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圧倒的な強木千年樹「欅・槻」不倒樹体内の見えない高度な生命維持防衛を明らかに|白太辺材に乾燥すると消える紅紫色の抗体前衛層を形成|目を見張るバッファーゾーンの内攻外抗ダブル抑止、虫穴ガード、腐り空洞を塞ぐ治癒組織のラジカルな動き|日本ケヤキ考-序 |香木微細放散成分を知り、樹性の生命活力を取り込み、体の自然を回復する処方を見出す Insight 木の内科 – 69

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

至る所に根を張り、養分を吸収する森林の目立ち「ヨタ」モノ。虫穴は抗体色素でカバー、侵入微生物を対抗挟み打ち、腐蝕菌にバリアーを張り、ダメージを拡げない修復・耐久力もめざましい闊達な樹体の動きは生々しく色変鮮やかです。

 その旺盛な生命活力は、強い木香・油気を泌出、木理の美質を創り出し、曲げ・引っ張り・圧力に耐える緻密重量材質となり、人里の暮らしに寄り添う。成長肥大し、倒れまいとする立木の生命力が木理として現れます。地元で伐採されたケヤキに巡り合わせ、樹体内の変動を克明にとらえました。

消えてしまう白太辺材バッファ前衛紅紫色は、見事にほんの束の間。辺材側からの抗体の動きを観たことはないでしょう。ダメージを受けても、白太辺材は活き活きとして樹皮はしっかり。芯央と白太辺材に間に抗菌・内攻め前衛層を備え、老いても「健」「丈」にみえます。

前衛層の抗体赤紫色素分泌

前衛層の抗体源 伐採後29日 抗体分泌源をつきとめる。

 

白太辺材界面にサテライト的に「派出」点在しています。デフェンスのための抗体分泌要所は、どのように決めるのでしょうか? 分泌源の配置とターゲット感知の動きなどを突きとめます。患部に接近してできる多発性の抗体物質分泌源に見えました。

 

腐食菌・虫喰いを押さえこむ内攻外抗ダブル制圧と腐れ塞塞ぎ治癒

外から微生物が侵入して住み着くと、芯央から抗体が動きます。

伸びた先にターゲットがあると、同期してそれを取り囲むように赤紫色抗体源が出現。上手く出来ている。

欅(赤)個有の抗体防衛アクション

外部からは見えない芯央の腐れを塞ぎ、手当して樹体は強度を保ちます。

樹皮には、内部ダメージが現れません。腐蝕空洞を抑え芯部を護り、幹外周は健全さを保ち続けることが出来るので、立木寿命は長くなります。欅の巨木が多いのは、芯腐れをセーブでき、白太辺材を丈夫にしておける樹幹構造に理由がありました。

伐採後の玉切り

樹幹芯央は重篤ですが、腐朽菌を封じ込め。白太辺材と外観は壮健そのもの。

因みに、虫喰いダメージ原木は、木材市場ではお断り。良い虫喰い状態のダメージ満載の原木全体サンプルを手に入れるのは難しいのです。

 赤紫色前衛層の抗菌

ケヤキ赤の材質組織

縦繊維束に向芯交差する髄腺が横筋でからみ、強靱で裂けない緻密な構造体をつくるニレ科ケヤキ属

左:外皮側                         右:芯央側

内皮から連続横筋向芯髄筋を配入、太い冬目環孔年輪で挟まれ細密堅牢化する芯央部。

割裂しない絡みあう緻密な繊維束 折れない枝、割れない芯材、倒れない幹。ガレ場に根張り、急斜面にも立ち、風圧揺れに耐える強靱な樹体構造となります。

「ヨタ」は、東信地方の造園師が「どこにでも生えてくるけやき・カエデの樹性」ヨタモノを言い当てたもの。手に負えない、始末が悪いから。

本欅 ( 赤)、石欅(青)、槻(ツキ) の識別

「和漢三才圖繪」寺島良安 編纂  巻第八十三 喬木類

江戸中期・正徳年間 (1713)の図説百科事典に正確な記述があります。

欅には、「真欅、石欅、槻欅の違い」ありと。小職の経験から、この分類がピッタシ。

① 真欅は、紅紫色の材色 樹高五六丈(約18m)幹胴周り2ー3人の抱え太さともなる最大の樹体(別名:赤欅)

・樹皮は厚朴の代用とし、気を下げ痰を下し、嗽(そく)を治し、肺を補い、腸、頭痛、妊婦腹痛に効くという。昔は、若葉は新茶、欅樹皮は薬用でした。

② 石欅は、石のように堅い工人泣かせの材質 「青」と呼ばれ、芯央は青味を帯びる。

③ 槻欅(ツキケヤキ)と呼ばれるものがあり 「強木」の転訛したもの。古代は欅を「ツキ」と表記。

明らかな性質の違いは、真欅(本ケヤキ・赤)に比べ脂気少なく、樹齢に比べると樹皮が若く見える。(層状樹皮剥がれが少ない) 刃物アタリがよい。木取りで割れ動くことがある。

樹形枝振り 松本市入山辺桐原

太枝を造らず、スリム軽量葉を吹き出すようにつけ枝先樹冠を広げ天空に伸びる。

松本市四賀横川 杉民有林  201907

杉林には、ケヤキを入れると林内の生育や土壌根張りが良くなるという林業家の経験知も忘れてはいけない。針葉樹 vs 広葉樹のせめぎ合い、生育競争が働くといいます。急斜面の根張りは強く拡がり、土砂崩壊を防ぎます。

保安林、植林地の斜面崩壊も根張りが遠く拡がるケヤキが治山に重要な役目を担います。

20-30年の周期伐採により、蘖(ひこばえ)再生、櫟・コナラ・欅の里山が若返ります。

欅赤の芯材は濃茶色が安定し、内部に損傷などがあると黄色層が現れる。糖質・油気を含み芳香あり、小蜂・木喰い虫は多く集ります。

専門書にはない、知らない、見えない「天然木の力」を活かして 体の自然を取り戻す。

 多くの日本産樹種の中でも、欅にはエネルギッシュで力強さを感じさせる、鼻や肺気道を刺激する強い匂い香気成分や油気が含まれます。樹体を護るために分泌・蓄積しているオーガニック成分なので何よりも体に負担がからず、無害で安全性も高い。江戸期から「欅」は和方薬樹のひとつでした。

ケヤキ芯央赤身には、鼻や胸にしみるような匂い・香気があり、鼻・肺の気道を刺激し、吸い込むと活気づく微細放散成分があります。レアーな生材から自然乾燥の熟成、富貴化していく過程で、欅自体のもつ強度や耐久力とともに物性だけでなく、人体への好ましい影響も明らかになると思います。

 日本産ソリッド材には、人がくつろぎ休息する、気分を安定させる作用、安らぎや健康維持、睡眠誘導をもたらすものが多くあります。逆に、活気づけ能動的な気分にするものがあります。

ケヤキ材は、「和風」の伝統・クラシックイメージが強いので、現在ではあまり人気がありませんが、独特の木香・色調・材質感は、逞しい生命力を感じさせダイナミックな気質を呼び起こします。実削割材の作業を続けていると、行動を促す高揚作用、意欲的にする見えない力があるように感じられ、匂いと黄紅の色調がバイタリティー、「躁」の闊達な雰囲気を与えるようです。黄色が富を連想させ、ゴールドカラーなので太い原木が中信木材市場から中国都市部へ多く輸出されています。

落ち込んだ時は元気づけ、ワーキングディナーには、欅厚板テーブルが活発で賑わいの場を盛り上げる。素材力そのものは見えませんが、触れると感応したり、雰囲気を左右し、命の躍動が伝わってくる木地仕上げの天然素材は立役者となります。木香微細成分の放散、湿度・平衡温度バランス、空気質をよくする室内環境装置として、これから大いに活躍してくれそうです。

 

ⓒ2020, Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2020  「ケヤキ天然木の抗菌・抗体・治癒作用」「ケヤキの樹性と木理」「ケヤキの内科的成分評価」

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