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和漢薬用樹木「楸キササゲ」忘れられた腎臓病 自然透析・洗膿利尿_サヤ入り種子の採取|Natural Kidney medication「Japanese catalpa」and seed collection. Reconsidering the natural resources |樹木が造り出す生命維持物質を再考する時代へ 木の内科 -88

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

「瘡腫・膿血ヲ洗フ」千年以上続いた腫れモノや血液をキレイにし、体内老廃物を排出する利尿生藥が人工透析装置・工業化学薬品に置きかわりました。災害事故で停電すると命も危ない。

 里山からすっかり消え、特殊な樹性や優れた藥効を知る人もいなくなりました。実をつけるまで一年間マチでは薬局は間に合わず_儲からないから。アフターオイルエイジ_気象変動・温暖化に立ち向かう時代に重要な医療・生命維持資源植物となります。

コンテンツ

① 貴重なメデイカルツリーの里山結実

② キササゲの成分と薬効について

③よくわからないキササゲの樹性や樹皮_材質・組織

④ 樹名方言と植生地

⑤ 和漢藥用「楸キササゲ」の来歴・史料

 

❶ 貴重なメデイカルツリーの里山結実

生薬となるササゲ細い果実_長く下がり「莢ササゲ」に似ているので「キササゲ」別名「比佐木ヒサキ」

高樹齢木の一本下がり_ 松本市東山部

生薬となるササゲ細い果実_長く下がり「莢ササゲ」に似ているので「キササゲ」別名「比佐木ヒサキ」裂けるイメージ。

 細筒状の(約30cm 径5mm )果実 が中ににビッシリ詰まり、両端に細毛がついて風で運ばれます。晩秋に枯れて裂けると周囲に飛ぶように軽く、種子は扁平で下端に凹みあり、実果は約7mm 幅2.3mm程度_種核が包まれ、か弱い感じです。

 ❷ キササゲの成分と薬効について

「利尿作用がある Catalpiside 配糖体を含み、腎臓炎・水腫性脚気などに利尿薬としてつかわれる。一日10g 煎剤_莢ササゲににている細筒状の果実には、多量のカリウム塩、パラオキシ安息香酸、クエン酸などを含み、利尿作用がある Catalpiside を含有。腎臓炎・水腫性脚気などに利尿薬としてつかわれ、家庭薬にも配合されている。」

■ 引用資料:「和漢藥用植物 ー成分及効用ー」 刈米達夫・木村雄四郎 共著 日本薬報社發行(昭和3年1928 初版  第八版1943年)他

江戸後期の「和漢三才圖會」には、「瘡腫・膿血ヲ洗フ」という説明があります。「利尿作用がある」では、血液を綺麗にする浄化のイメージがなく、「体内老廃物を排出する透析効果があると」すれば、自然の医療薬としての再認識も蘇るのではないかと考えます。

「人工透析」は病状を進ませないけれど、治癒はしないので、不治の病のまま過ごすことになるのでは?確かに人工透析していれば延命でき、パイプで血液中の老廃物をくみ取り、キレイにして病状をやわらげますが、腎臓疾患を治すのではないし、腎臓に負担をさせないため排出する利尿作用とは少し違うイメージです。昔の処方を知らないと自然薬の再活は定かではなく、「利尿作用」が、コヒー・御茶のカフェンでトイレが近くなるイメージと重なります。

患者は生きながらえるために定期的に通院しなければなりません。腎機能が低下する前に、和漢藥用樹を植ておかねば間に合わない。実果が垂れ下げるまでの成木になるのは、40-50年かかる。いずれ石油がつきれば、自然の藥樹治療法に回帰する時の為に、今から種苗を始めるタイミングと思料します。不治の病から、快復できる可能性はありますまいか?

細筒状の(約30cm 径5mm )果実 が中ににビッシリ詰まり、晩秋に枯れて弾けると周囲に飛び、実生でふえますが、発芽率は低い。種子は扁平で下端に凹みあり、両端に細毛がついて、はじけると風で運ばれます。実果は約7mm 幅2.3mm程度_種核が包まれています。か弱い形状で周囲の発芽・実生はすくない。(中国原産 – 古代に渡来した藥用樹)

❸ よくわからないキササゲの樹性や樹皮_材質・組織

 薬効は果実サヤと葉にもあり、虫喰いは見られず、樹皮と枝節元・木部、根系の抗菌抗体の分泌発出、化学成分などは、これから究明します。古い伐痕の切り口は、素性の良さを感じました。

キササゲは、棋ゴバン、枰ハカリ棒材になるという記述(和漢三才圖會)がありましたが、商材として出ることはないので有用木材扱いではなく、医藥剤分野で扱われてきました。伐り倒し、材木にしてはいけない重要な薬用樹木だったからでしょう。因みに、樹皮・材質・根系に関する知見や資料が見当たりません。杢目は見たこともなく、藥用植物図鑑に白い円錐形の花が掲載されていますが、幹内部を伐って、切り分けしないと樹体内組織は判りません。

果実と葉は医薬用で、木材マテリアルとしての知見は見当たらず、医療の世界では必要がなかったからでしょう。木材にこの薬理成分があれば、これからのキュア・メディカルウッドワークスにも応用できます。藥用樹キハダをみると、内皮から辺材部に黄色のベルベリンが滲入り、成分色素が出てきますから樹体内に蓄積する微細成分の放散にも着目しています。煎じるだけでなく、サヤを粉末にして飲用したり、チョコ被せや青サヤの薬膳料理を試します。

因みに、植物の藥効成分は、蕾・花・果実・葉・茎・枝_種子や樹皮・根が主なものですが、従来の材部利用では、苦木・クスノキだけでした。幹内部の抗体・抗菌バリア形成、木部の微細成分や経時変化は、まだ未知の領域なのです。←小職の木の内科重要研究テーマのひとつ

❹ 樹名方言と植生地

 カミナリササゲ カワラササゲ カワラギリ ヤマキリ ヒサギ ユウダチノキ ソウメンノキ アズサなど各地方にあるので、全国的に分布していた身近な樹木でした。青森・岩手・秋田・宮城・佐渡・栃木・三重・岡山・壱岐・石川・福井・千葉・和歌山・長野・埼玉各地に伝わる。(S;「木の大百科」平井信二)主に長野県・埼玉地方に有り、宮崎県での採種例もありました。(S;日本植物種子図鑑)

 江戸時代の農政全書に特筆され、山中に多く直立して目立つという記載(和漢三才圖會)がありますが、現在では激減して中信地方の里山や河畔林・社叢で稀にみかけます。実生種が発芽し、根を下ろしにくいのか、幼木は見たことがありません。

 ❺ 和漢藥用「楸キササゲ」の来歴・史料

・具木名 108樹種には、「楸キササゲ」が記載されています。「新撰類聚往来 中巻」 慶安元年 1648  (室町時代中期)

・和漢三才圖會 巻第八十三 喬木類(江戸後期正徳二年1712)には、詳しい解説がありました。

和漢三才圖會 巻第八十三 喬木類(江戸後期正徳二年1712)

「新撰類聚往来」具木名 楸ヒササキ → 比佐木ヒサキ→「ヒササギ」と変化しています。

※2021年10月、自然育種用にサヤ入り種子を採取しました。芽生え種苗・実生テスト用に頒布します。

ⓒ2022 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2022   「和漢薬用樹キササゲの実種採取」「樹名・医薬利用樹の史料」「自然藥の利尿透析効果_里山の現存薬用樹調査」

 

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