「木」と建築「木」と遊びキコリ杣仕事クラフトフェアジョイントシステムデザインの目伝統文化工芸林業・森林の仕事

デザイン・アート化の偏り、遊びの造形軸からシフトしていく先にあるもの

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

ポストデザイン・アートクラフトは、作家的職人による実作、現場仕事の技能を活かしプレゼンする試みから派生する気配がしてきました。街中で姿が見えなくなった職人のエスプリを表舞台に上げ、プロの練達習熟した技量・制作パワーを呼び寄せたい。

この秋、松本市内で伝統専門職が公園広場や中心街大通りに出展参加するハイライトステージに出会いました。伺えば、「自分達もプロの仕事を見せたい、参加して楽しもう」という意欲溢れる積極的アプローチです。

その① 左官職と大工職が「クラフトピクニック」に参加。実際の架構モデルを展示、道具や材料を準備し体験プログラムを手がける。

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*左官技能を活かしたロケットコンロ作品:軽鉄芯カット煙突部ボディ土壁下地、大理石粉中塗り、仕上げ漆喰塗り体験用モデル(スタイルはユニーク、着火強火上がりに課題あり)コテ塗り体験はハイレベルな手作業で材料準備も准専門課程でした。造形科生徒向。130W x 200D x 298H 煙道42 x 65  7kg
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 第13回クラフトピクニック 松本市あがたの森公園芝生広場:20141018 -19 観る機会がない左官仕事と木組み大工による建築実作、塗り壁木舞、仮組実演が注目されました。刻み部材を枘組ジョイントしていくと建物になる、分解移動出来る架構モデルが新鮮で目を見張りました。会場で壁塗り実技見学・指導希望者あり、自分で塗り壁工事をする人も多くなりました。鏝絵造形、細工物は現場に造られるので工芸品として流通販売されることがなかったのですが、左官クラフツはこれから生まれる「面白い分野」です。

「還る家」プレゼンテーション 工藝の五月 5月1日~6日 松本市美術館 そらまめギャラリー 

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類小稚拙・デザイン偏りでなく、手仕事の可能性・伝承技能のベースを次世代へつなげるパワー工藝職人を推挙しましたが、クラフトフェアー2015審査員は選外に。あれ。
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市美術館での展示・実演壁衝立は、木組み・ノックダウン構造のスタンドWallユニットがオフイス・商業業態のパーテイション・収納ディスプレイ、遊具や家具・什器に拡張できる可能性を秘めています。文化財の修復だけでなく、化学物質に溢れた空間を身近な自然素材で回復する大事な手仕事に注目していただきたいですね。クラフトの根幹・伝統に息づくものを再考して行きたい。

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手間を惜しまず、時空を超えて伝わる5代目の職人技を記録しました。 協力:木組み大工・下本晴夫   20150506AQ

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北安曇郡松川村 原屋敷の 蔵門鏝絵 「松に鶴」 三代 勝人作 松は乾燥地に鶴は湿地に住んでいますが、人・富みが集まる目出度い縁起物の図象。枝振りは大胆な額装の構図です。松は松川村のシンボル。19860324 ABE

・まつだ左官 松田孝司 松本市梓川梓2921   TEL/FAX: 0263-78-2471  http://www.kabenuri.jp/

・しももと建築 下本晴夫 松本市和田385ー2 TEL/FAX:0263-50-5175 http://simomoto.goemonburo.com/

生活と結びついたプロ技能をみせるステージを

 昭和時代、畳屋さんが道路端で表替えをしていた町の生活密着型仕事場は、自動車と道路交通法規に駆逐されてしまい、職人衆の仕事は、シートで隠し現場を見せない遮断時代になりました。いつの間にか普段の生活から離れ、見えない・魅せない効率優先の管理システムに組み込まれてしまいました。
職人のパワー・プロのセンスと所作、練達、習熟した技能は、新鮮な意外性を感じさせ、新しいモノつくりの領域を拡げる可能性が大きいのです。少し前から、連続TV番組でいろいろな職業のプロフェショナルをスコープ、各界偉人の優れた仕事を紹介しています。高度な手仕事へ視線が熱くなってきていますから、自然な動きとして居職も出職も表に現れるようになりそう。下職・下請けから表通りの制作者として顔見せを期待します。

今回の大工・左官・木樵、いずれも普段は見物する機会は無いのですが、大いに興味を引く魅せる仕事ぶりです。隠された現場から表のオープンステージ、クラフトフェアへ登場するタイミングが来たように感じました。
 先読みすれば、次世代のために、どんどん街の真ん中に出てきて確かな本物の仕事ぶりを見せ、見事な技を演じ感動するプレゼンをしていただきたい。時には、素材と加工技能の基幹に立ち戻ることも重要です。まだ登場していない職方が現れれば、スケールアップした屋外現場仕事の迫力を取りこむことができます。クラフトのイメージやカテゴリーも拡がり、更に容力アップして活気づくでしょう。

Crafts Initiative  本来、モノつくりの流行は職人が創り出す

 クラフトフェアスタート当時は、自立した若い工人達が作品を作り出し発表する機会を楽しみました。固まっていた古いものからの脱皮をはかり、遊び心、モダンデザイン、アートを重要視するにつれ、目先えを変える消費アクセルをひたすら踏みつづけてきました。
現在では、目先を変え欲望を作りだし刺激する、見栄えのよい・格好いいデザインモノが溢れています。流通産業がマーケットをコントロールし、製品のライフタイムも人為的に短くされ、モデルチェンジ操作が目まぐるしい。本質的で洗練された独創的な作品が主流になるには、自然のリズムや基本的な仕事に立ち戻り、シフトチェンジする時期にさしかかりました。
制作者が判るようなオリジナル作品は歴史に刻まれ引き継がれます。江戸時代、工芸の流行や様式は職人が作り出したのですから。
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木の総合学研究 2014 – 2019 「クラフト系職人手仕事のニューステージ」「木の職人技能、実作プレゼンテーション」

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