クラフトフェアジョイントシステムデザインの目工芸

クラフトフェアまつもと 屋外作品展示の仕方・見所ノウハウ 2009 -2014

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

 全国各地から、いろいろな分野のクラフト作家が参集し、限られたスペースに展示設営の仕方を工夫、準備された作品だけでなく付随する仕事ぶりを見る絶好の機会です。ギャラリー展示と異なり、作品のクオリティだけでなく、展示から撤去・引き上げまで総合的な力量が問われます。

 作品制作から出展エントリー、荷造り準備・搬入・実演展示・販売から片付け、搬出・輸送・開梱整理作業にわたる発表エネルギーは大変な労力です。屋外では、強風・雨ふり対策も必須、基本的な運営能力も身につけなければなりません。自前の展示什器類をみると、あまりお金をかけず、見栄えやローコストかつノックダウン(分解組立)、搬入・搬出作業、荷造り移動ノウハウが凝縮。視点を替えクローズアップすると、個性的なアイデアや造形センス・デティールがみえてくる特設展覧会場なのです。制作テクニックからデザイントレンド、造形的才能までトータルウオッチング。見る側も大変だけど学ぶこと多く、楽しめる貴重な機会です。(同じ所を長時間見入ると怪しまれますけれど)

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クラフト作品展示スタイルについて、プロのゲスト講評・意見から

 クラフトフェア松本に来訪した海外ゲストから「簡易テント展示では隣のものと分離仕切りがないので、作品を見るのに周りの情景が入り込み雑然としている。クラフト作品を観賞するには、展示スペースを工夫したほうが良いのでは」何度か講評・意見がありました。作品を鑑賞できるセッテイング・演出が十分ではない。おまけに参加者が多く、物が溢れ、ごちゃごちゃしている印象があるのです。プロのベテランではなく、主に新進若手のセルフステージですので高度な表現テクニックやパフォーマンスはこれから先の課題。
屋外オープンパーク会場での開催は、室内展示・販売とは全く違う環境条件です。展示販売と作品観賞の充実は同時には難しく、2日間ではゲストへの応対もままなりません。陶芸作品は芝生の上に並べ、染め織物では公園樹木の新緑をバックグランドに仕立て吊すしたりしています。また、必ずしもスペース仕切りを造らず、ナチュラル・アウトドア青空開放展示そのものを好む人も多いのです。
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 1985 – 2014  30年間の出展ディスプレイは、当初に比べると工夫され格段と進歩しました。出展する作者は作品だけでなく展示の仕方も評価・販売に大きく影響しますから小間の場所選び、展示什器も大事です。準備時間と費用負担は相当なものです。作品のカテゴリーで展示の仕方もいくつかの類型があり、ボックスと甲板、スタッキングやラダースタンド、折り畳み式、壁立て・ハンギングなど定型パターンが見えてきました。(1999 – 2014  1,320件の展示什器から)

「クラフトフェアまつもと」県の森オープンパーク展示の特長と近年の来場者の様子など

①  2日間の青空公園の短期出展・販売(実演・交流が主目的)ですので、会場へのアクセス、諸費用、時間的、天候気象条件のハードな制約があります。
② ここ数年、来訪者が非常に多くなり販売先行。接客・制作者同士の交流がしにくくなってきました。
③ 来場訪問者はクラフトに関心・知識があり目利き。見物ではなく買う気で来場。作り手直売で割安く、初日はいきなり買い始め客で大変混雑します。今年も歩くのが困難、人酔いする時間帯がありました。
④ 会場を巡り、作品鑑賞をして、めぼしい作品を品定めをしてからゆっくり購入することが難しい。どんどん売れてなくなり、展示作品全てを撮影記録、聞き取り取材することも難しくなってしいました。
⑤ プロのバイヤーやギャラリーオーナー、マスコミ関係など業務でくる専門職が初日開始直後から入り、一般の人と入り乱れ賑わっています。マーケティング担当者、プロのデザイナーなども見かけます。
⑥ 各展示テントにゲストが自由に寄り集まり、隣は目に入らず作品選びに集中し混雑もあり。趣味・美的判断・購入基準がはっきりしています。公園の中で人の流れはゆっくり、購買行動は整然としています。
⑦ クラフト造形作家を目指す学生・訓練校生徒、デザイン系大学、観光・イベント地域興し・行政関係者も多くなりました。
⑧  作品を効果的に展示するには、限られた時間とスペースに効率良く分解組立てセッテイング。コストパフォーマンスの良い展示構造物制作が必要です。
⑨  屋外展示は、搬入から荷ほどき、組立て・作品セットから終了仕舞、分解搬出まで一連の作業全体を段取りすることが欠かせません。準備時間、対費用効果など目に見えない部分にも作者のセンスや能力が現れます。もちろん既製量産器材をつかうのは作品性を損なうのでオリジナルデザインが大事。
⑩ 他のクラフトイベントに参加してきた人は、展示作業も効率良く、応対も経験豊かですのでプロに近づいていくのが判ります。個展や引き合い等のリアクションを念頭に工房案内や経歴、包装資材のほか作品アルバムなども用意してくる作家も多数、経験者の仕事を通して実務を学べる格好の機会です。
  出展者の荷物搬入、買い物の宅配サービスがあり、遠隔地からの参加も多くなりました。家具類は、大型サイズでハンドリングの負担が大きく、価格も高く購入する人が限られ、エントリーが減る傾向にありますね。(小振りで直ぐに売れるものを作りだすとスケールが縮んできます。外注加工に出したり、他の作品を模倣してはおしまいです。)
実際の会場設営から造形作品の発表展示・プレゼンテーションの場として

 繊維・衣類、紙工品、家具木工作品は陽光・雨に弱くダメージを受けますので、屋外展示には難しいハンディがあります。作品の演出効果を際立たせるには、レイアウト・スペース全体の余裕が必要ですが、作品の鑑賞を重要視した木工分野の優れた展示事例を紹介します。その場での販売より、ギャラリー個展・雑誌の取材、バイヤーとのコンタクトや評価を期待して準備する人も多いのです。これらのバックグランドや要件をクリアーしていた優れた展示事例を掲載します。次のステージにあがるクリエーターにとって、より高度の洗練されたパフォーマンスにつながるガイドポストにもなるでしょう。

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A・バックにノックダウン式の壁をつくり二方を布スクリーンでアイレベルまで下げて半透きにしたレイアウトも優れた木工作品展示小間例。直射日光と燐景を遮る軒フラップが効果的です。木工家は、道具や機材が揃っていますので、屋外現場でも手間をかけた展示構成が可能です。実演なし(木家具 河合 優 2010)木ねじやネジ型ジョイント金具を多用、バッテリー式電動工具も進歩して現場建込み作業も簡便になりました。実演なし
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B・テント二連で三方壁にパネルハンギング+ 脚立スタンドと棚板の組合わせ展示 。開放部を入れて明りとり、公園池景観を取り込み作品の観賞雰囲気を重視した設営です。作品は予約販売、客は、その場では持ち帰りしないで後送。全作品をコレクター・プロのバイヤーやキュレーター、ギャラリーオーナーに見てもらいたいという木工挽き物作家の自己紹介型プレゼンテーション展示。実演なし(OHARA WOOD WORKS 小原典子 2013)

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C.日本装飾美術学校 生徒作品展示ブース 年配も関心していた若者は基本をしっかりと(日本装飾美術学校 2010)
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D. 雨よけと仕切り壁を兼ねたタープ+フラップ、実演しながら応対が出来るワークショップスタイル。(柏木工房  柏木 圭 2009)
E.実演をしながら小物・脚物家具をセッテイング。オープン展示/雨・日よけタープ張り(日高工房  日高英夫2009)
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F.雨対策完全ブース3壁面透明塩ビシート張り。クローズすると入りにくい作品ガード店型に。実演なし( 家具工房華  多治見正勝 2011)
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G. 木の家具・くつろげる雰囲気を重視した室内モックアップ、直射日光・風雨対策、実演なし(樹の子 増山 博 2011)
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H.フリースタンド式壁展示パネル カジュアルポシェット 最小限材料構成で雨じまい対策+バックの整理されたコンテナ備品がコンパクト、実演なし。(10P10C 豊田陽子 2011)
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I. 個性的なメタルワーク小物作品は、周囲の景色を取り込まないほうが雰囲気を保てます。実演無し(アトリエ空 柴崎智香 2010)

クラフト作品オープンパークテント展示架構 推奨モデルイメージ

 作品の用途や性格、素材の違いで展示・魅せ方は違ってきます。作品発表展示と素材・道具などの物販は、次元が異なりますが、共通なのは天候条件、雨降りの対策。他の小間との雰囲気の溶け合いを抑え、スペース仕切りをすることで作品観賞度をあげることができます。今までの実例から、来場者のアイキャッチ、入り込みやすさを保持し、同時に他の小間どうしの干渉を遮断するために望ましい小間モデルのイメージを描くと、
① 通路側フロントはフルオープン。アイキャッチしやすく、湧き出てくる雰囲気があり、意欲的で情熱を感じさせる展示は顧客吸引力があります。
② 奥バック面は、パネル衝立・棚で壁面構成しメインディスプレイ。裏に関連用品、飲食サービス機材などのストックスペースに。
③ 両サイドは、下がり壁的にフラップシートをアイレベル下までさげ、強風・雨天時には地面に固定できる用意。展示台のレイアウトによりゲストの出入り動きでによりフラップ開閉調節。三壁面を完全に囲うと入りにくいので隣が透けて見える抜けられる開放部分も必要。(タープ・テント張りの上手な先達がいます。)
④ 打ち合わせ・梱包・会計・接遇に使える作業テーブル・休息用座具は滞留時間を長くできる。展示スペースから外側にサブのタープ設置などで対処。来訪者は歩き巡り立ち通しです。
⑤ クラフト造形家の自作・自前の展示ですので、既製品ではなく作風が反映したものを設置。
歴史的に見ると中世から江戸期のお店は、嘗ては「おたな」と呼ばれ棚置きで顧客に見せる(魅せる)ことから始まりました。「クラフトフェアまつもと」は、ショウルームではなくワークショップへ続く玄関です。本来の主旨は、マーケットや商売ではありませんので、発表展示・実演・交流の場として継続していきたいものです。販売は、あくまで副次的なものでしたから。
このフェアは非営利NPOボランティアで運営され、クラフトに携わる人々の出会い、展示実演・交流が主旨で30年間継続してきました。規制や干渉は最小限に参加者を尊重。販売目的、市場的なイベントや街おこしなどのプロジェクトとは別質のプラットホームがあります。参加者が皆学び、楽しめる本質的なものを大事にしてきました。
展示空間を仕切らず、オープンタイプのレイアウトでアイデアや造りが良い 小間の装備・什器については次回に掲載。

*ご注意:作品展示什器・演出器材は、制作者の作品ですのでデザイン等をそのまま使うことはできません。
* 数年前まで、展示小間を明けて用足しに出ても売り上げ金の盗難もない安全な状況でしたが、今年は展示作品が無くなる小間がいくつかあり、イベント運営の副次的な問題が出てきました。あまりにも盛況、人出が多すぎると世間なみの事件が起こります。小間番・展示方式もそれなりの配慮が必要です。
ⓒ 2014 Kurayuki, ABE

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木の総合学研究 2014 – 2019   「クラフトフェア展示小間構成」「ウッドワーク・ディスプレイ什器」「組立・架構とジョイント機構」

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