「木」の文化「木」の道具・工具工芸木工

江戸臼杵作り・堅木木工四代 150年の手仕事 白樫・欅の生活文化財

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

東京浅草下町の生活・祭りを支えた白樫・欅の道具は、洋風化や宅地化が進み、良材枯渇・材料高騰でゆらぐ。更に機械加工粗雑品・海外製造輸入品が追い打ち、貴重な町の手仕事がひっそり絶える。再生循環自然素材の再評価と次世代のために江戸エコ道具のねつい直系本流を伝えたい。

青木木工四代150年の手仕事

 十数年前から、時々仕事場を尋ね、作品を購入しながら伝承技能について伺っていたのですが、3年前に亡くなり廃業。関東地方の欅や樫材の性質、割れない自然乾燥のコツ、臼堀りの種類・ノウハウなどを詳しく収録出来ないままになりました。
青木利雄さんは、腕が良く繊細で使い易い、丁寧かつ木目の美しい柔らかみのある仕上げをモットーにして制作。私が出会った頃は、既に大木の良材は枯渇し入手が難しい状況でした。米屋さんの電動精米機移行後、更に一般家庭用臼・杵の注文が減り、学校関係や地元祭礼用のものに切り替え販売。後継者はなく、技能の伝承は出来ませんでしたが、主な作品は残せましたので展示掲載していきます。細部の面取りなどに注目しました。実作の手触りやバランス・使い勝手が一番の教材ですが。(1998 – 2010 )
制作品目:精米用及び餅搗き用臼、白樫の杵をはじめ、コノキリ・掛矢・木槌、拍子木、太鼓撥、ハトメ台、打ち抜き台、裁ち板、張り板 等
 

*台東区指定文化財
臼杵・欅台・木槌・あて木・定規・拍子木・太鼓のばち・樫欅加工
杵 白樫・欅材  浅草の搗杵は、なぜ丸柄なのか
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 昭和20年代頃までは米屋の使用する精米用臼・杵の注文がほとんどで、米屋の杵は消耗が激しく修理・柄の取り替えを即応出来る様に丸柄にしていた。丸柄は握りにくく、振り上げ下ろしにコツがいるが、他の地方のように削り出しの角柄だと据え替えも手間取るためスピード交換修理の形に。
受注は、使い手の年齢層、職業を聞き使い易い形を心がけて制作。精米用の臼は、蜜柑堀、卵堀。餅搗き用は、皿堀、丼堀 用途で形が変わる。
子供用杵も同じ丸柄で、長さはほぼ同寸に近い。これは、幼稚園・学校などで大人が手助けする添え手を考慮したもの。
杵は、四寸から少しずつサイズが小さくなり、3.8 寸 2.5寸刻み。(臼・杵は台東区指定生活文化財1998年。)
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先端の木口割れ防ぐため和紙糊張り
・No.38  杵 (浅草型) 白樫材 生地地仕上げ 頭110 x116 mm , 丸柄 白樫  36 x 675 mm  4.25kg   ¥ 12,000-   (20091125)
・No.25 小杵  欅材  生地仕上げ 頭 71.5 x 6380 mm , 丸柄  白樫 25x671mm   1.25 – 1.4kg   ¥ 8,200-

 コノキリ

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縄締め用(宮師・鳶職)御輿 山車・小屋組などの縄締め、継ぎ手栓・くい打ちにつかう。ロープを柄にからめ、面取り胴を支点に梃子の原理で引き締める木槌兼締め具。縄目・ロープを打ち整える。握り柄は手にフィットする丁寧な仕上げ。使い方により柄の先端を切り整えます。打ちアテ角面は傷をつけないRをつけています。白樫追柾材 角面取り頭部:97x69  x 180 mm      柄 31 x 35 x 480Lmm     1.5kg      ¥5,000-

木 槌

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・No.28 角面取り木槌 白樫柾材  頭部 84x5寸 柄白樫 22x28x258 L mm  1kg  ¥3,000-   木口割れ止め和紙張り
・木槌 2寸 丸 白樫追柾材 轆轤頭 60 x 150   柄 28 x 12 mm  450g  ¥1,500-  頭のバランスが良く、握り柄が丁寧な面取で握り易く疲れない。

 ハトメ打ち丸台

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白樫材追柾 40 x 120 x 150 H mm     口金 鉄輪12x44   機械部品ワッシャ削り転用
打ち割れない材質は大径木から追柾目で木取。近所の帽子製造職用。この他、型打ち抜き台は、樫柾目取りでないと割れます。 丸・角 サイズ違いあり。

掛矢

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・4寸 白樫材轆轤  鳶職・大工用(木組み建築・くい打) 頭 120 x 225  柄 33 x 29 x 740 L  2.9kg    ¥4,500-

拍子木・No.23  太鼓撥

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白樫材二方柾 325 x 40 x 425 L mm     500g  背:蒲鉾形面取り  紐穴: 6mm
白樫材丸棒 24 x 400L mm   150g    打面:丸面取り

打ち台

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欅玉切り材( 赤・目詰 60yrs.) 290 x 180H mm   ¥3,000-
芯・白太割れを起こさない適度の温度・湿度をあたえつつ自然乾燥2-3年、樹皮着き。(画像は、長期保存で樹皮痩せ、虫入り)
臼・杵用白樫材の仕入れは、毎年11月〜12月に伐採されたも丸太を購入。臼は、1尺五寸で玉切り。杵は四つ割りで井桁積みにし、2-3年自然乾燥。
*全品未使用ですが経時変化あります。再現できるように実作モデルを収蔵保管。(道具・工程作業等は別記)
材料:臼は、欅150年以上。杵は、白樫60 -80年上のものを使う。主に浦和 – 鳩ヶ谷方面の産出材が良質。茨城など風が強い地方では捩(よれ)が入り、逆目がたち割れやすい。打つと割れるので材質の選別は特に慎重に視る。打ち台は追柾、ぶち当・打ち抜きには柾目使い。白樫材は、他の広葉樹とは異なり「柾目が板目になり、柾が板目」。江戸型の臼は、地面に置く長胴型ではなく移動や収納に便利な台置き型で丈が短い。 復興経済成長期にも農山地には植樹されなかったので、良質材は見つからず入手に苦労したが、同時に需要も減り仕事が無くなる。材料をストックし、即時に修理できる所が近くにないと急ぎ仕事が間に合いませんでした。最近は木材市場で太い白樫材をめったに見かけません。

 青木利雄(1930 – 2011) 略歴

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 1930年(昭和5 年)栄久町(現在台東区寿一町目付近)生まれ 昭和20年敗戦後、浅草橋鳥越神社前へ移転。江戸末期から三代続いた臼・杵作り技能を修得し、家業を昭和21年継承。品物は合羽橋道具街・築地方面へ納入、仕事が多く最盛期には年間に40個も制作。傑出した腕前は定評があり、注文制作が長年続き、地元浅草の伝統木工職人として活躍。
昭和43年、四代目を継承するも時代の流れで、次第に一般家庭用臼・杵の需要が減り、公共イベント・学校教育用に変わる。木槌・コノキリ・掛矢・打ち台など白樫・欅材を活かしたプロの仕事道具を制作。江戸の消防具「龍土水」を復元制作し、消防庁・台東区役所へ寄贈展示されている。

樫について

 字のごとく堅い粘りのある材質。強靱な耐久性で道具・機具に多用されてきた優良材です。関東平野で多く植栽され、現在でも関東地方の産出地さいたま市に樫・欅専門木材製材会社があります。浦和・大宮近辺の民家周りの樹が良質。常緑で屋敷暴風樹林に植樹されていましたが首都圏の住宅地化で伐採されてほとんど無くなりました。(日本固有樹種ブナ科、他に赤樫・青樫(ツクバネ樫)・イチイ樫(アラメ)・ウラジロ樫・ウバメ樫(馬目)等、欧米のOAKは別種で「樫」と訳すのは間違い。)
「樫」字のように堅く重い材ですが、用途が広く、江戸・明治期には木偏に諸の「櫧」国字が使われました。
最も優れた国産有用材の一つですが、身近なクラフトや放射線・電磁波遮断などまだ未知の高度利用の可能性があります。
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製材後、自然乾燥三年ほどで木喰い虫ガ入りますが材料管理の仕方で防ぐことができます。芯材赤身のない木ですが、高樹齢になるとタンニンが牡丹と呼ばれる模様で入ります。特に冬期11-12月の新月伐採ものが最上の材質です。
日本の自然素材 ベストマテリアル「白樫」の特徴
① 白く清潔感があり無臭、衛生的です。十分な乾燥と入念な表面仕上げにすると黴・汚れがつきにくい(タンニンを多く含む)
③ 優れた木目、木肌が美しい。 緻密で年輪が目立たず、均一でクリーン、心地よい材質感がある
④ 最高の耐久強度 堅く重いだけでなく、滑らかで粘りがあり丈夫なものができる
② 洗浄・油拭き・塗装など用具・道具のメンテナンス性に優れる
⑤ 無害で食べても安全。食品加工・健康器具・遊具・スポーツ用具に使われます。
④ 手触りが良い。手になじみ、握り・つかみやすい。凍結せず、体温が奪われない(温湿度保持)
⑥ 強度・靱性が高く、道具材に最適。鉋台・握り柄など刃物を銜えると締め付けてしっかり固める
⑤ 適度な衝撃と反発復元力がすぐれ、杵搗き・打ち台・紙打ち・砧・織物機・杼(ひ)等に利用されていました 。ほど良い熱伝導性、衝撃緩衝、絶縁性能があります
⑥ 音響性能がよく楽器や玩具・型物工芸に使われます
⑦ 薪・炭は、熱量がハイカロリーでストーブが真っ赤になるほど(高温で鍛造・焼入れ)
⑩ 木灰は、染色・陶芸材料になり土壌改良や肥料・あく抜きに
⑧ エコマテリアル 循環再生可能な素材、人間が増やせる唯一の身近な自然資源です。
  樫は堅く粘りがあり、丈夫なので用途が広く、器具材、建築・建具、車両・山車、武具・運動具、古くは櫓櫂などに使われてきました。衝撃を吸収するので打ち叩くもの、握り柄に最適な天然素材です。また、樹勢が強く常緑広葉樹樹ですので、里山にあると環境・景観保持にもつながります。素材の魅力や固有の物性を総合評価すると世界のベストウッドに入る有用樹木」です。
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木の総合学2014 – 2019 「樫の木と日本の生活文化財」「江戸の伝承工芸 堅木木工 白樫・欅」

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