「木」の歳時記「木識・木学」キコリ杣仕事木と人間の関わり木工林業・森林の仕事環境

なぜか蟲が入りにくい竹の新月闇夜の伐採-2 | 抗菌性オーガニッククラフト素材のベストハーベスト採り旬 | 生漆木口処理の抗菌蟲喰いガード・熟成富貴化 Insight 木の内科 – 56

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

10月28日は朔日。竹林が多い富士川流域高地の孟宗竹林、二年目の新月伐採に出動しました。晩秋の冷え込み、秋晴れベストコンディション。月齢は、植物や行動する地表の生き物に不思議な影響を与えています。

現在では水揚げ成長する春夏期に伐っていますが、昔から用材の樹木は晩秋から冬の新月「闇夜の日の伐採」が鉄則なのです。

里山陽表・急斜面ガレ場に育ち、長月の月末で水気が下がり、採り旬の良質材となります。不思議な材質変化がおきる新月伐採、竹の清浄感や耐薬品・抗菌性にも注目します。

 

一年目の蟲入りは僅か  工房「竹と暮らす」の実感

 

 竹のカトラリー制作「竹と暮らす」沖原沙耶さんの工房では、新月伐採材の違いがはっきり。毎年、蟲さんに貴重な宗竹厚肉材を喰われて居たのが激減。「パカーンと割れる、虫が殆ど入らない、自然乾燥が速い、狂わない」その生物の特異な変性は、経験的なもので伝承されてきましたが、未だ科学的に解明されていません。

小職は別のサンプル切り口、節間に国産生漆を塗り、蟲・黴・菌類の寄りつきを湿気のある付け屋根下で自然乾燥。一年間の自然乾燥では、縮み皺なく、ほぼ無害で割れも起きず、良好なナチュラルシーズニングとなりました。

2018年伐採一年間のナチュラルシーズニングと今年の新月伐り材比較

 生漆塗りには寄り付かない.

一年前の新月伐採材木口生漆塗り 黴・蟲除けのマテリアルトリートメント

 

不思議な材質変化がおきる晩秋の新月伐採 天然再生循環素材の耐薬品・抗菌性に着目します。

新月採りの竹材は、虫がはいらず、材質も安定してパカーンと割れる。竹細工職は、夏が終わり水をあげなくなり、秋の闇夜に切るのが定法です。さらに月の引力が地球の真裏にくると樹木は水分を下げ止まり、不思議な材質変化がおきているのです。

特に利用価値の高い立木は、「冬の新月伐採で良い材質が得られ高値」里山・杣人のコモンセンスでした。厳冬期伐採では雪解けまで寝かせ、春に搬出する事になります。含水率が下がり、時間ともに熟成して上質の材質となる富貴化もおきる。循環系自然素材のもつ優れた性質には、抗菌・防カビ、耐薬品性能などメディカルウッドワークスにも応用できるものがあるのです。

2018 -2019 木取りで判明する竹とび蟲喰い 5 月から9月が活動期です。

  

芯材部への 竹とび蟲入りは一本 2018年10月伐採材 ・室内乾燥約一年

竹林は伐らないと若返りが出来ない。放置すれば筍も出なくなる。

古竹を伐り除かないと筍は生えず、放置数十年も経つと荒廃して樅や杉・檜が侵入していました。竹取り継続利用しないと竹藪となり、増え過ぎて根張りが過密になって栄養分が不足。次第に衰弱して枯れ倒れます。手入れされた健康な竹林でないと更新がとまり、新しい竹は出てきません。

「孟宗竹の心くい蟲」資料(再掲)

竹材の被害甚多く、「とび」心喰い蟲は梅雨期に入る(苦竹・京都)

「がっとう虫」(竹の紅カマキリ) 八十八夜まで屋外に置いているととりつく

東京の孟宗竹には心喰い蟲・緑天牛が発生する。予防法は記載無し

S;「木材之工藝的利用  p.139 農商務省山林局編纂 明治45年 1912発行

■前稿:木竹新月闇夜の伐採-1  2018  工房 「竹と暮らす」沖原 紗耶

http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/23302

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木の総合学研究 2019  「竹の採り旬 抗菌性天然素材の新月伐採」「自然乾燥材マテリアルトリートメント・生漆木口ガード」

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