「木」と産業「木」の道具・工具ジョイントシステム木工

棒屋の止め楔 -続「手斧と削り当て打ち木床」床座の仕事場 木工ジョイント-19.

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

「切る・削る・掬う・打つ・突く・掘る・刻む・彫る」 人の使う柄付き道具は数多く、握り柄を調整したり修理する棒屋・柄屋 ・堅木木工と呼ばれる専門職がずっと地域の産業を支えてきました。「大工は両手、棒屋は片手手斧。 楔が打てるようになれば一人前」足を使う床座作業姿勢は倍効率、楔と片手手斧と木床が棒屋のキーワード。

 床据えつけの削り打ち台・当てブロックが棒屋のワークセンターですが、床下までは誰も見ていません。仕事場に張り付かないと分からない事が多く、マルチワークの全容がまだ見えないまま、地域密着の大事な多能工の専門職が注目されずに消えていきます。主要な技能である楔ジョイントの実作を収録して各地にあった身近なハンドワークを伝えます。伝統技能は、親方に密着して身につけるものですが、既に現役の猶予はなく、プロの視点で気がついた大事な所から順次記載。

因みに、実物サンプルと詳しい記録があれば、専門職の手順を知ってコツをつかみ、少しづつ要領がわかってくるので復活することも出来ますが、やはり手造り道具の良さや量産品との違いを解って使える人がいないと始まりません。

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玄翁柄据え替え、割り楔(鉄)

床胡座では、手だけで無く「足」を使う作業が重要。手を伸ばせる範囲に工具・部品、刃物を並べている。足袋や靴下をはくと指先でつかみにくいので裸足、長柄棒の木取りは、床から立てた脚に当て板を載せ手鉋かけ。

多機能の削り打台・当て(埋め込み木床)

・3.5 x 5 寸 長さ3尺のケヤキ堅木角材(掛矢の頭材)を床下に埋込、地面に土台の底石を入れる(衝撃反発用)

・立ち作業のワークベンチではクランプ締め具が必要で時間のロスが大きい

・床作業アグラ姿勢は「足で固定し素速く動かせる」クランプ時間をセーブでき、作業スピードが速い。

・前後頭部隅に5分の欠込み、刃先を引っかけたり 被削材を押し当て

当て板ブロックの端面は、帯鋸刃研磨にも便利 バンドソーの刃持ちは、木工用3時間程度 鉄鋼用は4-5倍、黒檀唐木用を使う

・鐵道小レールを金物打座、抑え・重しに使い、当てV溝を削り台に欠き込み

・レールは、柄握り当て、鉄楔のならし、刃物打ち用金床 昔の小型が使い易く、先代のものを使用

・削り打ち台当てブロックは、いろいろな作業に便利なワークステーション まさしく棒屋の「木床」

・刃物が当たり痛むので、2年に一度、上端を1寸ほど切り 持ち上げる
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・片手チョウナは鑿・鉋より素速く削れる。仕上がりは綺麗だが実用品質、工手間をかける仕事ではない。
 棒屋の手仕事は、楔が打てれば一人前。楔打ち、片手手斧が使えれば食べていけたが、今は困難。
・先代からの手斧刃が具合が良い
周辺・足元の動きを見よ

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平鉋・丸面取り鉋、鑿、ドリル 機械:手押し、昇降盤、バンドソー、自動鉋盤、卓上ボール盤

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替え柄 木取りブランクや仕掛かり半製品を天井などに乾燥ストック
柄棒材(白樫・楢)の追柾・二方柾木取り:長さ7 尺2寸 – 6尺5寸

棒屋職の楔打ちジョイント

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楔は、 各サイズを準備して直ぐ使える様に、常時手あぶり火鉢の脇に入れて常時乾燥。(素人は直ぐに出来ると思うので、費用を高く感じる。仕掛り下準備の手間が見えない)
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鍬篦止め楔 使い込むと下端の楔止めが摩耗して浮き上がってくるので据え替える
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楔打ち用「棒屋」平梃(鉄)専門道具がある。
・打ち楔は鋸挽きや鉋肌より、手斧の荒削りが摩擦保持力が高く緊結する。
 (割り楔は切削面が平滑でないと密着しないので、鋸挽き荒しこ鉋かけ、鑿削り程度の面精度が必要)
 ・棒屋の系統は、車棒屋(車輪・荷車・水車歯や山車の修理)と農具棒屋に分かれていた。
・先金物・刃は、鍛冶屋に外注して揃え、棒屋で完成品にする。
・春夏は持ち込み修理が多く、秋冬に半製品や完成品を手掛ける。
棒屋の柄削り「長あて板」長さ自在
柄据えなど細かい手先仕事では床座ですが、削りモノは立ち作業。当て板を組立てサイズにあわせて面取り反り台鉋で仕上げます。棒握り柄は反り台鉋で仕上げ。長さは1尺~ 4mL 各種、特殊6m長柄まで。20170417ABE
棒屋の堅木原木、樫楢欅  白樫牡丹、欅の「赤青」

 樫・楢・欅の柾挽き:長さ7 尺2寸 – 6尺5寸 白樫は、天乾 最低5年、6尺もので15年室内保管。伐期は、11月 – 12月。白樫は、年を越すと樹内の水が動く。水上げが早い。白樫は、10本あるとそれぞれ水揚げが違う。樫特有の芯部の「牡丹」(タンニン色素の拡がり模様)は、水気の多い土地に出やすい。

 関東平野では,農家の周りに防風林の樫・欅を植えていたが、埼玉は、欅が多かった。丸太樹皮付きは、直ぐに木喰い虫が入る。虫喰い材は、半分しか使えない。原木丸太は、木肌がスベスベしているものが良材。通直五節まで、4mものが望ましい。2m程度の枝下は、枝小節がはいる。良質材は、伐採業者から直接連絡をもらうことが多く、市場での買い付けは出品があるときに手当、良材は少ない。(「牡丹」は樹芯に割れがきたり、高樹齢になると多く入ります。)製材工場は、堅木挽きで帯鋸がいたむので反転挽き「返し」をいやがる。
「欅赤」は芽吹きの色が赤く、一週間ほどで青緑に。「青欅」は、芽吹きから緑青で、製材するとアクが出る。「欅赤」の白太部分(20年輪幅)3.5寸 – 4寸は、杵に使う。栗・朴も使用。鋤台(篦)と柄は大楢・水楢の目通り材一寸厚 x 6尺 x 5寸幅一枚で木取り。(「牡丹」は、樹芯の割れや高樹齢になると多くはいる傾向があります。)
白樫白太は、玄翁の柄。農耕具、臼・杵などの用材が身近に沢山あり、地産地消、循環していました。現在、農村部の大木は希になり、植生も木材市場の出品も見かけなくなりました。農具・打ち刃物には、西型と東型、地方毎の特長があり、機能性重視のつくり。
棒屋工房手仕事の産業的な見方・評価 「柄物師」という捉え方
 農具や工具、生活道具の柄据え付けは、単純な構造にみえ、高度な制作技能とは見なされなかったでしたので、伝統工芸の分野には入らず、農具、工具の製造分類です。また、刃物・金属パーツの組み合わせで鍛冶屋とのコラボレーションであり、農耕、土木建築現場用の荒物・消耗品扱い。今までに卓越技能者として評価されていても、工芸産業の中には入りません。柄をつける仕事ですが刃物・鍛造の知識や火造りもしますので熟練専問度は高く、仕事の範囲は広い。指物・挽物・曲物・刳物とおなじように伝統工芸技能として重要な職域をもち「柄物師」というカテゴリーを
つくりたいと思います。
 木部の削り、金属刃物の接合ジョイント、アセンブルからみると、熟練した高度な工作技能が必要です。ハンドメイドの作業道具は機能性優先、シンプル。無駄のない洗練された美しいフォルムが伝承されてきました。
棒屋職の道具・刃物、実作を全てを詳しく記録し研究されることはなく、学術的には考古出土品の復元、民俗資料の復刻展示目的の博物館オーダーの再現制作があります。
棒屋仕事は、握り木柄が付く全ての道具の他、打台、臼、撥、炬燵櫓に車輪など多品種。制作物の種類が多く、多能工ですので仕事場に長時間張り付いていないと仕事内容が詳しくわかりません。すでに棒屋を知る方も少なくなりました。安物・使い捨ての時代です。
「久保農具工房  」  群馬県前橋市駒形町1157 – 19  棒屋二代目 久保和正 82才現役、定年フリー。TEL. 027-266-0766 (工房)  027 -266 -1530(自)
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 見学同行取材は、ベテランの様々な見所・知見が飛び交い充実した時間でした。木工作家 柏木工房柏木 圭、木工家 工房ブレス須藤崇文、店装師・創美 町田忠男、ガラス工芸家North Wind 木村 明    木の大学講座・クラフトフェアまつもと参加メンバーです。20151015

棒屋の「床アテ」  作業塲と棒削り鉋・郡上八幡 1993年3月

床端にVW「ドン突き」アテがみえます。

鳶・ツルハシ・平鍬・植林鍬 里山ツール全て棒屋仕事

台鉋を改造した丸削り

* 「床アテ」棒屋の仕事場 郡上八幡 1993    丸棒手鉋  追記20180317

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木の総合学研究 2015 – 2019 「楔」ジョイント 「棒屋の仕事場・削り当て木床」「片手手斧」「専問職名工の作業台」「棒屋は柄物師」

 

 

 

 

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