、ついつい強火でやりそうですが、ソリッド材のストーブ火傷シーン。 (画像提供:工房悠  杉山裕次郎)

因みに、杉板目材の「焼き板」木目浮き出し加工は、炎で焼いて炭化。屋外での腐りを防止します。琴の甲造りでは、桐胴表面を灼熱の焼き鏝で焦がし、色付けて磨く技法もあります。

最近では、アルミ箔をまき付けアイロンでヒート_軟化させて曲げ木に使う加工法がWeb サイトに出てきました。

※ 「人乾材とナチュラルシーズニングの材質の違い」は次稿に続きます。

ⓒ2019 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2019   「セルロース・リグニンの熱分解・軟化」「ケンポ梨板材の遠赤外線炭火炙り、日本の材質調整技術」

 

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