「木」と医療「木」の道具・工具デザイン木工産業イノベーション

1945年、敗戦直前の日本本土上陸作戦で使われなかったEames design | アメリカ海軍前線負傷兵搬送医療具「 SPLINT 副木」|アメリカ軍需産業の成形合板実用化_デザイン技術開発はミッドセンチュリーファーニチャーデザインの主流になり、日本爆撃用グライダー成形合板の構造体は、モダンインダストリアルアートとなる|見えなかった歴史的デザイン造形物の攻撃性を戦争を知らない次世代に伝える。 木のジョイントシステム -33

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

殺戮戦争テクノロジーの裏側にある救護医療具のメディカルデザインワークもシークレット扱い。戦場のニーズや求められた調達器材の仕様、実用化のプロセスも明らかにならないまま、デッドストックされていました。。

 歴史上の大きな産業技術革新や進歩は、武器製造技術や軍需物資の生産が引き金となりました。缶詰・弾薬輸送パッケージから船舶・航空機、通信機器まで、プロダクトデザイン、産業技術の変革も起きました。武器への転用リスクはもとより、医療資材の補給システムまで、民生復興へ繋げていく総合的な視点も忘れてはいけないのです。

戦争末期 1943年、アメリカ海軍は既に日本上陸に備えた負傷兵搬送具の開発実用化を進め、量産技術と規格製品化を完成させていました。医療器材も周到に準備していたのです。

使われないことが望ましい工業デザイン製品

当時のプロジェクトメンバーは機密を語りませんが、プロダクトデザインの記録から見えてくるものを読み取ることができます。この日本で使う予定で準備された戦争用品は、永久保存し記憶することが平和な時代を持続させるために役立ちます。攻撃し殺戮をする兵員を助けるという、やりきれない医道の二律背反。使われないことが望ましいデザインでした。原爆投下は、Eames designも吹き飛ばしたのです。

1  SPLINT   LEG ・PLYWOOD  FOR TRANSPORTATION

STOCK NO. S2-1970 未使用デッドストック 1943年製造

サイズ:幅 203 x 長さ1.065 x  高さ90 -105mm   650g    表面材:Cherry Wood

 MANUFACTURED BY EVANS PRODUCTS COMPANY

MOLDED PLYWOOD DIVISION

LOS ANGELES, CALIFORNIA

 

 上陸作戦では、最前線の兵士が脚を狙撃される。副木は、被弾し砕けた骨を動かないように縛り固定する位置やフィットさせる形状と搬送を工夫し、型抜きしたツキ板多層成形シェルを考案。熱硬化型接着剤も開発。製品仕様は、規格標準化され、体型に合わせたサイズを揃えています。製品モデルは、戦場での物資輸送効率が重要ですので、軽量でコンパクトにスタッキングできる構造でした。

しかし、空爆が頻繁に行われ、アメリカ海軍の日本本土上陸戦闘で使われることはなく、終戦後は長くLOS ANGELESの倉庫に眠ったまま。世の中に知られることはなかった。医療搬送具として優れたデザインであり、世紀末にEames designの作品来歴から成形合板家具技術のルーツが戦争テクノロジーだったことが明らかになりました。

武器や戦闘用具は、歴史を記憶するアートオブジェクトとしてミュージアムコレクションに収蔵される。Arm から Art へ美の変貌です。

木製爆撃グライダー機体の成形合板は、日本本土爆撃用に試作された機体の一部でした。機体の成形合板シェルは、モダンインダストリアルアートとしてMoMA ニューヨーク近代美術館に収蔵され、1999年に修復中でした。表面材はマホガニー突き板です。

副木と同時に開発されていたレーダーに機影が映らない木製爆撃グライダーは試作まで進み、機体の成形シェルは、インダストリアルデザイン、モダンアート造形物としてニューヨーク近代美術館の収蔵品になります。日本刀や武具甲冑が工芸美術品となることと同じような扱い。

 戦時中の熱硬化型合成接着剤の發明と成形合板技術は、戦後は民生用途に使われて、ミッドセンチュリースタイル、モダーンファーニチャーデザインを生みだしました。

第二次世界大戦では、武器製造技術の進化が著しく、ドイツでは機関銃製造から多軸旋盤機が開発され、現在まで6軸自動旋盤からNCマシニングセンターにまで繋がりました。著名な拳銃メーカーは敗戦後はスチールオフイス家具製造へシフト。敗戦後、日本でも武器製造メーカーはオフイス家具製造へとシフトし、従来の手加工家内工業から、モールド量産成形や機械設備による工業製品化していきます。

メラミンレジンの電材成形品、接着剤ユリアやナイロン・ポリエステル繊維は、軍事技術から生まれてきた合成化学工業材料でした。

 このLEG SPLINT 成形合板製副木も、救急医療具の平和な工業デザイン・アートとしてミュージアムコレクションやウッドワークデザイン教育科目に役立てたい。メディカルウッドワークの量産技術のルーツや、工業デザインアーカイブズとしても次世代に伝えたいと思います。

敗戦後、75年が経ちましたが、多くの犠牲者や被害が償われずに置き去りです。

● 家具インダストリアルデザイン・ベストブック(唯一の専門図書)

「Eames design The work of the office and Ray Eames 」1989

By John Neuhart   Marilin Neuhart   Ray Eames

Edited by Charles Miers  Harry N.

Abrams Inc., Publishers, New York

ISBN 0 – 8109 – 0879 – 4     p.465     227 x 300 x 31 mm

p.28 – p.29    p.32 – p.33   p.34 – p.35    p.42 – p.43

※For sale  コレクションの譲渡

LEG SPLINT   STOCK NO. S2-1970  未使用新品(一点)クラフト紙包装ラベル部分残欠保存

詳細は、ABE Galleryからお問い合わせください。

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木の総合学研究 2020 「前線負傷兵搬送用医療成形副木の開発」「メディカルウッドワークス」「望まれない医療具デザイン」「Eames design / Molded Plywood Furniture Design in Mid-century」「木の接合・スタッキング重ね入れ子構造」

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