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「削ろう会」のはじまり 鉋台打ち名工・青山駿一の仕事場から 青山鉋店の来歴+日本砥石研究会 長原政則 砥石講座記録 

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

たたら見学宿で偶然再会し、先ず「砥石講座」からスタート、鉋削りミクロンを競い楽しむ。専門家・好事連が寄り添うと遊びも大きなムーブメントとなります。

始まりのいきさつ、(世話役 青山・杉村談話より)
 1996年 平成8年9月、神戸竹中大工道具館で開催された村松貞次朗の講演に青山駿一が出かけた際、奈良から松田 豊(色彩デザイナー)が鉋削り屑を台紙に貼って持参。それを見た青山は「もっと薄いのがでます」と口走り。このやりとりを見た周りの人が寄ってきて薄削り談義となり、長原政則(日本砥石調査会/岡山鉋塾)、香川量平(宮大工)らと出会い。鉋削りを考究している人々は「是非プロの本当の削りが見たい」という意向がでました。歴史的にみれば、名人上手、道具権威や鉋削り専門技能の客観評価もまだないのです。
 同年11月、岐阜県関市で「関ナイフ塾」を主宰している尾上卓生(岐阜県技術アドバイザー)が関係していた出雲「たたら製鉄」見学行を知り、青山駿一、杉村幸次郎(宮大工・浅草屋)、望月義伸(伊藤平左エ門建築事務所)3名が参加。島根県吉田村の「たたら製鉄」見学の夕方、宿で長原ら岡山県中学校技術科の教員3人に偶然出会って、鉋削りを楽しく遊ぼうという交流企画が持ち上がりました。
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第一回削ろう会の様子 砥石の授業から
 明けて1997 年1月、杉村 と青山が「削ろう会」開催を準備し、知り合いに参加を呼びかけ。2月22日、初日は、青山鉋店で砥石の話し勉強会、翌日23日は、杉村の浅草屋作業所での削り実技イベントを実施。22日の参加メンバーには、学者の久我睦男、武生の直井光男棟梁、色彩デザイナー松田 豊、京都研磨砥石工業所 木村 潔,薬師寺現場宮大工 村上宏治ら30名が受講しました。砥石について専門知識を得る初めての機会になった青山鉋店の中は満員。第一線のプロが真剣に学ぶ熱気が伝わります。青山の貴重な優品も手近におき、砥石と刃物研ぎの技術について実践・実用の解説は初の専門講座となりました。棟梁・社長・博士・名工、ベテラン職人が揃うと誰が先生で生徒か、業界トップ先達豪華メンバーの参加。「木」と「鉄」と「石」の取り合わせ、プロの伝統技の奥義を知り、醍醐味を体感する場。引き続き第二回削ろう会でも開講されました。
削ろう会-1 削ろう会-2削ろう会−3

削りの関連分野業界人が参集 技能・道具・熟練人ベストコネクション

 参加者は、研究者・宮大工・大工・木工芸家・技術科教員・神祭具職・家具製作・木材業・デザイナー・外科医、建築設計家・砥石屋・刃物製造会社社員・棟梁、ベテランから見習い・学生まで多彩な顔ぶれ。初回は、鍛冶職はいませんでしたが大工親方筋、業界トップの先達に出会うことで高度な最上の道具や資材を直接取得できるベストツール・マテリアルコネクションが生まれます。従来は、問屋・大工道具小売商の介在で道具を手に入れていましたが、刃物鍛冶や台入れ職人、砥石採石職の熟練工に直接コンタクトできる場ができ、技術伝承や仕事を教えてもらえ、業界・専門領域を越えて繫がりが生まれることに。日本職人史上の画期的な出来事です。
専門家・好事連が寄り添うと遊びも大きなムーブメントとなる
 高度な鉋削りの技能を修得するには、刃物金属研究者、鍛造鍛冶職、台打ち専門職と砥石専門家が一同に参画、それぞれの技術や知見を出し合うことが必須です。若手にもベテランにも現物・実際の道具で知識とともに実技を修得できる絶好の時間となりました。
異なる分野のプロが出会うことで問題意識が共有され、名人・上手、研究熱心な職人たちが寄り添い交流、もてる力量を出し合う、蓄積を持ち寄る素晴らしい会になると実感。私は、二回目の武生で所有しているJames Krenovの西洋鉋作品と本などを展示、1998年第三回奈良会場では、高岡の名工岡崎喜久治作手打ち鑢を出展しました。名工の道具作品コレクションの持ち寄り展示・直接頒布もされています。

時代変化への対応と産業文化存続のために

 合成材料の津波、大工仕事の減少、建築工事の工業生産プレハブ化で手工具が激減、刃物工具業界の常識・商習慣も大きく変わりました。切削刃物が最も進化した時代に用途がなくなる現実は、日本の木工伝統文化の質の転換点を意味しているようです。需要がなくなれば生産供給が止まり、道具がなければ技術が衰退していく。この課題を次世代に託すには、選りすぐりの道具と使いこなす技術・知恵をベテランが若手とともに共有、密着して体得したノウハウを相対で伝えることが一つのソリューションとなるでしょう。
現場の職方は、腕に覚えのある熟練工ほど手仕事への愛着が強く道具へのこだわりも半端ではない。仕事の歓びを機械に奪われていくのが寂しく、研ぎ・削りの世界に熱中する一時です。親方も弟子も偉い人も素人も一緒くたの賑わい。腕前があがり削る歓びにはまる。研ぎが上達すると自信が沸き、切れ味がたまらない。参加者の楽しみ、意気込みがすごいわけです。興味・関心が高まれば道具への傾注も起きるので産業経済にも反映する副次効果があります。
削りを楽しみ遊ぶことからはじまり、プロの職業意識を突き動かし、連鎖反応で回を重ねる毎に参加者の拡がりが続きます。利益を度外視、カッコ良く、面白いことが大事。実際の仕事につながる実学・実技、実務を身につける貴重な場所です。普段は、出会うことがない先達名人に指導を受けることができる特別のステージは、削リスト・削り学園の様相。手仕事の時代が動く現場に居合わせることになりました。
青山駿一 Aoyama Shiyun ichi 略歴
・初代 戸谷筆太郎 明治39年 名古屋にて開業,屋号「台筆商店」鉋台打ち販売。
・二代目 次男 青山秀次 家業継承、 昭和21年 名古屋市熱田区金山町1丁目にて鉋台製造・大工道具店開業。 戦後の復興期に活躍。
青山鉋店1990
・三代目 青山駿一  昭和7年3月8日生まれ、家業継承。 1991年10月「ウッドワークサミット1991」(松本市AQデザイン開発研究所にて開催)ゲストメンバーに招聘されて鉋台打ちを披露。
1995 年金山駅周辺地域再開発のため中川区露橋に移転。 454-0222 名古屋市中川区露橋2丁目6 – 8   青山鉋店
1997年2月22日 第一回「削ろう会」砥石勉強会を青山鉋店作業場にて開催。鉋受注制作とともに削ろう会運営に尽力、後年、鉋制作に関する若手技能指導とともに実録を残す。平成29年3月18日逝去。
(当日写真には世話役・杉村幸次郎、ビデオ撮影を担当した須藤崇文(工房ブレス・木工制作家)及び、撮影の私は入っていません)VTR記録は別途。削ろう会発足時の記録を青山・杉村両氏の許可を得て公開しました。22日-23日 参加者数 53名  (敬称略)Photo. by Abe 970222
*記録が残っていないようですので「はじめの呼びかけ案内」(平成9年1月)を掲載しました。第一回、第二回削ろう会の配布資料記録は保存。雑誌記事「サライ」1999年4/1 第7号, 削ろう会会報記録:第1号(1997年3月30日) から第68号(2013年12月16日)「道具箱」創刊号 20030119 -No.7 20040907

1997 -2017 始まりから20年経ちました。貴重な資料ですので閲覧用に供します。VTR録画記録は後日公開予定です。

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■第一回削ろう会砥石研修 「砥石について」講義資料 日本砥石調査会 代表 長原政則

1997.2.22(土)青山鉋店内にて

①引用文献  砥石地層柱状図 合石成り 中石成り 本口成り

②梅ヶ畑合砥鑛山跡概念図

③日本列島の地体区分 丹波帯中央部

④白亜紀後期四万十帯の形成過程

⑤ジュラ紀のアジア 近畿地方の地質構造発達史

⑥古生・中生代の放散虫化石

⑦岩石の組成と分類  火成岩・堆積岩・変成岩

⑧鋼と熱処理の概念図 砥石の条件

⑨日本産天然砥石一覧表

⑩日本産砥石粒度表 (1997-A 付記:調整中につき複写流出を固くお断りします。)

余技裏遊びを自慢する藤四郎

鉋削りの面白さに惹かれ、賛同を得て次第に大きなムーブメントになり、参加人数も膨れ、開催地もひろがりました。20年後には「鉋の薄削りの極限を目指す会」とか言い出します。当初は、プロが専問分野のベテラン先達と交流し学ぼうとする動きでした。現場実務経歴のない公務員が先生になると伝承は歪み、間違いがはびこります。
厚削り、逆目、斜目、バイヤス・縮み、節入りを実削するのが現職本業です。薄く削れば逆目はとまるのですが、それでは仕事になりません。逆目は、樹木が倒れないために造り出す応力拮抗組織ですから、逆目無しの削りはナンセンスです。
超仕上げ鉋盤が仕上げてくれる現場で薄削りする姿はなく、糸柾を薄くして匠の技とは笑止。親方衆の嗜み、たしなめが聞こえません。薄削りは、施主をウットリさせるには十分です。見せ場で分かりやすい。素人だましと言われました。
逆目をとめるには裏金の研ぎ方を変え、連続長切れとは違う刃角調整が必須。杢・堅木・板目では、さらに刃口も直します。大工仕事出職と指物居職のでは、仕込み勾配など大分違いがある。顕微鏡を覗き鍛造組織を調べるようになると、薄い長削りへ傾斜し、刃物のキレも偏質します。
因みに、針葉樹「椹」の場合、削り薄くするほど「コをふく」(けばたち)ので大工は難儀するものの、鉋を速く引くと削り安い。桶職は分厚く削り、綺麗な仕上がりとなるという逆の材質もあるのです。一般的には、椹・杉白太・桐材用の鉋刃勾配は六分五厘、軟質材は七分勾配としますが、決して一様ではない。
一例ですが、桐箱職でも八分勾配・刃先角26°で厚削りに耐える、剛鍛の鉋刃を重用している職方もいます。標準仕様でもゆるい決まりごとですから、伝統鍛冶屋仕事の個性を尊重し、工業規格化してはいけません。まして、統一したり、用語をいじることは身体記憶をないがしろにし、伝承の源を破壊してしまう。とかく部外者は、自分の意図を合理化するから、たちが悪い。
「鉋刃を起こすと逆目はとまる。刃を寝かせると引くのは楽だが、逆目が起きてくる。」これまた、樹種・木目により様々です。

薄削りだけを極めるという趣向に現を抜かして、本来の軌道を外れ何処へ。

道具をもてはやしても、実際の仕事は消えていく現在、魅せ自慢すべきは手仕事。本職の技の本質は全く別なものです。1980 年代、ミクロンの薄削りはスライサーで突き板を極薄にし,削り屑を接着するという貼りモノ住設建材製品がはびこりました。家具産業や大工職人仕事を衰亡させてきたことを覚えていないようです。
技能伝承は身体記憶ですが、親方は自分が厳しい修行で習ったように伝える。弟子に合わせた教え方は出来ないのは、一生食べて行けるようにするため。おっかない、うるさい事をいうのも、怪我や事件が寄りつき易く、おまけに現場仕事が危険と貧乏の隣り合わせという歴史でした。面白い魅力的な手仕事ですが、厳しい職能の陰影も直視していただきたいと思います。ガバメントは、支援することはできますが、指導や評価、関与、オーソライズするものではありません。大臣や公務員が仕事を体得し、プロを認定することが出来ますか?

仕事と遊びの見境がつかず、アマとプロが混然としてきました。

間違い本末転倒、目立ちたく珍怪な振る舞いがまかり通ります。熟知している先達は、体で覚える事とわきまえ、愚かな事にいちいち文句をつけない。江戸時代から「くそみそ一緒」と言うそうです。青山さんの話しでは、名古屋でも同じような言い回しがあると。本当に腕の良い職人は工場を大きくすることはなく、スキルはさほどでも鼻が利き、商売が上手なひとはビジネスを大きくし羽振りがよい。
半端な大工、木工サッカクが表に出たがるのは世の常、生半可では長く続かず、やがて逸脱転向する人が多いのも板しかたない。本職に習うのではなく、訓練校を卒業すると木工家とか工芸作家と名乗る時世です。無益なことだけでなく、逸脱歪曲して退廃に向かう。
本来の身体記憶と伝承が薄れ、オーセンチック正真・正調が判らないまま崩れていきます。にわか徒弟が匠・先生という有様。間違いデタラメがわからない。逸脱・悪のりは止まりません。全てをマスターしてから独立して、どんな仕事でもこなせるスキルと経験を積むことで、家族を養うことができるプロフェショナルの世界なのです。
削ろう会は20年経ち、当初の目的や本質を見失い、針葉樹柾目薄削りコンテストになりました。当初から関わり、あえて耳障りな諫言・苦言をていします。

Woodwork Summit 1991 Review

ウッドワークサミット1991では、招聘ゲストの経歴を記録しませんでしたので青山駿一/青山鉋店の略歴を記載。鉋台打ちはもとより、削りの極意など、実際の仕事や道具について青山氏の教示を受けて来ました。十三代國政流指物の技法・道具刃物に関する伝承相伝も反映して記述しています。

 鉋作品と台打ち作業は、順次掲載予定。VRT記録:砥石について」一回削ろう会講義  日本砥石調査会 長原政則 / 970222、「樫材見立て」講義・青山駿一 / 981221, 「鉋平台打ち」青山駿一/  20110226  、2015 制作鉋各種収蔵 、20161227、20170116 、20170325 、20170718  補足追記。
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