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1㎜ が1000年の砥石品位 _ 世界最高の刃物研ぎ技術を生み出した天然砥石の特産地丹波帶|2億年以上の火山降灰堆積・変性が繰り返され地球プレートテクトロニクスが造り上げた京都岩盤砥石層|地上の雅びは、見えない地界の華やぎの上にあり、合砥 (あわせど)の美質、その雅致貴富に料紙意匠の趣向とルーツをみる|刃物研磨力は最高、京都特産天然の極上ズラリ_日本砥石考 ハンドツールジャパン− 33

京都の自然景観や工芸美術は、美しいものが多く、目にさやかです。地勢や見えない岩盤まで美質を含み、世界でも特別な塲所であることに気づきます。産出した天然の鉱山砥石は、刃物を見事に研磨し、色彩豊かで華麗。地上千年の栄華「雅びの元素」が、その地下に潜んでいたのは驚きです。
富貴の資源は、太古の地層に蓄積され、ゴールドストーンに成り、採掘尽くされましたが、良き時代の残映は少し残ります。古都の天然砥石を観たことが無い世代には、どう響くでしょうか? 採掘し尽くした世界的遺産・絶品なのです。
美しい巣板「蓮華」をみると、鎌倉時代以後の「料紙」意匠のルーツを想い起こさせ、流美や散らし・つなぎの手法がみえてきます。自然の造形物からひいて美を取り入れる日本の美術工芸の基本は、「真似る」「うつし」「型取り」からはじまりました。流し込み、吹き寄せ、被り、にじみ、流紋など、岩石からも装飾のエッセンスをいただいているのです。
砥石に美質を見出し、見立てや賞揚するのは日本の職人だけでしょう。この厚みが、なんと五万年なのです。
天然砥石は、変動帶火山国にできた奇跡的で貴重な限りある天然鉱石資源。仕上げ研ぎ合砥は、京都産天然砥石が品位ダントツ_、美の蓄積が「宝石」に成りました。
最上品質の天然砥石は、世紀末に鉱脈を掘り尽くして廃坑が続き、もう見ることができません。稀少な優良品は高価なものになり、人造砥石製造が次第に広まりました。1950年頃、店頭に並んだ最上質品はウットリするほどと言われて、現在では見ることも、手にすることも難しい。
二億年以上の時間がつくりあげた天然物ですから、使い研ぎ減らすことも躊躇(ためらい)います。もう手に入らない逸品は、商売人が「非売品」にして飾っていました。
では、恵まれた時代の店頭に並んだ市販上質砥石には、どのようなものがあつたのか。 一世代前のストックをご紹介して、次世代へ順次、譲渡していきます。
京都梅ヶ畑中山、嵯峨・鳴瀧・高雄・山城、丹波 等。風光明媚な山域に産出した銘砥「役物」が主体です。
A. 仕上げ砥石 京都合砥(あわせど)
鉋、鑿、槍鉋、手斧、小刀、カミソリ、ナイフ、メス、切りだし研磨用
① 嵯峨巣板「蓮華」
正本山合砥 75 x 206 x 50 mm 1.879g 三十型 京都右京区鳴瀧向田産出 山三マーク 「蓮華」は巣板役物の特級美品 生成 2億年前・5万年分の厚みボリーム / ミュージアムクラス_地球数億年の傑作 183p.
② 巣板 蓮
正本山合砥 76 x 205 x 47 mm 1.700g 三十型 京都右京区鳴瀧向田産出 極上品 / ミュージアムクラス 52p.
③ 巣板
正本巣板山合砥 82 x 217 x 43 mm 1.841g 二十四型 京都右京区鳴瀧向田産出 今西製砥株式会社 最高級品 変成2億年・ 4万2000年分の厚みボリューム ミュージアムクラス 39 p.
④ 太平鑛山
合砥石 76 x 201 x 34 mm 1.228g 京都市右京区嵯峨樒原産出 一本撰 極上品 / ミュージアムクラス 29 p.
⑤ 巣板 鳴瀧
鳴瀧鑛山合砥 75 x 205 x 37 mm 1.700g 京都右京区鳴瀧向田産出
今西製砥株式会社 極上品 / 三万七千年の厚みボリーム ミュージアムクラス 22 p.
※ 途中ですが、棹菓子・羊羹に見えてきました。
⑥ 高雄本山
鳴瀧鑛山合砥 75 x 210 x 40 mm 1.545g 京都右京区鳴瀧向田産出 今西製砥株式会社 極上品 / ミージアムクラス 11 p
⑦朝日虎 山城国産




本山合砥 72 x 198 x 28 mm 725g 六抜 SUN TIGER BRAND (山城国銘) 京都市右京区梅ヶ畑産出 / 京都砥石会社 硬質最高級品 ミュージアムクラス 10 p.
⑧ 中山鑛山並砥層
合砥 75 x 205 x 37 mm 1.240g 京都市右京区梅ヶ畑産出 極上品 /ミージアムクラス 12 p.
⑨ 本鳴瀧
正本山合砥 75 x 200 x 30 mm 998g 六型 京都右京区鳴瀧向田産出 極上品 / 一本撰 ㊕
⑩ 本鳴瀧
正本山合砥 79 x 195 x 30 mm 1.010g 六型 京都右京区鳴瀧向田産出 極上特撰. 10 p.
⑪ ■本鳴瀧
正本山合砥 79 x 195 x 30 mm 912g 六型 京都右京区鳴瀧向田産出 極上特撰 販売済み
⑫ 本鳴瀧
正本山合砥 79 x 195 x 30 mm 927g 六型 京都右京区鳴瀧向田産出 極上一本撰 13 p.
⑬ 本鳴瀧
正本山合砥 75 x 204 x 28 mm 978g 六型 京都右京区鳴瀧向田産出 極上一本撰
12 p.
⑭ 竜王山巣板
合砥 78 x 207 x 50 mm 1.929g 京都市右京区嵯峨産出 優良品測面塗 35 p.
⑮ 山城
合砥 78 x 181 x 29 mm 808g 京都市右京区梅ヶ畑産出 硬質上等品 2.3 p
⑯ ⑰ 山城
合砥 63 x 182 x 31mm 859g 京都市右京区梅ヶ畑産出 硬質薄板極上品 2p. 1980 ツラツケ
合砥 63 x 182 x 25 mm 726g 京都市右京区梅ヶ畑産出 硬質薄板極上品 2p.
㉕ 本鳴瀧
合砥 挽き端砥「中サイズ」 京都右京区鳴瀧向田産出 極上鳴瀧の挽き端 (小鉋・鑿・槍鉋、カミソリ、メス、彫刻刀・ナイフ用) ※上記本鳴瀧購入の際、伴連れ使いに提供します。
合砥の扱い
「合砥」は、いきなり刃物をあてるのではなく、真っ平らに「ツラ出しの仕上砥に上質の巣板を水研ぎこすり、砥ドロを敷いて研ぎます。全体を平滑にする、品位の高いサイズのものをあてるのは、カップリングと言いますナグリ砥石は、同じような効果を使いますが、表面の詰まりを除去して研磨力を高めるナラシです。
名品とされる「巣板」は、よく降りますが、貴重で高価な砥石を減らさないで合わせてつかうので京都産出ものだけが「合砥」と呼ばれ。現在では採掘終了・歴史的天然物となりました。砥石を傷めない慎重な使い方で、京都ブランド銘柄と勘違いしているかもしれません。「合砥」古事来歴には、江戸時代の版本があります。
荒砥・中砥・仕上砥・合砥というカテゴリーは、作業の準處を意味してきました。厚み・岩層品位は経験知は多く、鉱物組成の岩色に顕れ、硬度・粒度は天然物なので測定不可能_地層の特質や大まかな分析研究データはありますが、日本砥石の研究はまだ未完の領域です。
原石採掘がなくなり、「戸前」などのパウダーを仕上げにつかう袋入りの商品が開発されましたが、現在も製造されているのか不明です。1998 年、第二回削ろう会武生では、木村砥石さんが二丁の仕上げ使いを直伝してくれました。
合砥の使いこなしは親方筋から覚え会得します。京都砥石組合発行の冊子には、合砥の由来や使いこなしまでは十分に記載されていないため、この分野の専門書はなく、刃物研磨・研ぎに関する知見をまとめるには到りません。鍛造品質や個人の技倆や好みもあり、体得する深奥の世界です。(追記 2022/12/12)
B.中砥 対馬砥黒、青砥 白砥 沼田砥
⑱ 対馬黒
中砥 A. 名倉砥 45 x x210 x 50 1.255g B. 対馬産出 虫喰い 77 x 221 x 64 上質品 3.000g 2.5 p.
⑲ 丹波青砥
本山青砥 100 x 100 x 234 mm
丹波湯乃花産出 田中砥石工業所販売 稀少品 / ミュージアムクラス 5.200g 5.1 p.
⑳ 青砥
本山青砥 68 x 215 x 56 mm 2.430g 山石マーク 普品 0.5 p.
㉑ 米山白砥 / 会津中砥
中砥 93 x 210 x 62mm / 80mm 2.174g /3kg
越後新潟産出 / 会津中砥 上質品 3,5p. / 4.5 p.
㉓ 白砥
正本山白砥 65 x 215 x 70mm ヤマ石鑛山採掘 特選 2.400g 0.8 p.
C. 荒砥
㉔大村砥
荒砥 58 x 222 x 78 mm 2.300g 紀州白浜産出 極上品 0.8 p.
天然砥石は、地層に堆積した鑛物ですから同じ品質のものはないのです。実際に刃物を研いでみないと研磨力の評価が難しく、ユーザーの評判や業界専門職の知見が一応の目安でした。砥石の歴史、岩石地層、商品種類、上質品の見分け方について、砥石の知識、専門職の伝承や調査研究資料が少しあります。因みに、高価な商品ですから各地のサンプルを買い集めるだけでも大変な費用と労力がかかります。
「日本砥石考 」- 続き 次稿に
産出地鉱山作業は重労働で現場に張り付いて調査研究することは極めて難しく、現在、砥石の研究は、日本砥石調査会の整理途中で作業は途絶えています。次稿で、削ろう会研修 記録 1996 – 1997 (日本砥石調査資料 他)を掲載します。
関連コンテンツ
削ろう会_日本砥石研究会資料 http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/3474
※ 価格は、ABE ギャラリーからお問い合わせください。合砥以外は、商号や産出地は業界の商習慣・通称を記載しています。
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木の総合学研究 2020 「日本砥石考_京物合砥」「木工、経師、工芸美術、料理、織物仕立て、医療 諸職の手仕事を支えてきた京都特産天然砥石 及び中砥・荒砥_ハンドツールジャパン」
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