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完成度を極めた鉋鍛造刃銘の鏨刻練達|青紙スーパーY鋼ブラザーズ 仕様比較 |「日本台鉋新考」続々-2|名工碓氷健吾OEM下職から世紀末の作家的職人ブランドへ |ハンドツールコネクション- 23  

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

多くの鍛造鍛冶職の中でも、碓氷健吾の銘鏨刻みの技倆は別格。いわゆる問屋銘登録商標、影打ち擬造、 刻印量産物とは全く次元の違う高い品質と完成度を達成。名前を出せない時代からの研鑽は高い評価を生み、世紀末には随一の名工として刻銘も知れ渡るようになりました。鉋はツールジャパン、世界共通の木工シンボルです。

特殊鋼青紙スーパーY鋼の鉋刃・伴打ちブラザーズ 「真紀」と「華甲」

手仕事の作品には自ずと作風クセが顕れ、識別・同定できる手掛かりとなる類似の特徴が残ります。仕上がり細部を観ると、際立ち類似するパターン、勢い、文字の共通略体、連続性が読み取れるのです。

・「真紀」の副刻「やまあさ上」とは、奉り上げ、下職に控える暗喩と解釈。

・「華甲」については一文字で「削り花」華麗な木肌仕上がりを意味するネーミング、青紙特殊鋼の切れ味から銘名し、鍛冶塲ノートが残されているのではないかと思料します。

 産地問屋支配の時代の下職から、大工道具店プライベートブランド製造を経て、作家的職人としての表たった交流活動は、1998年第二回削ろう会武生大会からと記憶しています。個人オーダーを引き受け、火造り金属組織をマイクロスコープで研究し試削りを重ねる研鑽の日々。需要衰退による存亡をかけたユーザー直納、刃付け研ぎ解説書を添えて熱い対応を続けられていました。越後随一の独立職人ブランドの確立と卓越技能の公開は、後代への伝承を果たし、芸術的表現を織り込むクラフツマンシップそのものと感じています。

名工に別註できるツールジャパン     銘違いのファミリーモデルを四半世紀後に展観しつつ

 今さらに、四半世紀を経て「特殊鋼青紙スーパーラグY鋼真空溶鋼」を並べて見ています。ご存命ならば、仕事にまつわる出来事を相対で伺えば、鉋の技術世界の究極の方向が定まり、一段と耀くのではないか。鍛冶塲の火を落とされる前に、制作現場での身体記憶や、系統的な卓見を仰ぐべきでしたが、台打ち職青山駿一とともに、試行・研究を重ね、究極の削りを実現する長年の姿勢は、従来の職人イメージを越え、新次元を感じさせる見事なものでした。晩年、家族の生活を安定させるために多くの作品を打ち揃え、小鉋もいとわず、別註制作を快く引き受けていただきました。

制作依頼のボリュームは、職人の手間半月が目安です。火造りが安定して、制作作業も途切れません。稼ぎがアテになることも意欲を掻き立て、安心して良い仕事が出来ることも大事なのですから、値切りは御法度。背伸びして直接オーダー、仕事場へ足を運びお会いすることが一番。ウッドワーク道具刃物は、既製・セコハン・安物で固めるとCheap & Poor 貧相になります。

碓氷健吾作品のレパートリー・作風の同定

「華甲」と OEM相手先商標 「真紀」「上高地」それぞれ微妙に違う風貌でも寸法・造りは同寸です。大工道具店からの受注では、相手先商標・志向地により地紋フィニッシュを少しずつ変えていますが、細部の処理・雰囲気や寸法・刃角もピッタリ同じ。

 実測から、この三点とも共裏は同寸で仕上げ表面処理の近似から碓氷健吾作と判明しました。自銘「華甲」は、別納品と重ならようにデフォルメして頭の形を伸ばしています。どうです見事な裏金。購入者しか見れません。説明されなければ気がつかない微妙なハンマー打痕です。

「華甲」と「上高地」

 

「上高地」は、江戸屋大工道具店(松本市)の刻印 1999年本刃付け台打ち:青山鉋店青山駿一

 発註当時、最高度の技術品質と勢いのあった鍛冶職は、新潟では碓氷さんが産地を代表する品位として評価を得ていましたので、他府県からのオーダーが集まり、納品先に応じてスタイルを変えて行きます。このように異なる販売先の別註品が30年後に揃い並ぶことは、希有なことでしょう。

ユーザーは、碓氷作品であることは知らないまま道具店頭で購入。小職も各地の道具店や台打ち職に別註して数多く記録していくうちに気が付き、隠れた銘品のその出所がようやく突きとめることにつながりました。考えてみれば、当時の最高レベルの鉋鍛冶は限られてしまうので、身元を隠しても作品から突きとめることができます。

販売店では、下職・取引先は教えませんし、問屋トバシや値段が割れたり、客が鍛冶屋へ直接註文することもいやがり、同業者に覚れないように鍛冶職名は表に出さなかったのです。

 OEM相手先商標や無銘下職の時代の手仕事を突きとめることは、制作ノートが無い限り身内でもかなり難しいのですが、長期にわたり各地販売店の別註品の類似から碓氷作品の造り分けのレパートリーを界間見ることができました。

ⓒ2019 , Kurayuki Abe

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木の総合学研究 2019 「世紀末名工作台鉋刃銘刻の解析」「青紙特殊鋼鍛造鉋ブラザーズ」

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