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斧木柄ぶっちぎれ 有りえない白樫柄ヘッド剪断- 極めて危険な素人装着 「斧・鳶口木柄切断ケーススタディ 」 木のジョイント-17 追補

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

杣・木樵職が見たら絶句するほどの見事な樫柄もぎれ。有り得ない無法な「樫柄のすげ方」出現。斧ヨキの「ひつ」(嵌合孔)装着は、衝撃荷重を受け「段ツキ枘差し」では脱落、折れちぎれる。

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割りヨキ 斧 諏訪型 山梨県北杜市  fb 20161118

この斧柄切断事件は、最近のネット画像です。SNSページで公開された画像が目に止まり、大怪我につながると感じて電子メール意見を送付しました。ジョイントの専問家として放置見過ごせないので、樫木柄の解説・補足をいたします。

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従来、割り斧(ヨキ)は専問道具店で柄付き一体で販売されており、先端が飛ぶような大きな事故は起きていないと思います。専問職の使う斧ヨキは、自分ですげるので刃物と白樫柄が別々で販売されてきました。木柄既製品は用途や地域で仕様が異なるだけでなく、刃物の装着には、それぞれ熟練した専問技能を要します。
既製量産木柄は、使う人が調整できるように余長幅があります。標準的アラ削り状態で出荷される。刃物により装着ジョイントが異なり、西東、地方で仕様が違う。地元のやり方を専問職から指導を受けないとトンデモない危険な道具になり、また、斧・鉞・鉈・鳶口は凶器とされますから、公道では持ち歩けません。本来は、荒取りして数年間、自然乾燥した後に自削するものです。
ネバリ靱性が特に高い白樫柄がこのようにバッサリ切断するのは極めて珍しい。

この「ぶっちぎれ」を検証すると、幾つかのアブナイが見えて来ます。
① 樫柄ヘッドの切り口をよく見ると胴突きのように枘差しにしている。
② 段つきになり、衝撃応力が集中するため、柄に無理な力がかかり、木材の繊維組織を破断したもの。
③ 斧のサイズ・目方にあった木柄ではない。白樫柄サイズが大きく、元々合わない。
④ 鍛造嵌合部穴「ヒツ」に密着させ、削り合わせるのが面倒なので、太い先端を枘状にして切れ目をつけ、段ツキにすればキッチリ納まり止まると考えた。実際は、モーメントがかかり応力集中を起こす。
⑤ 頭部がハンマーで叩きつぶれている。日本斧は、通常は頭鋼を入れてないので斧頭と柄を痛める。片手つかいの「木馬(キンバ)斧」は、鎹・楔打ちをするので頭部に鋼入り。
⑥ 刃先が傷み、研ぎが遅れている。手入れ不足。

ほとんどの刃物道具は、つぎめ・装着ジョイント部から傷み、壊れます。異音・手応えなど切れかかる前兆があつたハズ。

棒屋木柄専問職がいなくなり、杣樵木匠の現場では斧鉞鉈を使うことが激減。調整・使い方をマスターしているプロも少なくなりました。因みに、木柄が既製品で斧や鳶口などの先端刃金物と一体で制作されないと、木柄装着の基本技術もなくなります。

現場作業をマスターしていない素人が、プロの仕事を真似るなどとは、夢にも考えられませんが、
実際に事故は起きているのです。このケースでは、二度目の破断と書かれており、怪我なく幸いでした。

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「ひつ」(装着孔)貫通・楔打ち 樫柄ソリッド材の衝撃吸収、耐久強度ネバリを丸ごと活かすヘッド装着

木柄自体の耐久力を守るため、ヘッドを切り刻まないのが常道です。大型重量級は斧・鉞は、研磨・楔交換のため楔打ちとします。小型の手ハツリになると「ひつ」が小さく、握り部木柄サイズが太くなるので、ヘッドの木端面を若干削ぐものがあります。衝撃が小さいものは木柄サイズ・装着方法も違う。既製柄は、買ってそのまま嵌めると不具合が起きやすい。斧柄は「枘」差しではないのです。斧(テヲノ)柄と刃を挿入する口を「ひつ」と呼ぶ。 漢字体は金偏に凶、若しくは、「恐」字の脚部を「金」。文政10年 「和漢船用集 巻 十二 」に記載あり。

「割り楔」は白樫材に効かない

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樫材はネバリが強く、割楔で拡がらず、はじき出す様になります。振動・衝撃力がかかり、接着剤は長くは効きません。
頭部に切り込みを入れると割裂、ソリッド材一体のボリュームが減り、耐久強度が大きく落ちます。
樫柄は一体貫通、非割りが原則ですが、ネジ留め保持力は大きい。

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日本の重切削刃物の木柄装着ジョイントは、衝撃応力を柔軟に逃がすジョイント構造です。樫柄の衝撃吸収に加えて、楔でダメージを吸収する工夫です。ヘッド部はソリッドの固まりのまま切り割りせず装着。打撲で柄が傷みますので、楔は下端の保護も果たし、研磨や柄の交換時に外せます。欧米・北欧シベリア地方では、剛性を第一に考え、割り楔で頑丈に固めてしまう。

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鳶口も段ツキでは外れる

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樫柄が太いため先端だけ削り合わせたもの(左)は間違い。段ツキ部分に梃の原理でモーメントがかかり滑り抜けます。穴径貫通にしないと梃の原理が働かず、力も入らない。

*小型の手斧は木柄握り太さに比べて「ひつ」サイズが狭いため段ツキ形になります。衝撃が少ない。
ヨキ斧柄の下端に楔打ちをする場合では、僅かに左右上端をテーパーをつける職人もいます。
*大型の鉞ハビロは刃物の自重で振り下ろす「ハツリ」作業。研ぎ優先の刃物装着。斧に比べ衝撃荷重はあまりかからないので柄木の下端にダブル楔打ちです。

あわや大怪我をする前に、凶器になるプロの刃物の扱い方と伝承を考えたい。

経験のない素人が山樵・杣職の真似事をするとは、全く想像できませんでした。一旦、大怪我をしたという報道が出ると行政が凶器として販売規制を始めますから、業界人は、斧・鉞・鳶口・鉈の取り扱い方も詳説していく時期でしょう。
まだ、鉞・手斧までは、素人が手をだしません。出鱈目な刃物装着は、大きな事故に繫がります。本来は柄付き一体でしたが、相対ではなくネット販売では、テクニカルノウハウは欠落。鳶職仕事師、棒屋職ベテランも専問道具店も消えつつあり、資料館の展示だけでなく、実際の高度な現場技能を詳説して次世代が使いこなせるように木匠刃物道具のキコルデータベースが必要となりました。

斧柄ジョイント「割楔・打楔」 棒屋の手仕事は、先端ジョイントワーク 木工ジョイント-17.

鉞斧柄ジョイント- 続 「 打楔仕込み」読書村杣師の「背子・前子」「西型・東型、木曽型・紀州系」木工ジョイント – 18

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読書村・総杣頭平林金太郎の杣樵道具 ヨキ斧・ハツリ鉞・鳶口・竹鳶・樹皮鎌 他  南木曽町立博物館分館 20141207AQ

ⓒ 2016 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究2016 「斧柄 装着ジョイント」「割りヨキ・鳶口刃物」「木樵・杣職の道具」「ひつ」斧柄挿入ジョイント

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