「木」と産業「木」の本「木」の道具・工具工芸木工

「木材ノ工藝的利用」明治末期 木材加工産業・利用技術調査総集記録  木のベストブック-14

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

明治45年、農商務省産業実態調査プロジェクトによる工藝的リソース総編。艦船・車輛・橋梁・建築・家屋から箸・楊枝・木釘にいたる、あらゆる木造・木製品、工藝・工業生産材料と樹種・仕様・加工技術等について東京・京都・大阪・名古屋地区と地方産出地や関連産業を網羅し、集大成したもの。個別業種毎の専門的内容で、官公庁・教育研究機関が所蔵し活用してきた初の総合木材産業製品便覧。

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「木材ノ工藝的利用」 明治政府農商務山林局編纂  1912  明治45年3月大日本山林会發行 発売:三浦書店
205W x 260H x 60T mm  背革上製本  p.1308     定價七圓   (発行番号: 5 蔵書印 PRAIVAT-BIBLIOTHEK  MIGITA   1984年6月 神田源喜堂にて購入 ¥ 55,000 - )
 この分厚い政府編纂刊行本は、当時政府や学会が手本としたドイツ林学・木材加工技術の強い影響をうけ、日本の多様な産業基盤と実勢を誇示する立派な権威的体裁になつています。 明治42年欧州派遣調査「ドイツ・オーストリー森林工藝研究報告書」に促され、当時のドイツ語ハンドブック「 Lorey, Handbuch der Forestwissenschafen 2 Auft. 1903  (Stötzer,Forstbenutzung. Exner-Laubock, die Eingenschafen der Hölzer. Schwachöfer,die Forstbenutzung.)を倣い編纂したもの。国策で闊葉樹(広葉樹)材の利用拡大を意図し、全国の林業試験場に下命。実際の用途を明らかにするため調査データを蒐集して編纂。

*編纂引用雑誌・報告書・雑誌・書籍

・造林学各論・本田静六、・独墺両國森林工藝研究書 佐藤鋠五郎、・船舶用材需要額調査書_綿紡績用木管調査書 和田義正、・吉野林業全書 森庄一郎、・車両用材調査書 村田爲治、大和木経(写本)岩崎灌園、普通木工教科書 岡山秀吉、・大日本有用樹木効用編 諸戸北郎、・和洋改良大建築 三橋四郎、・工場用材料 一戸清方、・斎民要術 賈 思勰、・和洋建具設計實例_日本家屋構造 齋藤兵次郎、・第五回内國勧業博覧会審査報告、・第十回府縣聰關西鏘聯合共進会審査報告、・第二十六次農商務統計表、・工業試験所報告、・大日本山林會報、・建築雑誌、・京都府山林誌、・石川縣山林誌、・農商務省商品陳列館報告・山林広報。

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 タイトルは、「工藝的利用」ですが、当時は手加工・機械工業生産を含む木材加工・工学分野も含まれています。明治末期の用材と加工寸法、生産加工技法や業界の実状・商品内容まで詳細に取材記録された大冊です。取材調査先、協力者名や出所・引用・参考資料も記載され、 イラスト図版、事典的活用・引用孫引きの源。諸職工用語には、項目により詳しい専門用語や図版や解説があります。原資料の粗密検証や個別樹種ごとの再編、用語索引などの追補が望まれます。取材協力・各業界人96名 (工学・工科という用語はまだ登場しない)
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 商業・貿易輸出品目が農産品が主要だったころ、産業振興策で木材利用の現状を掌握し、産業経済、製造技術を明らかにするため木材と竹材に関する産業実態調査を行政部門がまとめた材料・加工技術要覧。
現在は、殆ど石油化学製品ですが、この時代、殆どの生活用具・産業器材は木と竹製でした。各産業の品目分類で編集された内容は、素材、製造、技術、流通、価格、用途、流通取引、現業各地諸事状の詳細に渡り、樹種毎の材料加工・仕様は、後年、多くの著作・刊行物に引用されてきた原著的存在。明治期末の木材に関する当時の産業界の様子がわかります。155樹種、242職種、木の産業の多様性、歴史を見ることができる重要な一冊。先住アイヌ民族の工藝・道具類及び樹種についても掲載しています。多様性をいかに利用するかだけ考え、環境・資源の問題が表面化しない時代でした。当時はモダーン工藝産品でしたが、現代では、伝統・アンティークスタイル。優れた手仕事・竹工品も多い。
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目次

總論

第一章 木材ノ性質  (各項目・ページ略)
第一節 木材ノ外観 色、光沢、木理、紋理、雅致、精粗、木材ノ形状、木材ノ太サ
第二節 木材ノ化學的性状 香氣及臭氣、樹脂、單寧及其他ノ含有物、木材ノ味
第三節 木材ノ理學的及器械的性狀 重量及硬度、木材ノ強固、分割、曲従、音響ノ傳道、熱ノ傳道、電氣ノ傳道、光リト木材ノ關係、水分含有、吸水、木材ノ狂ヒ
第四節   木材ノ工作的性狀 工作ノ難易、釘二對スル木材ノ性質、塗料及染料二對スル木材ノ性質、糊着及膠着二對スル木材ノ性質、模擬材
第五節 木材ノ保存 木材ノ性狀、伐木ノ季節、伐木後ノ處置、木材ノ使用ノ塲所
第二章 經濟的關係
第一節 材價
第二節 當該樹種ノ蓄積ノ多少及輸入ノ多少
第三節 購入ノ便否
第四節 木製品ノ盛衰
第三章 習慣
第一節 需要者嗜好ノ習慣
第二節 傳説による習慣
第三節 道具使用上ノ習慣

各論

第一 建築用材 建築装飾用材、建具用材
第二 水工用材 井戸喞筒用材、湯屋及風呂場流シ用材、水道木管用材
第三 車輛用材 鐵道客車及電車用材、荷車用材、人力車用材、撓輪用材、荷牛馬車用材、自轉車輞用材、橇用材
第四 指物用材 家具用材、樂器用材、板物漆器木地用材、寫眞器械用材、葬祭具用材、佛壇用材、宮用材、時計枠用材、吹子用材、活字ケース用材、測量及製圖器具用材・水準器、玉突臺及玉突杖用材、鑄物木型及模型用材、木具用材、裁縫板其他ノ板類用材、遊戯具用材、額縁用材、玩具用材、包装箱用材、量器用材、小箱用材
第五 彫刻用材 建築建具及指物彫刻用材、印判用材、木版用材、看板額面用材、佛像及佛具用材、置物彫刻用材、木型彫刻用材、假面彫刻用材、根附・煙管筒彫刻用材、芝山彫刻用材、將棊駒用材、墨壺用材、帽子型及手袋型用材、靴型用材、足袋型用材、銃床用材、軍用銃床、獵用銃床、玩具空氣銃々床、木鉢及杓子用材、髢根用材、天秤家用材
第六 鏇作物(挽物)用材 鏇作洋風建築及家具用材、盆其ノ他家具用材、遊戯具用材、玩具用材、房心用材、電燈附屬品用材、抽出シ撮み用材、傘轆轤用材、吹子風口用材、珠數玉用材、算盤玉用材、丸物漆器木地用材、綿絲紡績用木管、機械及道具用材、呑口・唎木・腹星・天星、硝子木型、大和ボビン用材、車胴用材、火藥製造摩擦球用材、製絲用滑車用材、滑車車輪用材、
第七 桶樽用材 種類・各論
第八 棒屋用材 馬鞍用材、道具ノ臺用材、道具ノ柄用材、軸受用材、楔用材、齒輪用材、櫓及櫂用材、槌用材、柝木用材、荷棒用材、衡器用材、木銃用材、木劍用材、槍柄用材、滑車枠用材、打臺材用
第九 木象嵌用材
第十 薄板用材
第十一 寄木細工用材
第十二 刀劍鞘用材
第十三 機械臺用材
第十四 織機用材
第十五 製絲器械用材
第十六 下駄用材
第十七 櫛用材
第十八 臼杵用材
第十九 桐胴丸火鉢用材
第二十 箸用材
第二十一 杞柳行李材用
第二十二 附木及手板用材
第二十三 塔婆用材
第二十四 楊枝用材
第二十五 洋杖及洋傘柄用材
第二十六 木釘用材
第二十七 鉛筆用材
第二十八 經木及經木眞田用材
第二十九 經木紙用材
第三十  木片織物用材
第三十一 ブラシ及ハケ木地用材
第三十二 浮子用材
第三十三 寒暖計臺用材
第三十四 曲物用材
第三十五 曲輪用材
第三十六 碁盤及將棊用材
第三十七 喫烟パイプ用材
第三十八 燐寸軸木及小箱木地用材
第三十九 農具用材
第四十  綿打道具用材
第四十一 蒲鉾板用材
第四十二 曲木細工用材
第四十三 調帶車用材
第四十四 疊縁木用材
第四十五 羽子板用材
第四十六 木毛用材
第四十七 ウードコットン用材
第四十八 木縄用材
第四十九 竹繩用材
第五十  弓箭用材
第五十一 竹柄杓用材
第五十二 筬用材
第五十三 籠及笊用材
第五十四 竹行李用材
第五十五 串用材
第五十六 塗箸用材
第五十七 釣竿用材
第五十八 簾用材
第五十九 簇用材
第六十  筆軸用材
第六十一 筆筒用材
第六十二 羅宇用材
第六十三 提燈骨用材
第六十四 團扇骨用材
第六十五 扇骨用材
第六十六 竹刀及竹胴用材
第六十七 竹梯子用
第六十八 旗竿用材
第六十九 母呂骨用材
第七十  齒刷子用材
第七十一 傘骨用材
第七十二 度器用材
第七十三 茶筅用材
第七十四 筮竹用材
第七十五 竹杖用材
第七十六 竹鞭用材
第七十七 垣根用材
第七十八 壁下地用材
第七十九 竹独楽用材
第八十  篦用材
第八十一 筌用材
第八十二 南部表
第八十三 籐製品
第八十四 飾松
第八十五 ひヾ粗朶
第八十六 鋸屑
木材ノ工藝的利用一覧表  155樹種・それぞれの用途を詳述
 薪炭・樹液・桐油・香油・樹脂、天然蠟、漆、和紙・手漉き糊料、柿渋・染色材料、織物、作陶材料などについては項目がなく、食材、実・樹皮利用やテレピン・樟脳など抽出化学成分についても範疇外です。第二次大戦争時では、柏の樹皮から兵器軍需原料や皮革なめし用タンニンをとるため国内の柏の樹は皆伐されています。明治期末の木材と工藝材料用途・産業を全国的に調べていますので キチョウな歴史的資料となりました。用途が無くなった製品もあいますが、100年後の現在でもキホン知見となるベースコンテンツです。良質の自然素材が生活の中に沢山ありました。
「木材ノ工芸藝的利用」 明治45年 農商務省山林局 編纂

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附録:特種木材及竹材 ぶな材、なら材、かし材、けやき材、きり、竹材、唐木及銘木
寫眞図版:37  色図版3   楢材ノ假漆塗り、琴胴木取り・三味線胴 他 木版美人画挿入
*巻頭の水楢着色塗装カラー版を挿入したのは、楢フリッチ材の輸出から「雑木」家具の製品ビジネス化を志向したもの。日本では、楢材の表面塗装仕上げ方法がなく塗装は漆だけの時代。当時の良質の道産水楢材は、ヨーロッパで高級「ホワイトオーク」銘材に化けて商材として高い評価がされていたにもかかわらず、国内では安い雑木扱い。薪炭・枕木材とみなされていました。
大正時代に入ると国内材硬木の供給が細り、欠乏が起きはじめ、芝浦に高等工藝木材工芸科ができると教科に欧米の木材加工技術をとりいれ、楢材などの未利用広葉樹材の家具類が広まることになります。桜・欅・桑・桐・真樺・塩地・栓など堅木の優れた工藝用木材がふんだんにあり、江戸時代からの指物師は楢は使わず、明治期に楢材は下等品質とされてしまったのです。北海道では、移住・開拓と並行して激しい自然林の大木伐採、輸出が続きました。
*此の本の定価7圓は、現在の貨幣価値換算でおよそ1,100倍相当です。活版+ 一部石版色刷り。再版不可能な最大の木工出版本です。専門職用で一般向きではありません。
 * 樹種別の「闊葉樹利用調査書第一輯~第五輯」は、後年、昭和4年~8年に新編5冊が刊行されています。東京営林局発行 木材の工芸的利用・樹種リスト1912
*柏・梶・楡・三股・楮・青樫・アベマキ・槻・南天・瓜肌・山車、沖縄県材は、不記載。

■「木材ノ工藝的利用要覧」続編

原本には索引がないため各樹種別の性質と木製品用途をまとめて編集したもの。

(177 樹種 異名・外来材を含む)

附録冊子の体裁で刊行。

有用材には摸擬材名を記載しています。

「木竹材の工藝的利用要覧」農商務省山林局発行

山林彙報八月號附録 p.73   大正八年九月 1919

一. 木材ノ部 p.1 – p.64  樹種名167 異名・外来13を含む

二. 竹材ノ部 p.65 – p.73  10種

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