「送り蟻」と「呼子」「木口台・留め台・合掌台の組み削り台」國政流の相伝-4. 木工ジョイント -23.
表に見せない、蟻型締め付けインターロックジョイントとして細工物に使われてきた匠の伝承技法。目立たず、見えない隠れた所にも技を駆使するクラフツマンシップは、江戸期上方からの「下り物」。日本独自の精密木工技法は、時空を超えて継承されていきます。
契り・楔・蟻類は、下地や見えない部分の仕事であり、必要に応じて使いわけます。師匠親方について習得する基本の付随テクニックでした。材料の扱いや刃物は実践現場で覚え込み、特別な指導はなくても経験でマスター。主要なノウハウである接合部の組立ジョイント機構や納まりは、技法が詳細に文書に記述されることはないのです。
身体記憶を言葉で説明しようとすると、大変なボリュームになります。基礎が出来ていれば、雛形が無くても図形をみると直ぐに具体的なイメージが湧き、頭に入るものでした。13代國政の相伝から。
「送り片蟻」と「呼子」
締まり勾配のついた下穴(蟻溝)に蟻枘を差し込み、ズラシ締め付け・引き寄せる接合技法。相手側を呼び寄せるので「呼子」。「呼子」は板木口から突き出す形ですので、板を元親と子に見立て「小さい出ているもの」。板厚に応じて、締まり勾配を調節します。蟻型には、普通の形と留め先を締める片面だけテーパーをつける「片蟻」が有ります。「送り蟻」は、「組手」ではなくフック状密着構造なので「蟻掛け」の派生タイプ。「送り片蟻留め」
「送り蟻」と「呼子」
蟻(枘)のピッチは2寸、板幅一尺程度とする。地板・台輪や周り縁、付け枠で天地を固めます。
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箱送り蟻
箱送り蟻(下穴形状が箱堀り)は、単独の帆立(垂直部材)や吊り縣架部用
送り蟻(枘)
鏡台ネコ帆立木口の「送り蟻」
天板の蟻作里(アリジャクリ)溝に嵌合 (国分寺市南町路上で鏡台を拾う1999)
「あて板」指物作業台と削り台三点組み「木口台」「留め台」「合掌台」
組手・蟻などの精密工作には、当て板と組合わせる削り台で微細加工。
① 直角に木口を削る「木口台」
② 留め45度に削る「留め台」
③ 上下傾斜面は「合掌台」
合掌は手指を交差して組む形の組手。いずれも長台鉋で削り合わせる。現在の木工では、精度の高い機械と高速回転切削刃物を多用し、普段は削り台を治具に使いませんが、手仕事で微細加工する場合に最も必要な道具です。
木口台
留め台
合掌台
・当て板仕様:幅9寸から一尺4寸まで 長さ3尺5寸 余り幅広では使いにくい。
「当て留め」は中央部を空け、ストッパーとして適時入れ替える。白樫材などの堅木を硬めに打ち込み
・当て板の適材は、桜や欅の良材 材厚3寸・足一寸 精度を保つ定盤用なので、狂わない高質の材料を厳選。他に長尺削り立ち作業用のもの等があります。
・当て板は頻繁に削り直しをしない。同業から見ると仕事が下手の証。
・木口台・合掌台には、樫・桜の堅木薄板を貼り、表面の摩耗を防ぐ。
・留め台の下端に反り止めを対角に入れる。
右下端にズレ止め、寸法の大きい材の場合には、当て部分に余長木片をつけて実際の仕事にあわせて調整する。
・杉や松などの柔い材質の柾目を使用。
*あて板削り台記録:1946 年制作 – 1978まで使用 1945年、米軍東京空襲で都内の木材倉庫は灰になり、敗戦直後は良質材を入手し仕事をすることが困難を極めた時代でした。
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木の総合学 2016 – 2019 – 2024「送り蟻ジョイント」「指物 当て板と組み削り台」
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