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重要基本工具「ケヒキ」「ケガキ」の原形ルーツ_進化を辿り室町時代中期から20世紀末まで|「計曳ケヒテ」「界引ケヒキ」「卦引」「罫引き」「毛引き」| 13代國政のケヒキ自作揃い ハンドツールジャパン−37|楔締め_木のジョイントシステム-34
「ケヒキ」を見れば仕事の質、技、年季がわかる。」指物師・戸工(建具職)・舟大工、番匠、箱屋・利器精密木工・木型職には、重要な計測・墨付け基本工具でした。
仕事にあわせて自作、人に見せたり、買うものでもない。造るのは楽しみ。スタイルは好みで属人性が強く、構造はシンプル。微細な寸法を印す、クラフツマンシップが染みつくハンドツールです。
「二丁筋ケヒキ」 13代國政組手_枘型挽き 枘組板厚のうつし・罫引き
アテ板上でケガキ、手持ちで刃先を確認しながら厚みを決め、棹の微調整はアテ板で打つ。
13代國政のケヒキ・ケガキ
❶ 豆ケヒキ
点・線の印し_切り込み 13代國政作
少職は、製図用具・モデリングに頻繁に使います。
❷ 筋ケヒキ(小)針付き ダブル
針付き小ケヒキ 下穴芯位置・枘幅決め
細釘を打ち、先端を目立て鑢で針突きにします。(天地二面付け返しリバーシブル)
❸ 筋ケヒキ(中)M 鎌楔締め
楔が落ちて行方不明になることがないが、棹を外す時は引っかかる。鎌形の切り込みテーパーが微妙
❸ 筋ケヒキ(中)M
棹と楔の微調整:楔頭は台を縦にしてアテ板縁で素速く打つので木口がくずれる
❺ 筋ケヒキ(大)L
金具類の取り付け位置アタリに出番も多く、棹の痛みが速い。
❻ 割りケヒキ 堅木用
刃の泳ぎブレ、ビビリを抑える太棹丸面・段ツキ_手許側楔締めで剛性を高め 強く引けるジョイント構造 刃を引っ込め安全第一
鋸挽きしない素速い薄板割り_指先・手のひら全体で刃の動きを感じ取る
❼ 割り毛引き 軟材用
片刃・諸刃あり
❽ 長竿ケヒキ
棹は差しかえ数種
❾ 円弧ケヒキ 鐵道R定規用
棹は半径により差しかえ 桂柾材カーブ定規を削り出す(測量・製図精密木工 祖父伊藤吉之助作)
❿ 縦楔締め / 二丁ケヒキ_上下針付き
縦楔かんざし型 ズレを防ぐため棹を強く締める 楔が台下に突き出るので手持ち作業向き(木型職などの精密な寸法うつし・ケガキ用)
ケヒキ刃既製鍛造品
・筋ケヒキ 片刃・刃先鋭角 刃幅: 二分~四分
・割りケヒキ 片刃・諸刃あり 三分~八分 鋼付き 刃先角は寝かせる
既製品 鎌ケヒキ・筋ケヒキ
ネジ締めは点接触で圧締力が足りない。刃先が泳ぐとズレ動き、信頼度がさほどでもない。頭にもロックボルトを入れないと締まらない。丁寧な造りで高価。
ケヒキの原型・ルーツについて
①「計曳 ケヒテ」番匠之具
「新撰類聚往来 上巻」 丹峯和尚 作 慶安元年 1648 敦賀屋休兵衛板/ 京都 室町時代中期 三次市立図書館蔵・デジタルアーカイブス
②「界引ケイヒキ」「工匠之具」
「卦ケを引て 厚アツサを究キワムル 者ノ、或は 枘ホゾを付、穴を彫ホル に用ュ。又 薄ウス板を割ルに 小刀の鉾を嵌たる者、割卦引と云う。
和漢船用集 巻十二 工匠之具 文政10年 1827 金澤兼光 編集 大阪・藤屋徳兵衛出版 江戸中期(筆縦書き文)
「卦ケを引て 厚アツサを究キワムル 者ノ、或は 枘ホ を付、穴を彫ホルに 用ュ。又 薄ウス板を割ルに 小刀の鉾を嵌たる者、割卦引と云う。
多く戸工トヤに用ュ。工匠又用ルことあり。」
「卦引」図には、定規台に細棒を嵌め固定する構造が描かれており、小刀刃を板に嵌めた「割卦引」が並んでいます。横使いがメインで現代でも十分仕える。縦使いは、枘穴深さを見る。
占いを木に印した故事から「卦ケ」の文字があてられ、棒・棹の形で計測。「計ケイ曳き」はかり印すが、後世には「界引ケヒキ」、明治以後「罫引きケイヒキ 毛引きケヒキ 罫書きケガキ」に変わりました。「卦ケ」を引き、 厚さをきわめ、枘彫り 穴深さを測る具。
模写して気づいたのは、卦の嵌め位置が矩になり、やや尖った先口で目盛り点刻があるようにみえます。縦て深さ・突出を計り、横使いで幅決めができる。打ち込み卦は金属製で、先端を三日月カットして刻み印すものだったと想像。
現在、一般に使われる「罫引き」は、点や細線をケガク木工用具ですが、枘寸法や板厚を決め、錐穴・取り付け位置を印し、幅寸法をうつすなどに活躍します。
「卦ケ」は、占いを木にしるす故事から転訛。細棒を寸法定規につかい、計り印すことを意味したのが、明治期には「罫引きケビキ」、極細線を毛に見立てて極細線をひく「毛引きケヒキ」へ当て字から名称が次第にかわりました。
定規台・棹・(穂・刃)のシンプルな造りですが、太墨マーキングでは傷がつかない鉛筆差しや型紙にはボールペンが具合もよく、傷をつけない塲合に筆記具を利用します。台鉋と同様に引き印す道具ですが、仕事に応じて造り構造・形状に違いがあります。
「割り返し」毛引き刃組子の木殺し
■コメント:襖屏風・額縁専門職二代目 牧野弘樹
襖の骨の事を専門用語で「割り返し」と呼んでいましたが、骨の組子を作るのに、厚さ4分の杉の板に両面からケヒキを入れて割っていたことから来た呼び名だそうです。
ケヒキが襖の骨に都合の良い点の一つは、刃の厚みにより木殺し状態になり、組手を組んで水でしめらせればギュッと締り、より強い組手なります。
プレーナー削りの組子と溝切カッターの組手ではこうはいきません。私の時代はプレーナーでしたが。」
これは、とても有り難い知見です。
指物職から建具・襖屏風、額装へと特化した専門職が活躍したのは明治後期からと思います。
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木の総合学 2021 「計曳・卦引きの原型と変化」「 楔締め係止・ロックジョイント」「自作道具・ハンドツールジャパン」「割り返し_フスマ骨組子締め」
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