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山桜(赤)深山桜(青)の伐採創痍・パニック反応、芯央部からのセルフキュア Insight 木の内科 -10
阿部蔵之|木とジョイントの専門家
バッサリ切られるとダメージを感知、樹体内治癒指令で芯央から色素部質が衝撃的に吹き出し、続いて年輪秋材層から拡散。中枢発動部は芯央にあり、ショック状態は組織全体に緊急変化をおこし、樹芯部はERのようです。
伐採・損傷でダメージを感知すると全身で緊急ケアー活動が起き、樹芯年輪層から蓄積色素が湧出。ショック時は突出線状に走り、次第に年輪層からの波状に浸透析出が続きます。芯材部は、活動停止した死んだ組織ではなく、鋭敏な自己治癒、代謝を起こす生きている組織なのです。
創痍パニック状態の初期反応から、ダイナミックに変応していく半年間のリアルな経時変化を追う静かな悶絶臨死木録。分泌される芯材赤身は、損傷部分をガードする治癒物質のようです。いずれも芯材部が退色。木目美しさは落ち、材質は低下しました。
山桜(赤 )30yrs. 樹芯央部変化
伐採40日後の玉切り木口芯央部の変化 19981109 – 1214 ABE
所見 樹芯部赤身からの色素移動、年輪・二次師部を抜け白太辺材へ浸透拡大。樹皮下形成層も組織に乱変色が起きています。
芯材部の材色は薄まり、ぼやけた淡色化輪層に。芯央部の年輪間中央には、赤色班が周縁に散在し残存、発色。芯から髄線・放射方向にもわずかですが変色を診る事ができます。水を上げない冬期の新月伐採が、芯部を動かさずベストですが、春材・夏材に大きく、秋冬にも動く。この山桜では活動期ではない 11月、12月の伐採ケースです。
カット5年後、色素拡散移動静止 芯材部赤身周縁に移動・凝集し、材色は淡褐色混濁。
深山桜(青) 27 yrs.の樹芯央部変化・セルフキュアーバイタルサイン
段階的伐採による芯材部変化 20121231枝切り、20130106-16 伐採、20130202-20130428 玉切り ABE
セルフキュア拡大浸透停止終末 自然乾燥2年
「伐る」と「Kill」の間に、
「木を伐る」「切る」というけれど、「木を殺す」とは言わず、杣・樵は「木の殺し屋」とは言いません。「魚を釣る」「鳥を穫る」「獣を狩る」は、殺して喰うのですが、食べるためには、傷み苦しみは感じない。むしろ、獲得した快感はあっても苦痛・罪悪観はありません。ハンティングは、レジャースポーツになります。食べるもの、使う材料自体に「生き物の命をいただく」意識はとても薄く、切り刻み、焼くことは、造る楽しみや火を燃やす、味わう歓びにかわります。
樹木があることは、生き物全ての安全な塲所でしたが、自然の命を豊穣な恵みとして都合良く解釈、資源としてタダで勝手に独占利用してきました。
「伐倒」も現在の機械化ハーベスタでは、草刈り程度の感覚で伐ります。人が生存するために最小限の生き物を「キル・トル」ことは許されますが、商材にするのは逸脱です。この地表では、際限のない殺戮、損壊が終焉する気配もありません。
段階的に枝おろし「なぶり切り」すると治癒反応が即座に表れ、創痍・傷辺へ年輪層を貫通、波状に拡散して動いていることがわかります。神経のない樹木の細胞組織が、傷を抑えるために向かう姿と診える。分泌を断面から立体視できれば、多くの事が明らかになります。
次第に樹木から離れてきている人間の原始感覚
数万年もの長い時間、身近に生えていて動かず、逃げない資源材料として自由に利用し、食材、医薬、資材・燃料、時には、装飾・観賞物、資財とさえ見なしてきました。樹木が傷み痛むことは、知らず感じない。空気や水のように、日常的には特別意識しない無感覚性が人間の本性です。
遠く大古から寄り添い、生存の糧だった樹木に対する観方もすっかり変わりました。依存してお世話になる、命をいただき使うという敬虔な思いや感性は、ほぼ失い、消えつつあります。
樹木内科の深奥部に入りミクロの生体反応を知ると、いままでの樹木の知見・歓方も違ってきます。樹芯部は生きている高度な生理機能を司る部位ということがわかりました。内視ミクロスコープが開発実用化されると、切り倒さないでも細胞間溝の色素物質移動、樹命が見えるようになります。
「樹木界の統御・治癒システム」が明らかになり、「木の世界」を感じることができる日は、そう遠い先ではありません。人体のPET画像診断のように、樹体にも応用したいものです。
*挽き材、自然乾燥, 木理、物性は後日、追補します。
ⓒ 2015 , Kurayuki, ABE
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木の総合学研究 2015 – 2019 「山桜 – 木の内科」「木歴・木録」
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