「木」の皮膚科「木識・木学」木の内科木界自然の造形

「樹」と「木材」の間に_侵蝕・損傷・ストレスをうけ変貌する樹体の内部|Zwischen Bäume und Holz_Der Verwandelte Interne|Between Tree and Wood _The Transforming Internal|見えない_知られざる樹性の華やぎを明らかに _木の内科 -90

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

抗体・損傷治癒成分を分泌して身を護り、侵入する微生物や細菌・虫喰いを封じ込め、防御力を発揮。同時に、肥大成長とともに倒れまいとして応力に対抗しながら年輪木理モクメをつくりだしています。

有史以来、樹体内の生命維持・防御の動きや伐られて木材になる過程のダイナミックな内部変化_細胞レベルの感知・バイタル反応には、気がつかないままでした。見たことが無い、未知のミクロコスモスなのです。

 前稿までの樹種毎のケーススタディから、類型や樹性に関する知見をまとめ、目をひんむくリアルな生命維持の様子とその変容を究明していきます。立ち木でいても、バッサリ伐られても動き続けているのですが、外からは見えません。樹木にとって、長い間の迷惑災難でしたね。

コンテンツ:

① 学説教科とは異なる「逆放射状向芯髄線」_応力に耐え補強する樹体構造を明らかに

Verstärkung und zentripetal_Um Belastungen standzuhalten und zu verstärken / Centripetal Reinforcing Ray works for the  structural stress-bearing.

② 細菌・虫類の防御_微生物の侵入阻止・封じ込め_抗体の発出・分泌・派出

Bakterien- und Insektenabwehr _ Verhinderung der mikrobiellen Invasion _Emission, Sekretion und Versand von Antikörpern / Bacterial and insect defense _ Prevention of microbial invasion_Issuing defensive substances, secretion and dispatch of antibodies.

③ 見事な損傷ダメージの自己修復・治癒

Spektakuläre Selbstreparatur und Aushärtung von Schäden / Spectacular self-repairing and curing of damages .

④ 抗体・材色の発出_分泌_取り込み_樹体内の変動

 Produktion von Antikörpern und Holzfarbe _ Sekretion _ Ausgabe _ Veränderungen / Production of antibodies and wood colour _ secretion _ issuing _ changes .

⑤ 針葉樹と広葉樹の生命維持中枢部の根幹的な違い_枝元入節・分散対対処 / 株根本中枢・集中制御

Der grundlegende Unterschied zwischen den Lebenszentren von Nadelbäumen und Laubbäumen_Filialgebundene dezentralisierte /zentralisierte Kontrolle innerhalb des Bestands./ The fundamental differences between the life-support central organ of coniferous and broad-leaved trees_Branch decentralised bound _Centralized control inside of the stock.

⑥ 長期自然乾燥による材質向上_マテリアルトリートメント「養生_熟成・富貴化」

Materialverbesserung durch langfristige natürliche Reifung _ Materialbehandlungspflege _ Alterung und Anreicherung / Material improvement by long-term natural seasoning _ Material treatment cares _ Aging and Enrichment.

⑦ 樹木生成物質_木香微細放散による治癒、及び医療薬剤への利用

Baum und Holzsubstanzen, die als Heilmittel verwendet werden_Erhöhte mikrodissipierende Wirkung / Tree and Wood substances used in curing and medicines_Increased micro-dissipating effects.

⑧「樹性・生命維持力_物性・美質に関する評価項目、及びチャート・ダイアグラム」の作成

Spektakuläre Selbstreparatur und Aushärtung von Schäden ,Tabelle und Diagramm zur Bewertung der Eigenschaften und ästhetischen Qualitäten des Baumes und Holz  /The chart and diagram for the evaluation of the properties and aesthetic qualities of the tree and wood.

本稿の記載内容

❶ 学説教科とは異なる「逆放射状向芯髄線」_応力に耐え補強する樹体構造を明らかに

Verstärkung und zentripetal_Um Belastungen standzuhalten und zu verstärken / Centripetal Reinforcing Ray works for the structural stress-bearing.

●髄線の現れ方_どこから発出し、伸長するのか_樹種による違い

A. 内皮から発出して向芯伸長するもの_青樫 山桑

B. 内皮下部_形成層境から発生する_ブナ アカシデ

C. 形成層から出て芯央へ生長する_櫟

D. 辺材白太の途中から芯央へワープして形状を変える_シウリ

E. 薄外皮下端・内皮境から伸長する_欅

・参考比較_髄線が出来ない散孔材質_イヌサクラ

A. 内皮から発出して向芯伸長するもの

青樫

関連コンテンツ:青樫
http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/6077

白樫

関連コンテンツ:http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/14437

山桑

関連コンテンツ:http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/23845

B. 内皮下部_形成層境から発生する

ブナ

途中から膨らみ_芯央で微細な「ブナ目」形に揃い

関連コンテンツ:ブナ
http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/7459

アカシデ

芯央へ向かうとくねり、拡がります。内部応力により、ストレートには入りません。立っている時に受ける揺れや肥大全体の拮抗バランスで剪断耐力を生み出して、斜め「筋違い的」に動的均衡が起きると推測されます。

関連コンテンツ:アカシデ

http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/32629 

C. 形成層から出て芯央へ生長する

ぱっと見ると、芯から外側へ出ている「放射線 Ray」に見えます。

年輪層_繊維層・細胞壁を貫通して楔状に嵌入していきます。

途中から斜め方向や曲がりくねり_膨らみ紡錘形や扁平、芯央で「かし目」に変形して落ち着く。

関連コンテンツ:櫟  

http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/27347

http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/23950

http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/12345

 

D. 辺材白太の途中から芯央へワープして形状を変える

シウリ

製材時にはみえなかった向芯髄線が、自然乾燥約8年で微細な髄線がハッキリしてきました。水分が抜けて、芯央材色のコントラストがついて経時変動が読み取れます。生材をカットしても、直ぐには識別できません。

E. 薄い外皮下端・内皮境から伸長する

欅 (赤)

極薄外皮内側から発出し内皮を貫通する髄線_細密な樹皮層は乾燥すると堅く鎧のようです。

千年樹「欅」の強甚な生命力は,辺材白太層にも出現するハサミ打ち_細菌・微生物阻止バリアにも観られます。

関連コンテンツ:欅 http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/28679

・参考比較 髄線が出来ない散孔材質_イヌサクラ

 

 青樫・白樫・楢・櫟・シデは、くっきり太く芯央へ向かい、倒れない折れないように靱性を高め、肥大成長と同時に樹皮内層から補強する水平筋の役目を果たします。

途中で形状をかえ、曲がりくねり_ジャンプ・ワープするもの等、広葉樹は「多種済々」_肥大成長に応じて強度要請を反映し、臨機応変。太く頑丈な薄平強筋から紡錘型、細密なものまであり、「放射髄線」というよりは、射出補強細胞というイメージです。

 日本の針葉樹木では、外側から入る向芯逆放射状髄線はなく、後から出現した広葉樹体には備わる、倒れにくい形質を獲得した優位な性質とみられます。更に腐朽菌や虫類の対抗防御_損傷ダメージの治癒力もまさり、自然の林相では、針葉樹は広葉樹に追いやられ、果実種のサイズや実生・繁殖力_環境変化への耐性など、歴然とした生命力の違いが顕れているのです。

■学生時代の「木材の組織」学術的専門書では、「芯材部は生命活動を停止し、もしくは死んだ組織で_木材は遺体である」と教示してきました。実際に樹木を伐り、木材を切削したことがないのでしょう。

■芯材赤身と辺材白太の材質を一体としてみない木材学は、明治時代初めにドイツ林学・木材組織論を手本にしたため、国内樹種との違いを観るよりも、欧米樹種の研究成果に当てはめようとしてきました。学理150年間の違和感が続きます。

■楢の髄線「虎斑」の誤説拡散事例 2019/06/14  「髄線放射組織は、栄養分を蓄えてている樹の組織です。土壌中のミネラル分を吸収した際の跡が筋状の木目となります。….」S: ブナ・楢材家具製造大手メーカーH社ホームページ掲載(引用出典は不明)

以下、続きます。

to be continued _ wird fortgesetzt

■木の内科- 90  連載コンテンツ

② http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/32927

③ http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/33043

 http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/33133

ⓒ2022 , Kurayuki Abe

All Rights Reserved. No Curation and No Business Uses.

複製・変形・模造・引用・転載作り変え・画像転用・キュレーション・業務利用を禁じます。

木の総合学研究2022   「樹木の生命維持構造組織「髄線」の現れ方_材質の特長」

 

 

 

 

▼ お気軽に一言コメントをどうぞ

次の記事: