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針葉樹香木類「いちい・オンコ・ミネゾ」旺盛な養分・抗体の発出_冬目年輪層へ取込むバルブ細胞の鮮明な動き|ゆっくり肥大成長する斉一な気高い木理 | Intakes of the antiblastic nutrients and unifomalized winter grain are appeared in slowly-growing with stable vital sigh_Insights of the red tree and wood ICHII Japanese Yew |生來の抗菌・抗体力をもつ生命維持力と特異な赤木の樹性 木の内科 -95
日本各地に生育していた赤木針葉樹ですが、樹形や材質が良いので天然林は伐り尽くされ、貴重な資源植物、有用樹種となりました。実際の伐採現場作業_挽材切削から、木材の養生・自然乾燥まで内部の変化を明らかにし、原木サンプルの枝元・入節・樹皮・芯央まで、樹性の特長を捉えながらリアルな知見を添えます。
樹木固有の性質やイメージは、生命時間の塊であり、細部から特長が鮮明に現れてきます。
本稿では、「一位イチイ」は飛騨地方の名称(位山クライヤマ産出)、「ミネゾ」(峯蘇芳スオウ)は、長野県中信地方・安曇野、「オンコ」は(赤木アッコの転訛)北海道内での名称を使い分けます。同じ樹種ですが、産出地が異なると樹性や材質の違いがあります。
コンテンツ
① 飛騨位山の一位 _赤木の材色について
② 信州安曇野の「ミネゾ」材面_枝元・入節周縁に現れるバルブ細胞の養分・抗体の取り込み
③ 枝元・入節に現れ、養分・抗体の取り込みを担うバルブ細胞
④ 内皮からも芯央へ入るダブル摂取_均質で濃色の芯央材質_緻密で年輪肥大が揃っている安定した木理
発出・分泌、取込みを調節するバルブ細胞と中間タップ
⑤ 芯央部の抗菌防御バリア形成
⑥ ミネゾ原木のカットサンプル
⑦ イチイの現生巨樹
⑧「いちい」日本各地の樹木名方言
⑨ イチイ 「赤木」の歴史資料
⑩「オンコ」に関する専門図書
❶ 飛騨位山の一位 _ 赤木の材色について
「位山」の一位木は、樹皮や芯央色も濃く、質感が最良とされてきました。原木を製材すると濃紅紫色が滲み出てくる「赤木」の別格です。樹命のつきる前に現れる劇的な生体バイタルです。現在でも皇位継承時には伐り出されて、「あららぎ笏」が制作されます。正一位の身分位階を示す「イチイ」の語源です。
位山の一位_挽材面に紅濃色素が吹き出ます。(2018年伐採_2019年5月 製材樹皮つき残材をサンプルとして記録)位山の一位は、高樹齢で目詰み芯材部が特長的です。
■イチイ良材の評価_天然木資源の使いつくし
成長が良く、通直で年輪層が緻密。芯央赤身が強く、緻密な材質が良いとされます。
良質材が飛騨地方から無くなり、北海道内でも天然林が伐り尽くされ、高樹齢樹は、天然記念物や旧宮村の位山国有林に保護自然林や旧高根村一位森八幡宮などに残る保存樹だけとなりました。
現在では植林地は残ります。(現在の高山市一之宮位山)木材市場に出る商材は、稀にありますが、小径木・植林木や庭木が多い。北海道内の保存樹林は未確認です。
❷ 信州安曇野の「ミネゾ」材面_枝元・入節周縁に現れるバルブ細胞の養分・抗体の取り込み
外部からは全く見えませんが、毒々しい色調。常緑樹イチイの葉には、タキシンTaxin 、内皮層・芯央部等にも毒性のアルカロイドを含み、枝元・入節・芯央は、動物の心肺機能を弱らせます。侵入した菌類・微生物・虫に対して紅紫色の抗体防御バリアを造ります。
ダメージ部分をとり囲む色変で防御・治癒出動を起こすことが判ります。冬目年輪層が肥大するのではなく、抗体色素の蓄積固定と樹体内生命維持のバランスを安定させ、樹体組織の特異な香気と耐性を作り出していると考えます。
アルカロイドは、小動物に強い生理反応・血圧低下をひきおこし弱らせ_漢方医薬では利尿・通経、鎮咳、駆虫につかわれる。イチイ科には、同じ針葉樹香木類の代表的な芳香貴重樹「栢カヤの木」があります。 (引用図書:「和漢藥用植物ー成分及薬効」 イチイ科 日本薬報社刊昭和3年- 18年発行)
❸ 枝元・入節に現れ、養分・抗体の取り込みを担うバルブ細胞
❹ 内皮からも芯央へ入るダブル摂取_均質で濃色の芯央材質_緻密で年輪肥大が揃っている安定した木理
芯央部に色素を蓄積し、赤紫色の躯体バリアを分泌してダメージを取り囲みます。入節には、養分・抗体を取込むバルブ細胞がありますが、枝元から目一杯に吸収して濃い材色を固定します。取込みを調節するバルブ細胞の他に、中間タップから冬目に入り年輪層に摂取・蓄積される二重構造で、内皮からも直接芯央へ入る複合摂取は、斉一で芯央色が濃い特異な材質を造り出します。
内皮からも抗体を冬目へ取り込む摂取細胞B
入節の周縁や離れた要所に単独に現れるもの_連続して供給する中間吹き出しタップ状があります。冬目層に給配するバルブ体の構造は、車のエンジンへ送り込むインテークマニホールド(Intake manifold )的役割と言えば、送り込み・摂取イメージがピッタリ。
冬目に吸収・摂取されると、年輪層が出来る様子がわかります。冬期には肥大しないので、線状に静止した状態から_春・夏に肥大成長し、ほぼ同質の木理となります。他の針葉樹と異なり、冬目が静止している広葉樹ホウの木とよく似ています。
❺ 芯央部の抗菌防御バリア形成
■材色の変化からみる生命維持機能を考究することが、次の重要なアプローチに繋がります。
鮮明な材色は、樹木自身が造り出すケミカルです。分泌される脂や木香は、細菌類を抑止したり、動物から護るために微細放散しています。受動的で攻撃性はなく、カブレさせたり、近づかせないようにするものもあります。その成分やダメージの修復・治癒再生力や仕組み組がわかれば、環境や人体に及ぼす影響だけではなく、見えないミクロの耐性・防御機能も理解出来そうです。現れる抗体色素は、患部ダメージに集まり、その性質と由来を語ります。
❻ ミネゾ原木のカットサンプル
❼ イチイの現生巨樹
天然記念樹 推定樹齢500年 長野県北相木村宮之平
樹皮紅紫色が旺盛な生命力を発散しています。「赤木」と呼ばれる樹木は、紅色染料につかわれていますが、菌類・微生物、虫喰いを防御する成分があります。板材の自然乾燥では、養分が多い内皮・白太辺材には乾燥が進むと稀に入ることがありましたが、芯央には入りません。
❽「 いちい」日本各地の樹木名方言
イチイ、あかき、あっこ、あららぎ、オンコ、きゃらぼく、すおーのき、ミネゾ 等 国内各地に69例があります。色調・木香・用途からの名称が多い。(日本植物方言集成)
❾ イチイ 「赤木」の歴史資料
新撰類聚往来 中巻「具木名」108の樹種を経文のように構成した筆記本 慶安元年 1648 室町時代中期
伽羅木 オッコ _イチイ・オンコの古名
和漢三才図彙巻第八十二 香木類(江戸後期正徳二年1712)
❿「オンコ」に関する専門書
「オンコ 北海道の自然」 斉藤進一郎著 昭和61年 北海道新聞社発行
p.237 129 x 183 x 9mm ISBN 4 – 89363- 158 – 6
植性から環境資源、利用まで広範囲の林業試験場におけるフィールドワークを記録した専門書_材質や産業技術に関する内容は含まれませんが、樹木の保護や環境への眼差しが感じられる好著です。
工芸材の利用、健康医薬品、美容、染料、果実などの知識は、各分野では詳しい知識が拡がりますが、日本産出材一位に関する綜合的な研究と専門書が必要です。
滲み出し、徐放する機能性材質としてみると、現代の高度工業化社会で自然の生物素材は、医療や生存環境に重要な役割を果たす可能性があります。針葉樹香木からでるテルペン類の木香には、微細放散が眠りを誘い、疲れを癒やす効果が確かめられています。
微生物や昆虫を抑止し、寄り付かないという性質は、ホウの木をはじめ科学的修復保存に関する最新の材料技術の編纂は、ひとつの先駆的なアプローチですが、まだ当分ありません。
ⓒ2022 , Kurayuki Abe
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木の総合学研究2022 「針葉樹赤木の内部_生命維持の動き_抗菌・防御・ダメージ修復」「ミネゾ樹体細部の挙動_ダイナミックなバイタルサイン」「イチイの材質成分とその利用」