「木」と教育「木」と芸術「木」の本木と人間の関わり

「樹木」タイトルの絵本 翻訳版の改題  「木」のベストブック-7

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

注目・好感度をあげるためにタイトルを変え、読者に心地よく響く言葉に変換。日本では、木のイメージタイトルが好まれ、同じ繪本でも言語が違うとタイトル変え編集されています。

①  「大きな木のような人」から「植物園のキミコ」へ

オリジナル日本語版は、主人公「さえら」の絵描き行動を植物園で大木のように優しく見守る植物研究者をタイトルにしています。
P1000137-1

「大きな木のような人」Saera et le Botaniste

いせひでこ著   講談社    2009  ¥1,600-   ISBN 978-4-06-132392-6
280mm x 205 mmx11T  ハードカバー p.55

「Kimiko et le botaniste」

 Hideko Ise     Edition du Seuil,2009   15 Euro    ISBN 978-2-02-099918-2
276 x 200 x 8mm  Hard cover    p.58
P1000248-1
フランス語版では、 タイトルが「植物園のキミコ」に変わり、木のように静かに見守る人物(植物学研究者)は主役ではなく、絵が好きな少女キミコ(ki の音韻を織り込む)が植物園で起こすハプニングを通して感受性豊かな姿を大木が見守り、寄り添うように描写。 日本語オリジナル版では、少女は「サエラ」で登場させています。 大きな木と「キミコ」ではモチーフに溶け込み、音韻が重なるため洋風の名付けにしていると思料します。樹木を人に見立てるセンスは、世界各地の民族に見られますが、日本ではとりわけその趣向が強い。「人はみな心の中に一本の木をもっている」帯のキャッチコピーが目立ちます。
ヨーロッパ圏では「ボタニ・植物園」のタイトルが身近で好まれ、ガーデニングが日常生活の中で盛んです。また、樹木そのものに人を一体同化したり、イメージ変換はしないで別格の生命物存在として扱います。キリスト教圏では、樹木は人間が管理できる対象であり、人を木と一体化して形象するのが一般的ではないため、人物キャラクターをサイドに出し、少し複雑なストリー展開になっています。「大きな木のような人」では人格や個性が際立たず、漠然としているからでしょう。日本では、植物園というイメージは、鑑賞やリフレッシュ・楽しみ目的より、観察勉強する場所に近いのです。水彩作画が秀逸で、作者は樹木とのかかわりをきめ細かく感動的にとらえています。

② 子供の「庭」から、少年の「木」にタイトル替え

P1000130-1

戦争で爆撃を受け破壊された町の中に軍隊地の鉄条網が張られる。廃墟に葡萄の木が芽を出し、少年は水やりを続け成長して遊び場になりますが、兵士に引き抜き抜かれてしまう。冬を越え、春に芽吹き、葡萄の木が伸び続けて手錠網を覆い隠すようになり、平和の希望をいだく場所に。葡萄の木の生命力・再生を希望の木として描いています。
命の再生、成長、癒やし・平和希求・復活を葡萄の木に託して寄り添うことの大切さを訴えています。歴史上、葡萄は「生命の木」でした。和訳では、少年が主役で葡萄の木の再生ストーリー展開になっています。題名を「庭」より「木」のほうが強いシンボリックな存在イメージを打ち出せるという編集意図が読み取れます。いずれの作品も日本語タイトルに「木」を据えて読者・図書館スタッフへ注目・好感度をあげていますね。

P1000238-1

・A Child’s Garden: A Story of Hope

Michael Foreman, Author, Michael Foreman,
Illustrator Candlewick  Walker Books Ltd. London 2009 $17.99 (32p)
Hard cover 237x 257x 8.5mm ISBN 978-0-7636-4271-6

「少年の木」マイケル・フォアマン 作・絵 柳田邦男 訳
P. 32 日本語版 岩崎書店  2009/09/10 ¥1,400-
ISBN 978-4-265-06818-0
ハードカバー 260 × 240 x 8.5 mm

樹木と人々のかかわり:絵本に描かれる子供と樹木の姿を未来視点から

樹木と人のかかわりを描いた絵本作品は、現在までの収集は500点ほど。民族や国により好まれるストーリー、描かれる樹種にも傾向があります。

日本人の絵本作家が樹木をテーマに創作すると、「木が語る」「木が見つめている」「心の中に根をはる」「木の記憶」「木の思い」など樹木が人と同じように生命時間を過ごすようにとらえている表現が多くなります。この本に登場する植物学研究者は「世界中の木と人々の関係を研究してきた」と書かれてお仲間入りです。研究分野としての総合的なカテゴリーが示唆されています。私は、1985年から「木と人間の関わりを総合的な研究」を実学として活動を続けてきました。その進展は樹木の成長のようにゆっくりですが、展望が開けるところまで来た節目にいます。有限地下資源を使いはたすのがみえている現在、環境・資源を維持し再生循環系エネルギー・エコ素材として木材への回帰シフトが起きています。「経済成長」では、ゴミ環境汚染・資源消費などの副作用・マイナス負荷がなく、厳密な意味で樹木の生長・増殖そのものが発展として計上される「木」への新たな視点・再生循環系の未来志向で参ります。未来の文字には「木」が軸になっているのですから。

 

ⓒ 2014 Kurayuki, ABE
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「木」の総合学研究2014  「木と人のかかわり」「木」の絵本とタイトル Japan – Culture of Wood, Book Naming with Tree   

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