「木」とともに生きる「木」と芸術「木」の文化「木」の本「樹木イメージ・図象」木と人間の関わり木の総合学

「樹」総合文化誌 木のベストブック−12

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

なぜ「樹」なのか – – –  それは、石や、水や、大気や、鳥やけものや、そして人間の、殆どすべてと関わりをもっている生物であるから。「樹」を描く画家の特集、「樹」を視点とする文明批評、「樹」の詩や随想、評論、民話など、豪華多彩な執筆者による「樹」をテーマにした変奏曲、または20世紀末に生きる知性と感性の証言集 。木が嫌いな人など居るはずがない、誰にも樹に何らかの思い入れが- – – – (総目次・あとがきより)

 私が「木」の総合学へのアプローチを始めて、実際例や現物資料の調査集収に奔走していた頃「木と人の関わり展・1985 」の展示準備中に樹をテーマにした本をつくる一人の出版人に出会いました。書房「樹」の小高達雄は、グラフィックデザイン・編集業務から木やクラフト分野へ軸足をシフトして数年、絵画・クラフト作品を選出した「樹」展の企画展示をしたり、多くの芸術家・文化人との直接コンタクトを行い、小規模出版を始業。美術と文学を結びつけ「樹」というテーマでの先行ワークは、装本も輝いていました。

季刊 総合文化誌「樹」第一巻 ~ 第六巻  総目次

105 W x 203 H x 10T mm   ペーパーバック   限定2,000部 @ 2,500 –   発行:書房「樹」編集・発行人 小高達雄
 木と絵画・芸術家、樹木の詩歌、エッセイ・評論、樹の書字、民話、風土記、街路樹、木の話・材料学、心象・精神論、リブロにいたる多様な目次内容で樹木との関わりを主要編集テーマにした季刊総合専門書冊。
装丁は特装高級紙を使い、折り込みのカラー絵図版を綴じ、特に書字のページは別刷り紙質(楮生漉き・鳥の子紙など)に変え、オフセット活版・コロタイプ印刷後貼りこみ。コストを惜しみなく、篠田桃紅自書作品編纂を意図していました。編集から販売まで、何から何まで業界慣習を外れて、望ましい、あるべく姿で品格の高い内容で読者直接頒布という破格の仕事に踏み出し、営利を目的にしない刊行となりました。寄稿・著者は一流のインテリジェンス、高度な編集デザイン内容、紙質、写植・印刷技術、手加工製本など現在のデジタル化された印刷事情では、もう実現できないものです。
1. 創刊号 1979・春   p.74
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・扉 書と詩 草野心平
特集 駒井哲朗」の「樹」 図版 エッチング・デッサン20点
・駒井哲朗」と「樹」 粟津則雄
・詩 樹木  安東次男
・詩 樹霊賦  大岡 信
・詩 ふたたび訪れる春に  中村 稔
・同級生「駒井哲朗の話」  野見山暁治
・駒井と「樹」のこと  駒井美子
樹の随想、詩、評論など
・「樹」についての断層  串田孫一
・木扁いろいろ 1「桜」 篠田桃江
・連載詩  1 – 未明    宗 左近
・樹よ、おまえは  田中清光
・木の話 1 木はいきもの 小原二郎
・杢目の魅力  丘 一樹
・「樹」の民話集 「やよいどっこいせ」  採話・辺見じゅん 絵・村上 豊
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第2号  1979 ・夏     p.84

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特集 野見山暁治の「樹」 図版 油彩・デッサン12 点
・詩・風景  三好豊一朗
・野見山暁治と「樹」
・画家と孤木  宇佐見英治
・灰色の群れ  小川国夫
・まるでちがう  田中小実昌
・「樹」と私 野見山暁治
「樹」の随想、詩、評論など
・樹についての断想  串田孫一
・「樹」の古字
・木扁いろいろ 2 「槐」  篠田桃紅
・連載詩 2 – 暁   宗 左近
・隣の欅  堀 多恵子
・いい「樹」のある風景  吉増剛造
・木の話 2 木の性質 小原二郎
・巨樹 – われらにとっての意味  牧野和春
・ダモの木  小野忠弘
・「樹」の民話集 2 「十六人谷」 文・辺見じゅん 絵・村上 豊
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第3号  1979 ・秋    p.84

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特集 田淵安一の「樹」 図版 油彩・デッサン14点
・詩・熾天使  山本太郎
・「樹」に学ぶ  柳 宗玄
・田淵安一の「樹」  粟津則雄
・拾いものをした絵描き  アレシンスキイ
・パリの田淵安一さん  朝吹登水子
・とおい樹影  田淵安一
「樹」をめぐって
・樹についての断想  串田孫一
・「樹」の古筆
・木扁いろいろ 3「槐」  篠田桃紅
・連載詩 3 - 朝  宗 左近
・人間と樹  武満  徹
・樹と詩人 1 薄田泣童  田中清光
・木の話 3 木と自然の摂理  小原二郎
・丘からの眺め – 武蔵野今昔  足田輝一
・「樹」の民話集 3  「木の精キジムナー」  文・辺見じゅん 絵・村上 豊
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第4号 1980  – 冬  p.84 ISSN – 0388 – 1520

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特集 横山 操の「樹」 図版 岩彩・デッサン10点
・横山 操の「樹」   粟津則雄
・詩・樹の声  田中清光
・絶筆 未完の林の蔭で  加山又造
・孤独な魂の噴出  岡田隆彦
・大木と雑木林  米倉 守
・青梅の三本榎  山崎省三
「樹」をめぐって
・「樹」の古筆
・樹についての断想  串田孫一
・木扁いろいろ 4「樅」  篠田桃紅
・連載詩「樹」 4 – 午前   宗 左近
・人間と樹  武満  徹
・樹と詩人 2  蒲浦有明  田中清光
・詩・木  田村隆一
・竹の話 1 竹を弁護する  吉阪隆正
・街路樹 1 東京の街路樹  矢内原伊作
・わが心の樹 1  ポプラ  小高達雄
・「樹」の民話集  4 「阿古耶の松」  文・辺見じゅん 絵・村上 豊
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* 第一巻から第四巻まで愛蔵箱入り @ 10,000-

第5号 1980 – 春  第2巻 -1号    p.90  ISSN – 0388 – 1520

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特集 ルドンの「樹」 図版 油彩・素描・石版画15点
・詩・触手 ルドンの樹によせて  宗 左近
・ルドンの樹の蔭で  曽根元吉
・ルドンと「樹」  粟津則雄
・樹の昇華  渋沢孝輔
・ルドンの樹  丹阿弥波子
「樹」の、「樹」と、「樹」から- – – – –
・木の根のこと  水上 勉
・樹についての断想  串田孫一
・「樹」の古筆(小野道風) 選 森 孝一
・木扁いろいろ 5「楮」  篠田桃紅
・連載詩 「樹」5 – 眞書  宗 左近
・梅林新市先生のこと  米倉斉加年
・樹と詩人 3 北原白秋  田中清光
・竹の話 竹を見直そう  吉阪隆正
・街路樹 2  横浜の街路樹  加島祥造
・樹の風土記 1  北海道  辻井達一
・わが心の樹 2 ハルニレ  姉崎一馬
・「樹」の民話集  4 「さかしまさくら」  文・辺見じゅん 絵・村上 豊
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第6号 1981 – 夏 第2巻 – 2号  p.90    ISSN 0388 – 1520

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特集 加山又造の樹  図版 日本画・素描 12点
・詩・渚にて  岡田隆彦
・したたかなバイタリティー  田中 穣
・加山又造の「樹」  三木多聞
・美校時代  平山郁夫
・樹と私  加山又造
「樹」の、「樹」と、「樹」から- – – – –
・樹についての断想  立原正秋桷
・「樹」の古筆(王羲之) 選・森 孝一
・木扁いろいろ 6「桷」  篠田桃紅
・連載詩「樹」6 –  晝下がり  宗 左近
・樹と詩人 4 高村光太郎  田中清光
・街路樹 3  仙台の街路樹  高橋富雄
・樹の風土記 2  東北  村井三郎
・わが心の樹 3 赤松  吉中 澄
・「樹」の民話集  6  「ナラの木のことば」  文・辺見じゅん 絵・村上 豊
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 第7号 1982 – 秋 (未刊)

特集 小野竹喬の「樹」 図版 日本画・素描 12点
・竹喬先生の「樹」  水上 勉
・見えざる花冠  米倉 守
・自然との対話  塩川京子
・厳しい温かさ  高山辰雄
・父を思う  小野道子
「樹」の、「樹」と、「樹」から- – – – –
・樹についてのいろいろな事  富士正晴
・「樹」の古筆(池 大雅) 選・森 孝一
・木扁いろいろ 7「欅」  篠田桃紅
・連載詩「樹」7 – 薄暮  宗 左近
・樹と詩人 5  日夏耿之助 他  田中清光
・街路樹  4  京都の街路樹  杉本秀太郎
・樹の風土記 3  近畿  四手井綱英
・プレーベルの詩集「樹」  木村宙平
・わが心の樹  4   投稿詩
・「樹」の民話集  7  「 ナラの木のことば」  文・辺見じゅん 絵・村上 豊
 広告を載せず、採算度外視のクオリティ追求で経営資金が次第に細り、1986 年に個人事業が行き詰まることに。短期間でしたが「樹」と文芸・芸術の総合文化誌出版を手掛けて、未来展望につなげる出版活動をつづけ、20世紀末の先駆的な「樹」と人の関わりをテーマにした文芸図書出版がライフワークとなりました。
原子力発電システムの恐ろしい危険性を感知して、警鐘を綴るために樹の文芸ジャンルから著作活動を進めました。コントロールも始末もできない未曾有の事故が起こります。
名作写真絵本「ふたごのき」姉崎一馬・写真、谷川俊太郎・文  1982年初版を上梓(数年後に版権転売)唯一の絵本出版です。

教示をうけた執筆・著者名を見つけると

 高校時代に講演を聞いた詩人・草野心平、大じゃり小じゃり会(八王子の子供会保護者)詩人・三好豊一朗、学生時代にお世話になった木材学・小原二郎、木の大学講座講師にきていただいた巨樹の研究・牧野和春、林学者・四手井綱英 の各寄稿があります。
果たして、浅学・経験不足から出会いを活かせず、影響感化も不明ですが、実際にお目にかかっていると業績評価や印象は違ってきます。
 樹木に様々な思いをかけ、創作活動を続けた先達の優れた仕事を収録し走りかけた書冊です。未完の続きの方向性は、これから誰かが掘り起こして引き受けるしかありません。
最近、書房から流出した葉書・直筆原稿などがネット上で見ます。更に、樹木に関わる芸術作品・クリエイターが現れ、彫刻やイラストの分野でも新たな作品がでてきていますが、美術専門雑誌・出版社が続いて廃刊。立ち行かない時代に印刷本の行く末が気がかりです。デジタルにはできない、手触りを実感でき、存在感のある本の魅力は失いたくたいものです。
 数年前、TV等でご活躍の画廊・永井龍之介さんにお目にかかった際に、「木」と芸術の総合学的なダイアグラムがあれば助かるとのアドバイスをいただきました。現在まで、「木」と産業、「木」と健康、「木」とデザイン、「木」と住まいについては、ペーパーを作成。アートクラフツ分野では、素材・画材、技法・模様・形象・教育・伝統・歴史、制作者、ワークショップ・プレゼンテーション・メディア、アートビジネス等、あらゆる構成要素をプロットして図版にまとめる作業を進めます。
*「木」総合学のカテゴリー ペーパー
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木の総合学研究 2015 – 2019  「木」のベストブック 「樹木」と芸術 「樹」と詩歌 「樹木」と民話 「木」と文藝 「木」と印書・文字 「木」と風土 「木」と材料学

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