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シニア樹種ハンの木・カバの木科の先住原性_まだ際立つ樹性が顕れず、河畔・谷地・ニッチ(隙間)の群生賑わい|The Birch origin of HANNOKI、pioneer and pre-evolved native trees_survival fittest in swamp wetland and niche in valley.|氷河期を越えてきた古参パイオニア先駆木 木の内科−117

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

250万年以上前から地表に出現し、粗地に生えて他の植物の生育に役立ち、森林生物相を豊に成長させてきました。この先駆木の代表格は、こわばらず原性をとどめ、素朴で目立たない適応力を備えています。

特長がハッキリしない、どっち付かずの樹性は、地味で半端にみえますが、天変地異・虫菌ダメージにも耐え、したたかに潜み生き残るのです。キャリアが長い年長の本領を明らかに。

コンテンツ:

① ハンの木天然河畔林地

② ハンの木の木理・材質

③「カバの木科」日本シニア樹種と中欧ドイツ樹種の差異

④ カバの木科 遺体植物研究資料

⑤ 先駆木の自然更新変化_白樺の拡がり

⑥ハンの木 樹性・物性評価チャートダイアグラム

⑦ ハンの木の地方名

⑧カバノキ材の利用

⑨カバの木 「樺」史料

⑩ カバの木科 出現に関する研究資料

ハンの木の天然林、樹性やサンプル材で樹体内部を観ていきます。

❶ ハンの木天然河畔林地

外皮幹肌は、絞目がつき、内皮層が肥大して横割れ被り太くなります。枝元・入り節は、整えず、武骨なイメージが残ります。

❷ ハンの木の木理・材質

挽き材の材質木理、抗体の分泌派出・抗体の動きを色変で見る事が出来ます。

木理の冬目年輪はくっきり現れす、長い導管繊維束は揺らぎながら粗密になり、倒れまいとして「配筋締まり」で芯央を強靱にし、割裂しにくい材質。

芯央部は抗体が蓄積され、堅く締まり、太い導管・斜目バイヤスで補強される芯軸構造ですが、ハンの木が軽く軟質で、原生質のまま存立してきました。

縦筋から斜方に入る向心髄線Rayは、まばらで規則的な動きではなく、倒れまいと縦から斜めに傾斜して芯央へ入りこみ、折れない幹を造り、原初から少し改良された組織を観ることが出来ます。向芯髄線Rayへ進化する前の段階と考えます。

キャリアがとてつもなく長いカバ科属には、原生期以来、派生した樹種が多く、進化の拡がりも観られます。

 極めて堅く重いオノオレ、脂分が多く強靱で傾斜面・谷筋にあるミネバリ・水目、一度火がつくと消えない真樺ウダイカンバ、シデ類などの堅木がズラリ分布します。日本には、カバの木科樹種がカエデ科・ブナ科についで多く、堅木緻密良質で多様性に富み、器具・木工・建築材として高い評価があります。アサダ・ハンの木は、プロもあまり知らない良材でした。

❸「カバの木科」日本シニア樹種と中欧ドイツジュニア樹種の差異

A 日本樹種:

真樺(ウダイカンバ)・シラカンバ・ダケカンバ・ミズメ・アサダ{赤・白)・オノオレカンバ(ミネバリ)、ヤエガワカンバ、ハンの木(ヤマハンの木・カワラハンの木)
シデ(アカシデ・イヌシデ・サワシバ)・ハシバミ(マル・ツノハシバミ) 10種以上

B ドイツカバ科樹種:

Birke (白樺)、Erle (Schwarzerle 黒 ・Weißerle白)、Heinbuch (シデ一種)4種

 日本の「カバの木科」は多様性に富み、氷河期を越え、250 ~100万年以上の鮮新世・洪積期・現生期の植性です。圧倒的に樹種が多く、地層が異なります。

最後の氷河期の後、一万数千年の土壌から森林を形成したヨーロッパ中部ドイツ地方のネイティブ樹種は、3−4種で樹性・材質はよく似ており、平野部冷湿地に適応した樹性です。東アジア・北米からの樹木大移動ナチュラルヒストリーを想像します。

氷河期後の「新着樹種」に対して、二百万年以上存立してきた「シニア樹種」として評価され、森林再生に日本産樹種が果たす役割は大きくなります。

シニア樹種が圧倒的に多く、その樹性や形質も多様性に富み、DNAキャリアが原生種から続く先住先輩格なのです。年長お仲間では、砥草などの湿地性植物も古生代から残存しています。

 因みに、最近のドイツ・オーストリア林業では、檜や唐松・桐などは、生育がよく、先輩格のDNA遺伝子の耐性や環境適応力が評価されるようになりました。100万年以上のキャリアをもつ生命維持能力を持ち込み、原生種が本来の植性を復活させ、活性を取り戻すことが可能になります。

酸性降雨で森林枯死した地帯は、地質が変わり、火山灰土酸性土壌に強い日本樹種が森林環境方策の活路を見出します。既に、日本針葉樹混交林施業がTV報道されています。

❹ カバの木科_国内遺体植物研究先史資料

シラカンバ出現の時代:洪積世 170万年-1万年前、「ハシバミ・ハンの木」出現の時代:鮮新世 500-250 万年前の地層から出現しています。日本は、はるか古層の森林地帯でした。

「メタセコイヤー生ける化石植物ー」 三木 茂 著  1955年

附録1  邦産遺體植物目録 p.123 – p.131  日本鑛物趣味の会 (京都市 )発行

❺ 先駆木パイオニアの自然更新_白樺の拡がり

中信地域の開拓地跡_白樺林 70年生

 赤松・白樺は、真っ先に裸地に現れ、肥大成長後 60 – 80年で枯れて倒木更新します。敗戦後の亜高山帯の開拓地では、森林伐採後、山の傾斜面は自然林に戻りました。白樺がある塲所は、水脈があります。

白樺林は、海抜1000-1300mぐらいの亜高山帯人間が手を下した伐採跡地で更新の端緒で回復へ向かうタイミングなのです。

ハンの木・白樺は、裸地に実生でひろがり、パイオニア広葉樹の先駆木ですが、ハンの木・ハシバミ・シデが続き、さらに栗楢、楓、黄蘗、水木・桂、オニグルミへ遷移して、林床が肥沃になるとブナ・桂・山ナラシ、山桜・黄蘗の自然混交林になります。

 先駆木は、周囲の環境が整う前に荒れ地に生えて肥大成長します。後から侵入するものと生存競争はまだ起きないので、強い性質に変る必要がなく、樹性は偏らず、尖った変異がなく、おおらかな性向を固定しているとことを示します。

共生根粒菌バクテリアの窒素固定で粗地土壌を肥沃にして環境を整え、湿地河畔や谷間で存立して先達の役割を担うパイオニア植物ですが、樹木を材料・物性だけを扱い、商材利用や経済的評価で終始_人体への様々な影響や周縁の生態環境まで配慮するようになるのは、ごく最近のことです。人間の都合のよい樹種を拡大植林してきた無理な開発志向の近代林業施策は、ひどい自然災害を受けるようになりました。

❻ ハンの木 樹性・物性評価チャートダイアグラム

❼ ハンの木の地方名

あかばり あずまのき さわばん ばんのき はんぎ ばんぞー きぶし はりのき かわらはんのき ヤシャブシ やちはんのき やつくわ 他  かなり多く79 例あります。  産出地:北海道を除く各地 「日本植物方言集成」

❽ カバノキ材の利用:

染料ヤシャブシ、箱・器具・家具材、彫刻材として使われ、精製炭火薬材料、樹皮のタンニン原料となります。肥大成長がよく、板材は割れにくい。木理が不鮮明で材色は褐色プレーンなので化粧材には不向きです。

 従来、商材としては注目されず、樺よりも粗密軟質で、切削性は中庸_耐久性はほどほど、材面の光沢は少なく、有機酸酸微細で匂い艶なし。耐湿・保温性がよいので修復・保存額装に好適、音響・遮蔽性能や木香・有機酸放散が少ないフレーミング用途があります。

森林国日本では、優良材が多く潤沢だったので、建具・建材になりませんでした。材質がハッキリせず半端に見えて、あまり大事にはされません。

Erle ドイツ木材情報 Nr.16   ハンの木の工芸材利用 1985

❾ カバの木  「樺」史料

「具木名」 新撰類聚往来

 

ⓒ2024 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究2024  「先駆木パイオニア樹種の芯央無地_見えない材色変動

・抗体の動き」「原初の姿を持続し、二百万年以上も存続ひそむ樹性」「カバの木科の先駆・シニア樹種の目立たない存続力バイタル」

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