「木釘・糊押し 練り物」一子相伝・口伝では説明しきれない錐・材質に合わせた詳細仕様を 13代國政の直伝から
打ち木
打木の種類(のり釘)錐の太さに合わせる事 「角(つの)釘などもあり」
・足釘 あしくぎ 長さ二寸五分〜三寸 箪笥・大箱等に糊付けして接合用とす。
・堅木ほど角(カド)を少なくする(丸み)
・茶渋をまぶした糊釘はカビがつがない
・相中 あいちゅう 長さ一寸五分〜二寸 同、木箱。中位の箱等(糊釘)
・小釘 こくぎ 長さ八分〜一寸二分 軸箱、小箱等に用いる(糊釘)
堅木・乾木
打木は必ずしも全部打ち込むものではない。点線のあたり鋸にて挽ききる
又 全部打ち込む場合もある。
① 赤線の個所、鍋にて炒る時は先端がこげ、もろくなっている
先を歯でかみ、折って用いる。
② 釘の頭の圖は、正丸ではなく、八角程、九角程等。
③ 角(カド)の有る方が打込める。(木釘角面とりで穴木部に食い込む。接合材の組織が堅いと木釘自身が締め細るので割れにくい)
④ 木釘は、材質をみて造る事(切出しで削り仕上げ)
・打木は、錐穴に合わせないと板が割れる。特に栗材は注意を要する。
・昔、ウツギ削りと糊押し(続飯作り)は、小僧の仕事であった。
・大正13 -14年「相中」の価格 一升 =35 – 50銭
・木釘は「ウツギ(卯木)」が最も適しているが適さない樹もある。冬期水上げしていない枝下を伐り室内乾燥。空木は樹芯が空洞の灌木。
太釘:壺錐で穴あけし、四方錐で下穴をほり釘打ち後に桑・黒柿を削り仕丸めた飾釘仕上げとする。動物の骨角を使う「角釘」も同様。19790214
*木釘事例 「 毎日グラフ」連載記事「道具曼荼羅 No.158 卯の花の木釘」文.村松貞次郎、写真.岡本茂男
昭和57年1982 書籍化「続々道具曼荼羅」 PP.63 / P.65 毎日新聞社
「手作りの錐」についいては、「続・道具曼陀羅」p.50 – p.53 , 昭和53年 1978 に錐鍛冶の工房・作品記録がある。
糊おし (續飯 ツキイイ そくい)
飯粒を練って木材の接着につかう米糊。指物では、木釘や枘組みに使う。練ることを「押す」糊押しという。炊き上がりの米飯、良質米は粘りが強すぎて接合強度が弱くなる。(良質でない、焚き立てでない普通の飯が一番)良く押して(練りツブシ)粒の無いように布濾し。ネバリ強からず、濃す過ぎず、水で序々に薄めて用いる。糊押しは、15度ほど先端部を四面殺ぎにした糊押し棒と押板を使う。
糊押しは組立て作業寸前に準備し、日置しない。尖った押し棒の動きは、突いているように見えるので「つきいい」と書物に印したことから難解な用語になりました。現在のような品種改良された上米では、糊が効かない。
伝統技法は、膠同様に原材料がなくなり修復にも再現が難しい時代です。組手を形だけ真似ても、品物には成らない。飯米から育てないと植物性接着剤も手に入りません。改良された美味しい米飯は、使えないのです。
ウツギを糠まぶしで炒り、飯粒を練り糊にして接着するという日本独自の技法は米の文化の一面です。さらに、茶しぶをからませ黴どめするのも、成熟したナチュラルライフ・生活の智恵でした。
「打木とウツギ(卯木・空木)」の音韻も繫がっています。横浜家具のベテラン職人は、「続飯」を「兄弟子」と呼んでいたそうです。糊押しは、徒弟が最初のマスターする仕事でした。読めない「続飯」は、難読文字で職人が使うコトバではありません。
接着を「練り物」というコトバの由来
親方筋をひく木工職は、現在でも接着することを「練る」と言います。古代から米飯を練りつぶし、接合に使いましたので接着された加工物を「練り物」表現してきました。合成化学接着剤の酢酸ビニールエマルジョン型接着剤「ボンド」(小西儀助商店販売)は、白濁した水溶性でしたから、家具・建具職には、保存がきく便利な画期的な商品で瞬く間に普及したのです。 20200808
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木の総合学研究 2015 – 2019 -2020 「打木・木釘 指物用接合」」「木釘の種類、接合と続飯」「和家具の木釘ジョイント工法」「糊押し・練り物」
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