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ウルシファミリー「ヌルデ」味果類_総合学域からのアプローチ|A Comprehensive Study of the Rhus Family Nurude| 鹽麩子ふし 膠木ノリノキ|鹹カン味・タンニン酸を分泌し、果実は採蠟燈用|滅菌・抗菌性を備えるフルーツウッド Insight 木の内科-80

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

トップクラス有用樹ヌルデの素性は、ハイエンド。漆ヌリ、医薬・染料、鞣し材、タンニン酸原料、鹹味料、採蠟燈用に役立ち、オーガニック滅菌・抗菌力、繁殖・生命維持_治癒物質生成能力は旺盛。

人間との関わりが強い樹性ですが、漆同様に山里人家の近くに現れ、陽当たりのよい丘上、各地に自生します。

三附子 耳附子・花附子・枝附子

 

 

①医薬、治療につかう

枝附子 寄生するヌルデノミミフシの蟲癭チュウエイ(虫こぶ) 樹体を護るためタンニン成分が多量に分泌され集積。結実する時に採集して、タンニン酸を抽出して五倍子コバイシという漢方薬材にします。タンニン成分を50-58%含有  花附子ハナフシは、メルデノハナフシの寄生

五倍子には、収斂作用があり、チンキ藥、下痢止め‥止血、汗止め、鎮咳痰、血便、口腔内腫れ物、歯痛に処方される。五倍子チンキ(局方)タンニン酸(局方)ビロガロール等の製造原料

② 化学的物性の利用

蛋白質と結合反応するウルシオール_微生物除去するタンニン酸を工業原料につかう

・樹液はウルシ塗りに使い、粘度が高いものは、植物性膠ノリ継ぎ_接合ジョイント材に

・蛋白質や鉄分と反応し綺麗に除去する作用で皮革を鞣し整える

・蟲を殺し、滅菌_抗菌作用をもつので衛生的な環境の保続に活かせる

漢方薬の他、強いタンニン酸を染め織り、鉄の黒染め、お歯黒に。現在でも工芸用に活躍皮なめし、染料・インキ製造など工業原料に多量に使われている、重要なオーガニック化学物質の一つ。タンニン分泌量がずば抜けて多く、白膠木ヌルデの抗蟲分泌物質は樹木内で化学合成されています。

漆樹液が皮膚についたり、木に触ると「カブレ」炎症をおこし、痒くなることがあり、カブレ易い体質があります。

③染料・着色材として利用_工芸・工業用材料

・タンニン成分を染め織り、金属の表面着色、お歯黒化粧に

・渋下地・塗装着色

・インキ製造原料 他

④食材味覚成分に利用「鹸味カンミ」

「鹽麩子シオフシ」果実表面につく白粉(酸塩性リンゴ酸石灰)酸味塩気があり、「小児之食」子供が之を食べる(「和漢三才図彙」 味果類ふしヌルデの解説)

白色鹸ケン味物質は食べられるとは漆科の別格(雨の撥水や蟲除けになり、密集する種粒を保護 鳥は白い実を啄むことはないのでカモフラ)

別名「シホノミ」 酸味がある塩分を感じるので子供が食べる「鹸味カンミ」_菓子などに使われる酸塩味覚には、甘味、苦味、酸味、鹸味と旨味あります。現代のお菓子業界では、甘みを引き立てるワキ役。

酢・酸味料_粉かけの実 しょっぱい シオノミ

塩味と酸味がまじり、十月頃この実房をとり、水につけておくといい酢がとれるという (鬼無里村聞き取り記録)

「ヌルデの実一貫目から酢五合ぐらいとれた 房のまま水に入れておくと、粉コがとけだしてあとで濾せばいい。」サワー飲料に成りそうです。「草木ノート」宇都宮貞子著  1970   読売新聞社発行

⑤樹名の別称・地方名が151例 国産樹で 三番目に多い白膠木

各地で採録された名称は多く、それだけ役にたつ身近なポピュラーツリーでした。

ヌリダ ノリダ ノリデノキ フシノキ フシ キブシ シオノミノキ カヅノキ など 151の別名・方言があります。

身近で用途が多かった有用樹木でした。「日本樹木方言集成」 八坂書房刊 2001年 八坂書房発行

因みに、最も多い「サルトリイバラ」は349、②番目「ガマズミ」は198_身近な木本です。

⑥ 木理・木肌_材質は知られていない_出番がないフルーツウッド

「漆まけ・漆かぶれ」皮膚炎を起こしますので、玉切りや切断・削りには、ゴム系手袋と活性炭入りマスクをつけ、素手では触りません。加工材として敬遠されてきました。灌木で細いため用材には不向き。

木取り材は、フルーツウッドの特徴があり、人ハライ、防菌材になると有り難い。

また、「護摩焚き材」は勢いよく燃えてポンパチ燃え霊験灼アラタかで縁起のよい木とされ、木香はなく無臭です。この軽い材質で匂い無しと微細放散抗菌性は、計装・保存額装バックフレーミング材などの材質要件にあたります。

⑦極めて薄い外皮_強い滅菌・抗菌力をもつ材質

外皮表皮層が極めて薄いのは、蟲や菌類がとりつき侵入することができない滅菌・抗菌力が強い傾向があります。概して、樹性が強い木に共通しています。

外皮が薄い樹例:ホウの木、ぶな、カエデ類、欅、アオハダ、水木、釣り花の木、エゴノキ、ガマズミ、リョウブ、苦木等

 樹皮が特に薄いものには、寒冷気象や蟲・細菌からの耐性がありデフェンス力が備わっています。いわば薄着でも耐える体質。原木丸太を観る時に外皮が厚い材質が優れている樹種(ホウの木は内皮、胡桃・栓・桂等は外皮)と、薄いほうが良材が多い傾向があります。

⑧内皮から出る漆液は、白濁人肌色_ウルシとおなじ性状。

内皮には空隙繊維組織が厚く、酵素が多く存在し、傷塞ぎのウルシオールを分泌。空気中の酸素を取り込み、水分と反応して乾き樹脂化_瘡蓋状になり、塗り物に使われました。

抗菌・除菌性、抗酸化材質として注目

「ヌリデはひどく酸い実がなる。この木のお櫃は夏でもごはんが腐らない。 」杉野沢(新潟県境妙高)での聴き書き 「草木ノート」宇都宮貞子著  1970   読売新聞社発行

導管が太く木肌が粗い材質ですが、地面に放置しても木口や材面に腐蝕菌がとりつかないので、かぶれる内皮同様に抗菌性が強い。また、耐久性があるので杭に使われたと言う記述があります。「芯材にはフラボイノイドが生成されて反応_黄-白色の植物色素で植物体を太陽の紫外線から守る役割をしている。さまざまな植物にフラボンが含まれ、その抗酸化作用が注目を集めている。」という資料もありましたので、芯央の材色成分を調べ正確な知見を得たいと考えています。

ウルシ科は、滅菌・抗菌作用のある素材として見えない木の力を感じます。

「ウイルス・バイ菌を寄せ付けない、居られない場所」という疫学的な効能が究明されると助かりますから。

⑨詩歌・文学的引用、関心は少ない

万葉集14-3432 「可頭乃木」ヌルデ別名を詠む

⑩日本の自然色として紅葉を愛でる「ヌルデカラー」

 

和風伝統色に加えたい柔らかいピンクから、鮮やかなコントラストをだす強い色調です。紅葉のトップカラー山の賑わい。

「人里人家に近く、寄り添うように育つウルシ科」

■「膠木ヌルデ具木名」1648年 新撰類聚往来 中巻

「具木名」漆は前稿に記載

「新撰類聚往来 中巻」 丹峯和尚 作 慶安元年 1648   敦賀屋休兵衛板/ 京都 室町時代中期 三次市立図書館蔵・デジタルアーカイブス

 

■「鹽麩子ふし / ぬるて」「五倍子ゴバイシ」 「和漢三才圖彙 巻八十九  味果類」  寺島良安編纂 江戸時代中期 正徳2年(1712年)

 樹木は、損傷ダメージを受けると、立木は抗体・治癒物質を分泌して生命維持をしているのですが、その防衛機能成分を人間が取り入れることは、自然のオーガニック材料として副作用や無理な負担がありません。

漢方薬は「人体に必要以上のものは体内から排泄されます。体の自然を取り戻す仕組みが働き、快方に向かう」という漢方薬剤師がおられました。化学藥品は体内に蓄積されていきます。

■藥用樹種に関する専門書:

① 「和漢藥用植物 ー成分及藥効ー  」 刈米達夫・木村雄四郎 共著 昭和年1928 初版 増補改訂・第八版   昭和18年   1943    (總編纂的内容)

日本薬報社発行

 ■漆・ヌルデ他 採油・蠟_あかりに関する専門書及び講座

②「燈用植物」ものと人間の文化史50    深津 正著  1983年  法政大学出版局 0320-21051-7710

木の大学講座 第3期/1988年  開講 科目「木」とあかり 講師:深津 正 照明文化研究会主宰

 オーガニックなものは、医藥だけでなく、菓子の鹹味、染料、燈用など、工芸・産業基礎材料としても重要なものでした。住まいでは、無機質の工業材建築から自然素材の建築に入ると体がほっとします。くりかえしますが、長い間ずっと立ちつづけている木には、強い力や免疫・抗体がそなわり、動けないから体内で蟲や細菌に立ち向かい、損傷ダメージを治癒する自然の仕組みをもっています。

滅菌・抗菌力や抗体治癒の仕組みが研究され、樹木植生の疫学的な役立ちが明らかになると、さらに安息・ヒーリングや幇助(ほうじょ)に繋がります。恩恵を与え続け、見えないけれど深い木の力に気がつくことは、次世代へ暮らしの安全な手がかりを導くでしょう。

人間の暮らしは、あらゆる自然の資源を使い果たしつつあります。気がつけば、唯一、再生持続できる生命維持資源は、森林樹木なのですから。

ⓒ2021 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2021  「ウルシ科ヌルデの多用途から影響とその潜性を見出す」「滅菌・抗菌力に生命維持の仕組みや木香微細放散成分の癒やしヒーリング作用を明らかに」

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