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斧柄ジョイント「抜け止め_割りヒツ火造り」のイノベーション|伐倒斧は、柄から抜けてぶっ飛んじゃならない「伐り与岐ヨキ」諏訪型御柱祭り御用| The innovation of SUWA ONBASHIRA felling axe with anti-falling claws and HITSU_ tightly handle fitting_ Separate mold forging head| ハンドツールジャパン- 44
事故・怪我を呼ばない安全斧は、神聖な祭儀式に使われる「御柱祭り木」の伐採に相応しい。「諏訪型・伐りヨキ」には、外からは見えない部分に「抜け止めツメ」が蠟ヅケされ、斧柄嵌入「ヒツ」の分割火造りという革新的な考案されていました。世界の斧類に類例がない、独自の造り込みを明らかに。
コンテンツ
① 諏訪型斧「伐りヨキ」の斧身刃形
② 「割りヒツ」分割火造り溶接_ヒツ鏨打抜きの技術革新
③ 柄据え嵌合ジョイント_係止ツメ蠟ズケの考案
④ 斧の錆びだし・磨き方
⑤ 刃先保護プロテクター「草鞋ワラジ編み」
⑥ 作銘鏨切り・商標刻印
⑦ 斧・ヨキの辞彙_名称の変遷
A. 薪割り斧 刃先を膨らませた割裂する斧
B. メドヨキ 切り刃は鋭く、刃先幅を広げない「メドヨキ」(榑クレ穴あけ)にも使う刃型
C. 伐りヨキ 伐倒・切断用 細身の鋭い刃形
伐りヨキ斧は、鋭く重く極めて危険なもの。柄からぶっ飛ぶことは、決してあってはならない。
❶ 諏訪型斧「伐りヨキ」の斧身刃形
「斧柄の長さは、腕の長さ」がベスト
伐りヨキ 実測図
斜めの「係止ツメ」は、分割ライン上に3mm_下端に3mmかぶる。
楔とヒツ両方にかかる位置に蠟づけされています。←重要ポンイント
ツメ寸法:厚み 約05mm_幅 9mm 長さ27mm / 蠟づけ傾斜 36°
❷ 「割りヒツ」「分割火造り溶接_ヒツ鏨打抜き」の技術革新
入隅コーナーを「ピン角」にすると、柄の密着で「躍り」がなく、衝撃振動が吸収され、嵌合が強くなります。
いわゆる躍らない、ピッタリきつい嵌め込みでガタがなく、柄も安定するので疲労破壊が起きにくい。
手や腕も疲れにくい卓越した先端ジョイント技術に注目しました。注文しても詳しい説明や品質安全保証はなく、使いこなせる人が感じ取る職人技です。
❸ 柄据え嵌合ジョイント_係止ツメ蠟ズケの考案
ヒツ内側:グラインダー仕上げ_ツメまわりの内側エグリは、挿入後に中で膨れて斧身と密着し動かない。
赤色部分は陥没した部分です。柄を嵌入するのは、さほどきつくなく、脱すのはかなり難しく往生しました。斧身をハンマーで叩かないと抜けませんでした。傷がつくほど。
「ヒツ」の重要性
ヒツは衝撃をまともに受けます。精度が高いものは、木柄がしっかり密着するので衝撃が集中して柄に伝わり、木部が吸収します。「ヒツ」は、耐久性能や使い心地を支配すると入っても過言ではありません。
ヒツの整形仕上げが丁寧で有れば、斧身と柄は躍らず、衝撃も減衰しますから、手や腕の負担が軽くなる。杣木樵仕事は捗り、安全です。
斧鉞オノマサカリ、玄翁ゲンノウも同じように「柄据え」が使い易さを支配するのです。
❹ 斧の錆びだし・磨き方
椿油が十分に染み込むと錆部分が次第に浮き出てきます。
研磨布は#400
❺ 刃先保護プロテクター「草鞋ワラジ編み」
刃先保護手編物
直ぐに脱せ、首にかけて刃先を包み、太糸をまわすだけ_忽ち被せるプロテクター「柔よく剛を制する」好例です。
鋭い刃先のまま移動・保管するには極めて便利な安全カバー。雨の日にできるセルフメイド。
撚糸・草鞋ワラジ編み_紐結びジョイントの手技_コンパクトで体裁も見事です。嘗てワラジを編んだ(綯ナウ)経験者は、細かい締め編みもお手の物でした。
❻ 作銘鏨切り・商標刻印
刻印は、頭に災厄を除け安全守護する神性の線刻を揃えず、わざと「乱」にする。頭に「長運齋 登録商標」の重ね打ち_「土佐」-「國光」- 「保険」半分欠けています。線刻も揃えず、短くしたり、一本だけツキダシ_厄除け安全護の印しですが、その由来意味を知らないから乱雑さが気にならないのでしょう。
更に、線刻紋に触れて数種の刻印をバラバラ半端に打刻しているのがとても不自然です。手が震えてきたらしい_刻印がかけた? 値引き問屋筋にいらだち、ド頭にきたの? ほくそ笑む御仁もいて、滅多に見ることはありませぬ。銘鏨切り・刻印は、上物_特注もの_問屋向け等 使い分ける。品質にも差異がありました。
斧の造りは秀逸ですが、読めない雑な刻印打ち・半端仕上げ_おそらく問屋の値切りに閉口していたのでしょう。訳あり、無言の抵抗と読み取れます。
■「土佐國光」鍛造_考案・制作年代について
割りヒツや内部のグラインダー仕上げ痕から、制作年代は明らかになるでしょう。
國光は、山林作業ハンドツールの産地「土佐山田」鍛冶職で「長運齋」系を引く職人ゆえ、活躍した記録がどこかに残るはず。
❼ 斧・ヨキの辞彙_名称の変遷
・斧の名称「割りヨキ_伐りヨキ」与岐ヨキ「鐇」タツキタツキ
和漢三才図彙 巻第二十「兵器 防備具」
「斧」乎能 オノ 与岐ヨキ(興着)木を斫キル者ハタツキ「鐇」タツキ
「ヒツ」字体は木偏に「必」_後世の刊行物では、「櫃」を充てています。
「斧」は、振り回したり、柄から抜けると死傷する極めて危険な刃物です。
「そのまま殺傷する武器に変わり、兵器に分類されます。近年の自然災害では、レスキュウに使われる頻度がたかまり、薪作りやアフターオイルエイジに備え、拙稿ブログへ世界各国からの閲覧が増えています。
エネルギーショックが起きる前に、暮らしを護る「斧鉞考」を整え、造り手を育成する手立てをすることも考えたい。斧を制作するのは、材料も使い、燃料費が高いのでやりたくないという若い鍛冶屋の話しでした。斧は、用途や民俗文化で様々な特長があります。
この諏訪型伐りヨキ斧には、柄の挿入嵌め(弾性固定)_ヒツの分割成溶接_蠟付け(金属接合)、楔締め_刃先カバーの編み・結び_撚糸絡みのジョイント技術が使われています。
石斧から 二万年、斧の歴史は更に続きます。「人新世」地球の迷惑一万年」
Tens of thousands of years after the stone axe, the history of the axe continues. “The Anthropocene,” 10,000 years of trouble on Earth.
※ 「御柱祭り」関連資料:諏訪郡茅野市北山_両角林業 両角英明氏から、地域伝承のご教示を受けました。
追記:昨日の「COP26 第26回気候変動枠組条約締約国会議_自然森林伐採禁止2030年 100ヶ国署名_実行性を確実にする「チェーンソー・重機禁止」も細目にあるんではないかと思料します。20211104
■拙稿 「斧」関連コンテンツ;
http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/30062
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木の総合学 2021 「諏訪型斧・伐りヨキの精査考察」「ヒツの形成_抜け止め係止ツメ_火造り鍛造技術革新_先端ジョイントテクノロジーの深化」「斧ヨキの種類_卓越世界品質_ハンドツールジャパン」