「木」と産業工芸木と人間の関わり木工

樹種別の工藝的利用・続編「闊葉樹材利用調査書」木のベストブック-15

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

木材の工藝的利用各論 – 続樹種別編纂版。昭和2年から実狀調査を加え、執筆担当者が退任後に樹種別調査をまとめた分冊があったのです。上梓されるも、第四輯から遺稿となり、前版の未掲載原稿、及び大正年間から昭和初期までの調査内容が追補され五輯で未完了となる。

闊葉樹材利用調査書

第一輯 ぶな類篇

第二輯 落葉かし類篇

第三輯 くり類篇

第四輯 とちのき類及しゃくなげ科篇

第五輯 ほゝの木類及かつら篇

P1170039-1
152W x 221H x 9 ~7 Tmm 上質紙・簡易製本
昭和4年 ~ 昭和8年 東京営林局発行 價格不明(調査: 吉田義季 第四・五輯は遺稿)

ブナ科材を優先編集、工藝材から工業利用への変化

「ぶな類」を第一扁にまとめ、おほ楢・コナラ、楢柏・柏・アベマキを「落葉かし類」として第二扁を刊行し、「くり類」を第三扁に。当時、産業材の要需がこのブナ科にあつた様子がみえてきます。(なぜか、常緑の白樫・イチイ樫・赤樫、青樫(ツクバネ・長葉)、椎を外しているのは、取材調査が不足・未完だったのでしょうか。落葉かしは、同じブナ科で堅木を櫧としていた名残です。)
樹種別の実際の用途・加工、製作仕上げ、寸法、價格などについて実際調査を掲載。四輯までは初出図版が多く車輛用材・自動車・機械部品用材、鑄物木型等の工業材として利用された様子がわかります。
 「木材ノ工藝的利用」はカテゴリー品目別で編纂され、大冊全ページを検索する事が難しいので、樹種ごとでまとめた樹種編が当初から期待されていたようです。明治期末の全産業調査の蒐集資料は膨大で、未掲載も相当ページ残り、引き継がれています。更に時代の変化で新しい用途や技術が進行して追補が必要になり、新編となっています。広葉樹材の多用途・重要な産業材としての性質・価値が浮かび上がります。江戸時代から明治の基幹素材は木材でした。「キ」幹・主要産業です。燃料エネルギーは薪炭です。全てに木を使い、木に囲まれ、木のある暮らしがありました。
 体裁は、簡易製本ですが、一般書籍としては流通していない分冊発行本です。ブナ科とトチノキ・カツラ・モクレン各科の汎用樹材の公的記録は産業史上、貴重なものとなりました。(朴・桂扁は遺稿のため記述・資料が少なく、概要解説にとどまる。)職人用語・技法は伝統的工芸品指定申請書の製造工程・製造技術又は技法、使用されている原材料や工房取材記録がありますので補足できそうです。
 現代では、多くの製品が石油・合成無機質材に変わりました。関東大震災までは、工藝品の需要・販路が多く、繁栄していた手仕事が急速に減少衰退してきたことなど、木の工藝的利用、生活用品が大きく変化する時期の実録として着目。関東大震災は、産業・社会生活だけでなく人の心も揺さぶり、火災に弱い木材分野の仕事は激変したのです。
第一輯 ぶな類篇   p.142    昭和四年 十二月発行

P1160803-1 P1160804-1P1160809-1 P1160811-1P1160805-1 P1160806-1P1140071-1 P1160813-1

 目次  (ページ略)
第一章 總説
一 ぶな
二 いぬぶな
三 たいわんぶな
第二章 利用細説
 第一節 枕木
 第二節 洋灰樽
 第三節 酒器丸物木地
 第一 椀素地
 (イ)荒型木取法
 (ロ)鏇盤加工及仕上
 (ハ)木地寸法
 (二)工程及木地相場
 第四節 下駄齒及板草履
  第一 下駄齒 附 目星
  (イ)木取、寸法及結束
  (ロ)工程及相場
 第五節 乾餾資材
 第六節 柄額
  第一 「ショベル」及「スコップ」の柄
  (イ)木取寸法
  (ロ)工程及相場
  第二 洋杖及洋傘柄
  第三 鍬柄及篦
  (イ)木取寸法
  (ロ)工程及寸法
  第四 其他の柄 附雪掻き
 第七節 木管
  (イ)木取寸法及仕上
  (ロ)工程及相場
 第八節 曲木
  (イ)粗製木地及寸法
  (ロ)曲木作業
 第九節 杓子類 附雑器
  (イ)木取法
  (ロ)寸法及結果
 第十節 建築用材
 第十一節 樂器用材
  第一 和太鼓胴 附洋風太鼓
  第二 「ハーモニカ」
  第三 「ヴァイオリン」其他
 第十二節 馬鞍
 第十三節 謄写版用材
 第十四節 「スキー」
 第十五節 洋家具材料
 第十六節 算盤玉
 第十七節 刷毛木地
 第十八節 看板及額面
 第十九節 「モールヂング」
 第二十節 木煉瓦
 第二十一節 木型類
  第一 靴木型
  第二 硝子木型
 第二十二節 杼
 第二十三節 車輛用材
 第二十四節 指櫂
 第二十五節 荷棒
 第二十六節 塗櫛
 第二十七節 斗概
 第二十八節 啞鈴及棍棒
 第二十九節 銃床
第三章 結論
附録 ぶな類利用通覧表

第二輯 落葉かし類篇  p.172  昭和 五年二月発行

P1130991-1

P1140018-1 P1140020-1 P1140025-1 P1140028-1 P1140029-1 P1140032-1

目次(ページ略)

第一章 總説
 第一 おほなら
 第二 こなら
 第三 ならがしは
 第四 かしは
 第五 くぬぎ
 第六 あべまき
 第二章 利用細説
第一節 枕木
第二節 洋風家具材
 第一 机及卓子
 第二 椅子及腰掛
 第三 棚
 第四 タンス
 第五 臺類
 第六 衝立
第三節 車輛用材
 第一 自動車
  甲 車体
  乙 車輪
  丙 把手
  丁 幌骨
 第二 汽車及電車の客車及貨車
 第三 荷車
 第四 荷牛馬車
 第五 橇
第四節 建築装飾材
第五節 薄板合板
 第一 薄板製作法
 甲 鋸斷法
 乙 鉋削法
 (イ)平面的鉋削法
 (ロ)螺旋的鉋削法
 第二 肓材
 第三 固着材料
 第四 合板(薄板貼付)法
  甲 合板用機械工具
  乙 合板膠着法
 (イ)槌撃膠着法
 (ロ)締付膠着法
 (ハ)乾燥及仕上
 第五 寸法及價格
第六節 農具
 第一 馬耕犂
 第二 鍬柄及篦
 第三 壟齒
 第四 馬架
第七節 樽類
  甲 麥酒樽
  イ 樽榑木取(山取)法
  ロ 中仕上
  ハ 仕上
  ニ 寸法
  乙 葡萄酒樽 附 亜爾箇兒性液體樽
  丙 醤油樽
  丁 魚油及塩藏魚樽
第八節 乾餾資材
第九節 樂器用資材
  甲 洋琴及風琴
  乙 太鼓胴
第十節 時計枠
第十一節 「スキー」
 (イ)木取及製作法
 (ロ)工程及價格
第十二節 電柱腕木
第十三節 玉突臺及附屬具
第十四節 坑木
第十五節 擬銃
第十六節 玩具木馬
第十七節 曲木
第十八節 櫓及櫂
第十九節 「ラケット」
第二十節 洋杖及洋傘柄
第二十一節 下駄齒
第二十二節 看板及額面
第二十三節 靴木型
第二十五節 球竿
第三章 結論
附録 落葉かし類利用通覧表

第三輯 くり類篇  p.107   昭和五年 十月発行

P1140037-1

P1140038-1 P1140040-1 P1140041-1 P1140042-1 P1140046-1 P1140043-1

目次 (ページ略)

第一章 總説
第二章 利用細説
第一節 枕木
第一 枕木用材
第二 木取法
第三 寸法
第四 防腐法
第五 堪久年限
第六 年需用額及工程
第二節 土木建築用材
第一 角及小角
(イ)土臺
(ロ)名栗
(ハ)軍需用材、附造船材料
第二 枌板(屋根板)
第三 盤木
第四 丸太
(い)杭木
(ろ)坑木
第五 板材
第三節 和風家具
第一 鏡臺針箱、火鉢、机卓、書箱、硯箱、鼠不入等
第二 鰹節箱
第三 炭取箱
第四 箸箱
第五 爐縁
第六 組立式書架、鉢カバー、狀差、屑函、傘立、帽子掛等
第七 針差
第四節 挽物用材
第一 盆類
第二 机卓子の脚
第三 織機用木管
第四 菓子器
第五 各種柄類
第五節 漆器用材
第一 會席膳、附 箱膳及重箱
(イ)木取寸法及作成法
(ロ)工程及相場
第二 蕎麥臺
第六節 乾餾原木
第七節 太鼓胴
第八節 農具用材
第九節 柄鍬の柄
第十節 馬架
第十一節 馬鞍
第三章 結論
附録 くり利用通覧表

第四輯 とちのき類及しゃくなげ科篇  p.116  昭和八年 三月発行

P1130995-1

P1140015-1 P1140016-1 P1130997-1 P1130998-1 P1140003-1 P1140008-1 P1140009-1 P1140014-1 P1140011-1 P1140013-1

とちのき類 

目次 (ページ略)
第一章 總説
一 とちのき
二 えぞとちのき
三 ながみのとちのき
第二章
第一節 鏇作材料
第一 椀素地
第二 日光漆器素地 附 木工品
第三 小木曾木工組合製品
第四 木鉢
第五 盆類
第六 茶托
第七 茶櫃
第八 茶筒、茶壺及碁笥
第二節 建築、家具、薄板合板其他装飾材料
第三節 紡績及機織用木管材料
第四節 樂器材料
第一 「ヴァイオリン」類
第二 太鼓胴
第三 木魚
第五節 玩具材料
第六節 「ブラシ」材料
第七節 美術工藝材料
  甲 農民美術
  乙 寄木
 第一 方形的寄木法
 第二 幾何學的寄木法
 第三 材料樹種
  丙 木象嵌
第八節 張板及裁板材料
第九節 杓子、汁杓子及雑器材料
第十節 碁盤及將棋盤材料
第十一節 臼及杵
第三章 結論
石南花科 目次
第一章 總説
 第一 どうだんつゝじ屬
  一 どうだんつゝじ
  二 さらさどうだん
 第二 あせび屬
  甲 あせび類
  一 あせび
  二 たいわんあせび
  乙 ねぢき類
  一 ねぢき
  二 たいわんねぢき
  三 せいばんねぢき
 第三 しゃくなげ屬
  一 しゃくなげ
  二 やまつゝじ
  三 みつばつゝじ
 第四 こけもも屬
    しやしやんぼ
第二章 利用細説
第一節 製絲用「ギリ
第二節 折疊尺
第三節 建築溶剤 附 小細工材料
第四節 鏇作材料
第五節 木櫛
第六節 洋杖及洋傘の柄
第三章 結論

第五輯 ほゝの木類及かつら篇    p.107    昭和八年 三月発行

P1130993-1

P1140051-1P1140058-1P1140060-1P1140061-1P1140062-1P1140064-1ホホノキ類 目次 ( ページ略)

第一章 總説
一 ホホノキ
二 コブシ
三 タムシバ
第二章 利用細説
第一節 下駄齒 附 目星
第二節 漆器用材
  甲 新潟漆器
  乙 村上堆朱黒漆器
 第二 會津漆器
甲 會津板物漆器
乙 衣桁
第三節 板物製品用材
    手工板、俎板、裁板、平板及側板、製圖板、雲形定規
第四節 時計枠用材
第五節 軍需用材
第六節 造材及製材品
第七節 佛檀材料
第八節 玉突臺材料
第九節 農民美術材料
  い 日本農美生産組合
  ろ 登山人形及風俗人形
  は 玩具ギニョール
第十節 柄鞘材料
第一 刃物の柄鞘
い 刀剣の柄鞘
ろ 小刀類の柄鞘
は 庖丁類の柄鞘
に 小鋸の柄鞘
第二 梳櫛鞘
第三 縮尺の鞘
第十一節 印刷用木具材料
一、ゲラ 二、インテル 三、臺木
第十二節 運動具材料
い 野球用バット
ろ 庭球ラケットの銀杏板及厭搾框木
は ピンポンラケット
第十三節 鞴
第十四節 木版及印材臺木
第十五節 看板
第十六節 箱根細工
第十七節 靴木型
第十八節 佛像
第十九節 佛具用材
一 木魚
二 位牌
三 天蓋
第二十節 炬燵櫓及び置炬燵 附 行火
第二十一節 鑄物木型
第三章 結論
P1140070-1 P1140056-1 P1140067-1 P1140069-1
P1140010-1 P1140068-1
カツラ目次
第一章 總説
第二章 利用細説
第一節 張板
第二節 碁盤及將棊盤
第三節 時計枠
第四節 「ブラシ」刷毛
第五節 木製調車
第六節 蓄音器
第三章 結論
 ホ丶ノキ 挿圖目録
第一圖 ホホノキの葉及び果實
第二圖 幹材斷面圖
第三圖 會津漆器
其一、丸物及板物漆器
其二、紅茶セット木地
其三、巻煙草箱セット木地
其四、菓子器木地
第五圖 會津漆器の衣桁
第六圖 木曽奈良井の笄
第七圖 刀劍鞘
第八圖 其一、お六スキ櫛鞘製作器具 其の二、同製作の實況
第九圖 お六スキ櫛の木取圖
第十圖 縮尺鞘ノ圖
第十一圖 鑄物木型
カツラ 挿圖目録
第一圖 カツラ枝葉
第二圖 カツラ幹材斷面
第三圖 張板
第四圖 ブラシ
第五圖 木製調車
以上
(*作字・活字体6点有リ、類字体ヲ入力)
* 木の大学講座12期「ブナ時間・トチの時間」で実物サンプル等をご紹介します。

© 2015, Kurayuki ,Abe

All Rights Reserved.  No Business Uses.

複製・変形・模造・転載作り変え・画像転用・ロボット、Ai無用、業務利用を禁じます。

木の総合学 2015  「木のベストブック」「木材の工藝・工業利用」「国産有用樹種」「明治・大正期木製道具・商品目分類」「Crafts Japan – Culture of Wood」

▼ お気軽に一言コメントをどうぞ

次の記事: