「・・・の木」「木」と芸術「木」と遊び木と人間の関わり

「おりたたメール」樹の遊び立体造形 折り形の日本文化を深化させる吉崎元造 Collapsible Art Treeコレクション1984 -1988

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

日本の折形、遊びの樹形 たためて、ワンタッチで立体になる紙の創作オブジェ「樹シリーズ」Collapsible Art

紙は、折り・たためるから面白い使い方が出来ます。日本の伝統技法のシンプルな「折り」と「たたみ」を樹形に表現した作品をご紹介します。1975 頃からデザイン活動に機能性や実用偏重を脱出して面白さを求め「遊び心」が注目され始めた時期に意表を突く、新しいカテゴリーの造形を創作する遊びのデザイン、クラフトムーブメント(1987 年あたりまで続き)がありました。
「おりたたメール」は吉崎元造が創作したグリーティングカードにちなむ造語で、「折り」の構造が立体になる時の意外性を追求して樹のシリーズを5年間に制作したもの。色厚洋紙をカッターで切り、折る・組む一連の手仕事から面白い形が次々に生まれた新作を順次コレクションしました。
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・「樹 7 M」1987   215 x 176 H mm , 立体 135 x 108 x 176 H mm/2g  マーメイド紙

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・「蛇の樹」1988   124 x 283 H mm, 立体 223 x 158 x 283 H mm/46g   Pink マーメイド紙、ファイレックス紙
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・「星の樹の館」1987
150 x 190H mm,立体 150 x 70 x 180H mm/10g   マーメイド紙
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・「もつれ樹」1986    440 x 342H mm,立体 205 x 241 x 342H mm/77g   ファイレックス紙
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・「天星」1987    242 x 136H mm, 立体  120 x 120 x 136H mm/ 17g   ファイレックス紙
・「根っ子の樹II」1988   331 x 320H mm, 立体  165 x 165 x 320H mm/38g   ファイレックス紙
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・「腸捻木」1988  278 x 315H mm,立体  190 x 190 x 315H mm/51g  ファイレックス紙
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・「根っ子の樹」1988   331 x 320H mm, 立体  165 x 165 x 320H mm/38g   ファイレックス紙
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・「樹シリーズ」 1988   330 x  323H mm, 立体 165 x 165 x 323H mm/ 41g   ファイレックス紙
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小作品
・「トナカイと樹」1987   80 x 70H mm/6g
・「星の樹」1987   100 x 93H mm/7g   マーメイド紙(カード)
 「樹7 S」1987    132 x 170H mm, 立体 70 x 83 x 170H mm /6g   マーメイド紙

なぜ人は木に親しみ・愛着を抱き、美を感じ樹形アートを創造するのか。

樹形オブジェを集めるのは楽しく、住まいの空間を演出し潤いを与えてくれます。アートマインドから樹形のオブジェが造り出されることは、遙かなる昔の樹上生活での原体験・記憶が続いているようです。近親感、安堵、くつろぎ、和む・心地良さは、寄り添う生き物の生存基盤だった由来。「木」は生き物として最も身近で「浄化・再生」の本質的な潜在イメージもあるのです。
紙を切る、折る、組上げる。大きな作品は、立つと少し複雑な印象ですが基本原理は3-4種。木をモチーフにしたグラフィックデザインや立体作品は多く、着物はもとより、扇子・提灯・玩具などにもある伝統のたたみ型の系譜です。木まで折り畳んででしまう、日本はまさしく木の国、木の文化圏。

樹形をインテリア空間に取り込むと雰囲気が変わり、演出装置になります。

作品のひとつを木と人の関わりを学ぶ「木の大学講座」で講師デスクにオブジェとして飾り、雰囲気がとても良くなることを知りました。演説や講演会・表彰セレモニーで盆栽を飾ると人物も引き寄せ立派に見え、何となく有り難い好印象を与えるものです。
手入れされ整えられた木に誰もが親しみを感じ美しさ共感するので、添えることにより良い装いができ、様になる。大木には威圧されますが、小さな盆栽はカワイイ存在感・自然さがあります。
「おりたたメール」作品は、デザインされたモダンな樹ですが、盆栽銘品に見立てると室礼になりました。寺院・城の広間に描かれる襖絵の老松、能生舞台の背景松などの絵柄は政事や演じる人間を引き立て格式ある場を醸し出すのです。因みに、樹に寄り添って人物写真を撮ると不思議にいきいきした良い感じになります。それなりに。

デザインギャラリーの活性時代

デザイン造形分野では「遊び」がテーマとして多くの作家が活動した経済成長の時代。実用機能から遊び心へとトレンドが変わり、バブルの足音が近づく少し前。おもしろアイデアが続々と出てきたデザイン産業、消費文化隆盛の時間といえるでしょう。
樹のシリーズは、1986-1988  3年間の作品を作家から購入し収集。「樹」をテーマにした 美を楽しむ、固有の造形感覚が日本文化の底流に流れているということができます。ポップアップ 飛び出す仕掛け本に比べると「静」、和風の趣が感じられるアートクラフト作品です。
この「樹のシリーズ」の他に、建物・鳥や蝶など動物もの・人型など多数あります。全てハンドメイド、「独りぽつんと作業をしていると自分の作品をおもしろいと思ってくれる人がいるんだろうか、などとフト思ってしまうのです—。」と不安な壁があったそうです。孤独な創作現場ですが、一番作品バリエーションの多い時期でした。
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「紙の遊び展 1988、あそびの造形シリーズⅡ」いわき市美術館図録  1988年3月

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「折りたたメール」グリーティング& インテリア   吉崎元造著  B5切り抜き型紙 1988 彰国社刊  ISBN 4-395-27019-0

吉崎元造  略歴 Yoshizaki Motozou

1940 長野県須坂市生まれ

1964 多摩美術大学デザイン科卒業

1964 – 1972 「芸術新潮」「美術手帳」等に作品発表、紙作品・アルミモビールのデザインを手掛ける。
1973 「素晴らしい紙の世界展1973展」出品 銀座・松屋
1974 TV・CFでACC賞・ACC美術賞
1976 「紙のオリンピック展」出品 銀座・和光ギャラリー
1977 「ズーズ展」出品 TOKYO PARCO
1979 「ノアの箱船展」出品 銀座・松屋デザインギャラリー
1981 「紙のエスプリ 12人の造形作家」企画担当、出品 原宿・パレフランス
1986 「デザイン動物園」平凡社刊 作品収録
1987   個展「吉崎元造の折りたたメール展」銀座・松屋遊びのギャラリー
大阪デザインセンター クラフト・パッケージ部門グッドデザイン商品、最優秀賞選定
1988  いわき市美術館 遊びの造形シリーズII 紙の遊び展10人の作家たち
個展・おりたたメール2 ギャラリー銀 銀座
2000  吉崎もとぞう展 折りたためる紙のオブジェたち K・PLANETギャラリー 渋谷
* Collapsible & Collaboration:「Co」には、つながり・共・合、ジョイントのクオリアがあります。「たたむめるもの」には、構造自体に「折り・つなぎ・連なる」の意味あいも含まれています。「つながり」の形象として呼び醒まされ、惹かれるものに注目したい。

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木の総合学研究2014 – 2019  ケーススタディ「木の造形デザイン」「工芸」「折り・たたみの形」「Collapsible Tree」「Collapsible Art and Design」「木と人のかかわり」

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