ハンドツールコネクション伝統文化工具・刃物木の内科木工

プロが手放せない使い勝手_狭いところでも重量物リフト、ズラシながら引き出し自在_レスキュー的道具にも使いまわせる「かじ寅バール」。釘抜き・解体用だけでなく、信頼性の高いユニバーサルツールとして長年活躍中。|KAJITORA BAR works in multiplex uses of subtle performance an excellent universal hand tools in TOKYO. ハンドツールジャパン – 52

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

前稿に引き続きます。

鎹を外すには釘抜きやバールを使うので、揃えられる伴打ちの手工具が何かと活躍します。バールは、重量物を動かしたり、解体バラシに便利な鋼鉄製の梃子_機械が入らない狭い現場で持ち上げ、引きずり出し、こじり開け、抜き砕き、片付け始末する働きもの。レスキュウー的作業もこなします。

鉄砲伝来以前は、戦場で体に突き刺さった矢の「鎞 ヤヌキ」外科医療具であり、鍛冶屋が火造りで掴む道具でした。ヤットコ・釘抜きは、西洋金梃子Barの良さを取り込み、改良され現場の過酷な作業を支えます。

 木材をストックする林場や自然乾燥桟木積み作業でズラシたり、取り廻しや厚板搬出に出番も多いのです。勿論、大径木や機械装置の設置や重量物の移動に威力を発揮します。災害事故にも活躍しますから、一組を配備されると危ない場面で助かります。

かじ寅 五分八 / 四尺九寸 1480mmは、世界最大級の鍛造ハンドツール_他に類例がありません。

■ かじ寅製バールの仕様 登録商標・刻印

製作品目 1992

■ 釘〆   細〆・長押用釘〆

 

先端は座繰り◎吸盤タッチ_打ち外れが起きない細部の工夫

打ちあてズレを減らす丁寧な仕上げですが、この”先端”技術を見たことはないでしょう。

■ かじ寅作品展示_東京都小金井市文化財センター

産業文化財としての鎹・バール展示 東京都小金井市文化財センター(旧恩浴館)2023

五世 隆次郞の仕事場記録と製品の展示。ご担当だった学芸員から公知の資料を拝受しましたので添えます。

■ かじ寅 仕事場を訪ねて

 釘首を確実に咥え、木部を傷をつけないで抜く「かじ寅バール」は、専門職の評価が最も高く、修理を依頼しても使うほどでした。建築木工事には必需工具ですが、品質が高く手造りのものは唯一このかじ寅製鍛造品でした。都内に残る歴代の名門鍛冶屋です。かじ寅バールは、大正時代に三世がバール洋金梃子を改良したもの。

当時、小職は隣の国分寺市南町に住んでいたので、数キロ離れた小金井中町の仕事場にお伺いした頃は、高度成長期からバブルにさしかかり、建築需要が増え、四世 勝山正博_長男 邦好_次男 隆次郞(五世)の三人で忙しい日々でした。

 バールは、時に刃物や武力行使に変わり破壊します。ヘビーな現場作業に使うので紛い物は危い。これからも鍛造焼き入れされた、信頼のおけるものが行き渡りますよう。(敬称を略します。)

● 國政自作の首曲げバール

 

釘抜き・持ち上げ、浚い・削り、こじ開け・割り・打ち砕きに出番が多い

入節入皮の除去や伐採根切りにも至便_先代が自作した鉄丸棒曲げバールです。

  ※ 紛い物フェイクご注意

かじ寅バール製品は、敗戦後に紛い物が出回り、昭和28年の問屋小売り型録には、巧妙に形や名称を変えた釘抜き・バールが道具屋に並びました。形や品名を似せたり、隙間寸法を巧妙にカモフラージュ、鋳造・機械量産で品質が劣り、少し安めの値付けではこびります。

 最近では、「かじ寅タイプ」などというインチキ・フェイク品がインターネット上に現れました。長い時間を経て、歴代が手がけた良心的な仕事を、あざとく冒涜するのは言語道断_後継かじ寅六世が健在です。正調の仕事を阻害する事はなりません。

■ 釘抜きハンマー・鉄梃_解体バール資料

釘抜きつきハンマーは、ローマ時代から使われきました。

Grocer’s and Warehouse Hammers    食料雑貨業・倉庫作業用ハンマー

S;DICTIONARY OF WOODWORKING TOOLS c. 1700 – 1970 and tools of allied trades
by R.A.SALMAN   p.227

UNWIN HYMAN Limited,London 1975         ISBN: 0 – 04 440256 2

■ 鎞 ヤヌキ ヤットコの語源を辿る

「新撰類聚往来」 中 番匠之具 同鍛冶具  鎞 ヤヌキ  扣 メウチ

 慶安元年 1648

■ くぎぬき・万力・閻魔_和名工具の記述

「和漢三才圖會」 巻八十一   「家宅類」   江戸後期正徳二年 1712

戦乱の時代では、体に突き刺さった矢を抜く「鎞 ヤヌキ」外科医療器具で使われ、釘起こし・釘抜きの由来が読み取れます。

「万力」は、萬ヨロズユニバーサルツールたったことが判ります。嘘舌を抜く閻魔様も使いますね。

 

ⓒ2023, Kurayuki Abe

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木の総合学研究2023     「ヤヌキ・釘抜きからバールへ到達したかじ寅バール」「プロが肯く使い勝手_過酷な現場作業でも安全なユニバーサルハンドツール」

 

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