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北安曇地方の漆掻き・塗り 現場ノート2005 – 2006 |枯れ死・根生え再生/鬼無里村_竹林内滅菌抗菌樹体の併立ち_人里近く/小川村薬師沢| Urushi Extracting & Lacquering Note in North Azumi 2005 – 2006 |自然のオーガニック樹液の殺虫殺菌_滅菌抗菌力_その抗体潜性を明らかに|木と人間の関わり_ウルシ皮膚科_木の内科 – 79 

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

地表で長く生きた樹木は、強さや免疫力を持っています。蟲やバイ菌が寄り付かないように、匂いや治癒物質を分泌し微細放散。損傷ダメージを受けると即座に樹体防衛_治癒反応を起こします。

 約一万年前から、日本及びアジア各地では、漆の傷治癒分泌物樹液をウルシ塗りや膠着ジョイント材料に気がついていろいろな工作物に利用してきました。有用樹のトップクラス。その殺虫・殺菌力や抗菌耐性が次第に明らかになり、自然由来の療法は感染症や多くの疾病予防・防疫にも役立ちます。オーガニックで衛生・医療マテリアルとしても長い生命維持力の仕組みや根源を明らかにしていきます。

 漆は、樹体から塗り物まで蟲やバイ菌が寄り付かない、居られない塲所として特異な見えない木の力が働いているように見えます。生命維持の全体バラランスが狂い、現在では生命を育む森林樹木を伐り過ぎた果てに生命維持基盤そのものがおかしくなってしまっているという実感が強くなってきました。

「漆掻きは夜が早い。朝暗いうちに出て、夜明けとともに作業を始める山の中。」

 友人の知り合いの「漆掻き・塗り」職人大出 晃を訪ね、漆に関わる詳細を伺い、親方筋を持ち伝承されてきた知見やいろいろな現場仕事を専門的に記録しました。

 

1日の収量は、570g _日当と山持主への謝礼、交通費などを合わせた費用計算 更に「黒目る」精製の後処理工程までをみると、水分20-30%を脱く_漆は大変な労力がかかり、とても貴重で高価なオーガニック材料になります。森林だけでなく、自然の植生に守られた暮らしのなかで「衛生・医療・防疫」作用は極めて重要です。

 

漆の樹は人里近くあり、人を恋しがる

ウルシ掻き始め 春木天蓼マタタビの葉が白くなるころ

・五月_六月_七月 水っぽい 拭き漆用_ 採取時期・天候で漆の緩さが異なる  20051128abe

・樹の育ち、個体差がかなりある

・里の漆は、山漆に比べ太い

・午前中は良く出る

・日によって多く出て、翌日は全く出ないこともある

・低気圧・雨が近づくと樹液の出が良い

・暑い時、長時間桶に入れて動いていると攪拌されて黒目る(水分蒸散)効果がある

・漆樹に苔が着いているのは「傷や痛んだ部分に樹液を出して弱らないようにしているので剥がしていけない」口頭伝承20060824abe

・四方掻きはその年に伐採してしまう殺し掻き  枯れ死しないコトもある

・漆掻き代は持主に支払う 一本 1.000円  太い良く出るものは 10.000円

漆かぶれがおきるので触らない 厄介木ですが村人の嬉しい臨時現金収入

・かぶれるのが怖いので伐採工事、倒木や支障木をかたづける依頼が多い。バスの運転主から連絡がくることもある。

・秋口冬の前まで出るが粘りが高く、塗りには使えない 接合用に使う「その年最後の漆」 2004年11月28日 翌日は雪となった。

・鬼無里村の漆は、浄法寺産漆にくらべると「くろめても軟い」品質が優れ、使い易い。

分根から発芽し幼木再生

枯れ死翌年に分根で芽が出る 実生だけではなく、樹勢が強いので周縁に次の幼木が育つ  根系発芽 Rooting_ germination

人里集落に近く育つ 竹林内殺菌・抗菌性植物の相性

「樹皮に着いた苔は剥がさない」傷のセルフキュア_瘡蓋の役割

根生え_幼木再生のために竹の刈り払い

竹林や近縁に生える樹木は、風倒・寄生・喰い荒しがなく大木化します。

漆根生え再生のために刈り払い後作業  近くにもう一本成木があり、根系発芽_幼木再生のために周縁の竹伐り作業をしました。

木の生命を損傷しない程度に採取して繁茂させる「養生掻法(いけかき)」と漆樹液をとれるだけ採り、幹を伐倒して根生え発芽させる「殺掻法(ころしかき)」があります。

*同行作業協力:柏木工房 柏木 圭

 抗菌性がある竹林と殺菌力が強い漆樹は、伴立ち共生して相性がよい。近くには「山櫨」「欅」の大木もあり、樹種が多く豊かな植生が印象的な小川村の薬師沢には、古い松尾マトオ集落跡がありました。

大出 晃の漆塗り仕事

■漆塗りなおし依頼品の「ホカイ」秩父地方の江戸時代作品

 「行器・外居 ホカイ 」 外に現れ出る食物を入れる器

「行器ホカイさし樽も今ハ田舎ノ祭礼、熱田ノ御神事ナド二使フ計バカリ」

「手杵テキネ」 泥江邑隠士 亨保15年1731 江戸初期には、流行り廃れています。このほか、獅子頭の修復もありました。

大出 晃 は、木曾平沢漆塗師佐藤阡朗の三人の弟子のひとり__数年後に長野県国際文化交流でドイツ・オーストリアへ_漆塗り修復に関わりました。

「漆 Urushi 」「ヌリ」文字・属性の由来

「具木名」漆ウルシ 「新撰類聚往来 上巻」 丹峯和尚 作 慶安元年 1648   敦賀屋休兵衛板/ 京都 室町時代中期

「物ヌリテ色潤美ウルワシ 之畧也」

 本字「桼」は、木を切り傷つける表意、ハネ・ハラライ(掻き切傷)表意文字です「ヌリ」の文字は、髟(かみかしら)に木、人が並び、ハネ・ハライで木を切り裂く字形

「木で束ねる人の髪」で作った刷毛」「木に傷をつけて潤むウルシル」を塗る 「ヌリ」を説明した江戸中期の辞書の表意字体 なるほど

「和漢三才図彙」に記載された医療処方には、

「蟲殺シ血ヲ行ラハレ 日久キ 凝結ノ之瘀血ヲ破リ 人腸胃ヲ損フ_喉痺欲絶不可針藥ス者ヲ治ス」_「本草ニ唯謂ノミ下血ヲ治ス」「和漢三才図0」絵巻 八十三喬木類「漆」

「蟲を殺し 長い凝固悪血を破り 血行をよくする_人の胃腸を損なう_喉痺れ欲絶え 針薬が効かない者を治す_本草(中国の医薬原典)には、下血を治すとだけ謂う」(部分のみ現代読み変換_強い医療作用がある文意_血ヲ破ル とはブレークスルー_動物・植物性蛋白質と反応するカブレは激性ですね。)

強烈な作用など、明らかにメディカルウッドとして扱っています。江戸時代の医療は「薬師クスシ」が行い、幕府の許可認定は要りませんでした。「薬師沢」は、医療の谷_薬用植物の里なのです。

漆と人間のかかわり一万年 木の国 漆ジャパン

成木はカブレさせ人を近づけない、蟲・細菌を殺す強いものですが、樹勢が弱くなると腐朽菌は入ります。漆工・工芸分野では多くの専門研究があり、美しさや感覚的な評価は高まり、伝統文化を輝かせていました。

体質により「漆まけ・漆かぶれ」皮膚炎を起こしますのでゴム系手袋と活性炭入りマスクを費用し、素手では触りません。生漆道具類を保存する引き出しは、漆の匂いで充満しています。

 衛生・医療、環境・疫学的な被圧作用などの研究は真っ先にカブレ敬遠されてきました。漆塗職人が感染症や内臓疾患に耐性がある職業的な傾向とか抗体の働き、本漆の滅菌・除菌効果も、やがて究明されると推察します。新しい見聞はさらに専門性を高め、新しい領域へ到達するでしょう。

ⓒ2021 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2021 「漆掻き・塗りの現場作業と実際の専門的記録」 「漆と人間の関わり 先史時代から現代・未来」「漆のキュア・メディカルウッドワーク」

 

 

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