「木」の皮膚科「木歴・木録」「木識・木学」木の内科

ピンク・タモの七変化気品 伐採バイタルサインとカット材面の発色・照り輝き Insight   木の内科 – 13

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

カット直後の材色変化は、デリケートでキヒンのある美しさがうつろう。新月伐採でも樹芯からのセルフキュアー色素移動・発色がダイナミック。樹種・伐期・産出地、木樵、流通経路・扱いダメージがはっきりしている原木の樹体内経時変化を辿る。

① 北海道タモ

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産出地:十勝・ 石井林業の森 新月伐採 2002年10月6日  / 樹令約80年  枝下7.85 – 8.5 m  元口 径48cm – 37cm  末口 径 40cm – 32cm

石井林業株式会社玉切り現場立会い / 浦幌町富川 、伐採・搬出:二瓶林業 20021017AQ
製材2004年9月:なで角柱材 / オグラ木材(南会津郡舘岩村)ピンク3本/10本口 土場渡し價格:¥500,000 –
 市場に出さない山元原木直売。手入れの行き届いた貴化施業・広葉樹自然林の択伐です。周辺環境や地形、素性の良い原木の検分、綺麗な姿を見ることが出来る希な機会でした。
このタモ材は、特別な配慮で新月伐採。元口カット面の芯材部色素が辺材部への拡がり、淡いピンク色混じりに。伐採から 11日後の木口変化を見ると、材内部の色差・変動がはっきり現れました。木材学の論文、研究レポートや専門書・教科書には、「心材(赤身)ではすべての細胞が死んでいるが、辺材では柔細胞が生き続けている」などと記述されていますが、死んではおらず生命活動を休んでもいないのです。
② 秋田タモ

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産出地:大館北、伐採:鷹巣秋田森林組合 200711  

樹令 97年輪 / 元口60 cm /末口56cm x 3mL  0.94立米  盛岡木材センター出品材  20071218 落札 @ 38,800-   成長年輪幅が乱れ、波歪み矩形  20080323AQ 安曇木材製材

  元木・木口カット 芯材部赤身(小豆色)から白太辺材への色素放射移動、拡がりがはじまる。芯割れが入り、辺材部に飛び班点。
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挽材直後の芯材色。自然乾燥後はグレー系ベージュ褐色で安定。
芯材組織の色変:挽材直後は茶系、数分後に淡緑サビ青磁色を帯びはじめる。
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心材と辺材の境界環孔には、緑青褐色の色素細胞移動の凝集
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辺材部は赤みを帯び、大気に晒されて三時間ほどでサーモンピンクカラーに。
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更に空気に晒され乾燥が進むと白太は淡黄色、芯材は淡褐色へと動く。
タモ独特のテクスチュア、波縮れ木理のコントラストが美しい中杢の質感が現れる。
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辺材白太部分には、春材部に白班が析出し拡がる。
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外樹皮 – 内皮 – 形成層  辺材部から内樹皮がサーモンピンク色に
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発光・玲瓏(てりかがやく)材面

数時間に命のうつろい輝き、美しいほどの表面発色  (鮮黄色材は黄蘗)ストック桟積み作業では、夕方の紫外線で発光し、生材色には植物蛍光色素があることがわかりました。CLE  28mm   1/60 sec. ASA400 薩摩烏賊餌木のクサギ・クスにも実際に材面がボーと照るものがあります。(20181102追記)

「照り輝く木材」日本書紀の記述

河内の海に玲瓏(てりかがや)く「樟木」を見つけた溝辺直(いけへのあたひ)という人物が天皇に献上し、天皇は、画工に命じてその木から二体の仏像をつくらせた (欽明紀一四年五月条)

s: 「クスノキと舟」風土博物誌-10  p.54 -57   三浦佑之 岩波図書 第839号 2018年11月

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MT木口割止め塗布 20080425 → 室内乾燥・虫入りトリム 20130320
 タモは、樹幹が真っ直ぐで正円・樹皮が厚いものが良質材です。硬い材種とソフトな材質のものもあり、商材・木工分野では「アカダモ」と「青ダモ」。ヤチダモとアオダモに相当するのかサンプル材が少なく判りません。研究資料・文献が少なく、高樹齢・大径木がなくなり枯渇、最近まで輸入材が市場に出回りましたが、それも盗伐・環境・資源問題で姿が見えなくなりました。
近年輸入されていたシベリアタモや楢は、樹皮が厚く油分があり、材色は少し白ぽい。旭川市場に出ると国産材に化けるのです。清潔な和風の材質感、素直で切削しやすい。見栄えがよく強度があり多くの器材・家具に使われてきた優良樹です。木材組織の色調の経時変化はノーブルで美しく興味深い。

© 2015, Kurayuki ,Abe

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木の総合学研究 2015 -2019  「タモの材色変化・色素移動・植物蛍光色」「木歴・木録」「MT マテリアルトリートメント」「Hard Wood – Insight」「玲瓏(てりかがや)く木材質」

 

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