巨樹見学紀行樹木調査環境

木の大学講座 第12期「ブナの時間・トチの時間」の記録 -2 「森林世界遺産級・ブナの王国」

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

希にみる「ブナのクライマックス樹林相」極めて貴重な自然森林、三島町入間方・志津倉山麓。二日目は、入山沢周辺部「トチの王国」から繫がる高地、志津倉山中腹の素晴らしい「ブナの王国」を訪問。

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 里では梅雨空の雲が今にも泣き出す気配でしたが、雨霧に煙るブナ巨木群生地の体験もまた良しと、一行はマイクロバスの中。R153 間方集落を抜け、沢沿いから大辺峠手前の曲り沢にて下車。入り口案内板の前でルート説明・自己紹介。空模様は明るくなり期待が膨らみます。
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 登山道を入ると直ぐに樹齢100 – 300年以上400年生の見事なブナ大木がドカンと立ち並び、登坂路を上がると太田講師も驚くほどの、希にみるブナの極相林の群落に導かれました。講師は、時折カメラを向けて本番取材がはじまり、野帳に記録されるほど。沢沿いでは、鳥さんも多く良く囀り、環境が極めて優れている林相は、まさに「ブナの王国」と呼ぶににふさわしい。これほどの豊かで無傷の原生天然林地(国有林)は、もう他にはみられないでしょう。想像を遙かに超え、気高い最高の素晴らしい樹々に出会うことが適いました。
こうした太古からあった大切なもの、大きな変わらぬものに命は支えられてきました。循環再生系、自然の営み、人類生存の源です。
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 50-60cmの沢ぐるみ(200年生)、 2mを越えるトチの巨樹(500年生)は、沢を覆い塞ぎ、ブナ巨木群の外側・沢際などに、水目・栓・真樺・朴・黄蘗の大木が混生しているのが印象的です。経済高度成長期前には、日本各地にこうした天然の森林・巨木が沢山存在していたのです。
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樹下美人撮影
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 赤ブナらしい樹皮は多く、通直でスクッと伸びる柾ブナとみられる樹体もみかけました。400年を越えるとみられる巨樹は、根元から巨体を支える浮根に苔むすほどです。
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Photo.杉山裕次郎
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ブナ平 昼食・森林ガイドの間方民話披露
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豪雪地帯の寝曲がり大木が林立 ブナ・栓・水目・真樺の相性、伴立ち
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「ブナの王国」長老が魅せる威容と気品
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 多彩なブナの巨樹は、大王、キング級の威容、エレガントなクイーン、賢固な雰囲気の家老、ノーブルで美しいプリンセス、際立ち仁王、頑強な毘沙門、気位のある森番、天空をさす阿修羅(トチ)などと名付けたい容貌の樹形がありました。ブナの王侯貴族クラス群は、まさしく世界貴重森林遺産「ブナの王国」、World Heritage Beech Forest  / VIT  Very Important Tree スポットです。
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 胸高径 50cm – 60cm – 90cm – 1m – 1.2m級がぞろぞろ、清楚で美しく、逞しい頑強な幹樹肌。多湿・水脈で富養土層も厚く、根張りが浮くほどの樹勢。神々しい威厳を放ち、生命感溢れるクライマックス林相です。自然林内は、植生が豊で清浄、静寂そのもの。勢力をはった老木が倒れ空間・ギャップがあくと森は急に明るくなり、林床の若木成長・世代交代が早まります。
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ブナの実採り木登り熊の爪痕
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ブナの実採りに登る爪痕 ここは熊さんの生活圏
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水目・真樺・黄蘗の大木も混じる緩斜面
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瓜の木の花開く
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P1190447-1まだ空は明るく、全員無事下山です。
厳しい自然環境
 山頂登山道から外れる巻き道は、狭く踏み入れる人がさほどいないので荒れていないのですが、急斜面もあり本格的な装備が必要です。雪どけは春遅く、5月中旬の新緑芽吹きから梅雨直前の前期、どう猛な目白アブが消える夏の終わりから11月上旬までの秋期の数ヶ月間のみ山入りできます。(遭難者石碑あり、要登山届・地元ガイド)水素イオン濃度がたかく、深呼吸できる最高度の清浄な環境森林域。「人間がいないと世界はこうなる」というナチュラルミュージアムに見えます。
この日、雨は隣町で降り下ろし止まり。一行が無事に下山すると俄に谷巻き風が吹きこみ、山の神の見守り挨拶がありました。(参加同行:地元案内人 菅家壽一氏)

© 2015, Kurayuki ,Abe

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木の総合学研究 2015 – 2019   「木の大学講座第12期 ブナの時間・トチの時間 −2」「ブナの王国 巨樹群」「原生自然林フィールドワーク」「ブナ極相林のトチ・沢ぐるみ・真樺・栓・黄蘗・朴 大木混じり」

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