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小柿の伐採木口反応・芯央黒柿からのセルフキュア_黒柿タンニン成分の生成・分泌 木の内科 -11
阿部蔵之|木とジョイントの専門家
樹体の損傷修復・治癒反応は、活動をはじめる春先に激しい動きを起こし、芯央部からだけでなく樹皮下層も連動してタンニン放出をみせる。小柿渋柿は、材色変化、黴つき、反り捩れ、クラックを生じ、タンニン成分が溢れ、抗菌・ダメージ抵抗力が有り、生命力高くも材質暴れに難あり。
柿は、生木内部が空気に触れると見る間に材色が変化し、タンニン(クロ柿)の組織移動で芯材部周縁は変形します。この散孔材の年輪は鮮明ではなく、黒い周縁層から分泌した色素は、樹皮に向かって放出され薄墨カラーに。樹皮下層から芯材部は激しい損傷治癒反応をおこします。損傷ダメージをうけ、割れ穴・クラックから浸水した芯部をガードするためタンニンが周囲に凝集して黒柿層を形成。芯材部だけで無く、辺材部・枝までタンニンが吹き出ていきます。白太辺材部木端に吹きだした白班はやがて褐色に。黒柿杢目を創り出すために、打撲外傷を付ける木地師もいました。民家近くの産出で樹皮が綺麗に整っています。渋柿は、一時的ですが材色も黄色味が強く、色変化もはっきりでます。
二つ割りカット芯材部の材色:コントラストが美しく、良サンプル材に見えたつかの間。
20110325 伐採、20110326 木口カット、20110402 製材、割れ止めMT 20120803
ブロック自然乾燥:内部でセルフキュア反応でタンニン層から色素移動変色が続く。
木口割れ止め剤塗布後、内部ではタンニン色素の急速な拡がり移動が続いた。20110428
製材後、木端白太辺材部にタンニン成分が表面に浮き出て白い斑点を表出。タモ(ピンク)・青樫・白樫材に似る。20110408
芯部の黒柿杢が活かせれば利用価値もありますが、春先伐採では、白太は暴れて変色激しく、手に負えません。 小柿(里木)87yrs. 元口径 : 450mm x 末口300mm x 枝下3m 造園職伐採
木口・板目に黴、木喰い虫入りが速い。 タンニンが強くても増殖(喰)。20110625MT
黒柿芯材:芯クラックに集まるガードタンニン層が描く杢目、擬芯や芯材部年輪ではない。 20121220
里柿は、一時期アメリカパーシモンに替わり、ゴルフヘッドメーカー用材に狙われ、各地山里の大木・古木が多量に材木業者に伐られた時期がありました。柿渋、柿の実は、古代からの自然の恵みでした。果実を食べ生き存え、防水・抗菌塗料や清酒蛋白降り下げ、蜂蛇毒の中和剤、渋和紙、工芸用途など、多様な自然のタンニン有用材料だった里山の柿樹はドンドン姿を消してます。果樹のみならず、花芽・葉・枝・実・材・薪・灰までつかいこなしてきた有用樹の代表。柿の木のある暮らしは長く持続してきました。柿は、景観・木陰をつくり、遊び、身近で無害、循環・再生・持続できるスーパーパートナー樹です。
黒柿の生成・分泌_根系も蓄積


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木の総合学研究 2015 – 2019 「小柿の伐採・製材・MT」「柿木の内科」「黒柿の生成_分泌_蓄積」「木歴・木録」
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