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台鉋の刃鋼は、地金より僅かに高く鍛接火造り。名工鍛造品は研ぎ易く、刃先が速く整い、引きがかるい。存分に削り、仕事もはかどる。研ぎ減らし、ちび果てるまで使えるもの。もっているだけでスキル・メンタルアップ。仕事への情熱や自信がわいてくる「福」作用があるから不思議。
削りモノが苦にならず、体が疲れない。優れた道具は、動作も洗練され耀く。名品に恥じない上質の仕事を心がけるから、自然に格好よくなるという。
鋼端をなだらかに地金へつなぎ、銑がけで整える「かせ・カエシ」は、名工作品にその形跡を残し、すぐ見分けがつきます。刃裏のスキと鍛接鋼の端の処理・ボーダーは、仕上げ手法と性能を判断する目安になります。
鍛接鋼の端「かせ・かえし」は、貞秀・雲海にはハッキリみえます。新潟・関東・東京系ではグラインダーで平削り、鋼端を整えるために線刻して手間を省き体裁良く仕上げています。本元の鉋鍛冶仕事は、見ているだけでは身体記憶にならず、真似しきれない。この微妙な造りは解りません。どんなに似せても近づけない直伝の怖さ、本流の凄みを感じさせる技があります。亜流・模倣は、超えられない。
碓氷健吾著「鉋の研ぎ方」1.裏刃の研ぎ方 1998
碓氷健吾作品では、相手先商標製品、華甲は、鑢・グラインダー仕上げで平削り。「魂心作・建明」では、貞秀の技法に近い「かせ」をつけていますので、本来の丁寧な仕事をご存じだったかと。
その一方、自著の「台鉋取り扱いの要点、鉋刃の研ぎ方」図:4には、鋼ラインをフリーハンドで波打ち乱れて描いています。「かせ」ならば、帯、もしくは、二本線になるところですが、自分銘とOEM相手先商標と使い分けたのかもしれません。鉋教本には、「裏スキ」は記述されていますが、鋼端接「かせ」と鋼研ぎ減らし果てについては言及がない。更に、砥石に頭が乗る頃、切れ刃は最高調なのです。
本元の技「カセ(カエシサキ)」と 鋼鍛接位置を示す地金境界線つけ「ライン」の違い
地金・鋼鍛接端の乱れを紛らわし整えるため、鎚の打刻や銑による削り肌をつけてきました。意匠として刃形も個性的な作風にしたのです。産地の様式傾向があります。
自然光反射による照り輝き
鋼鍛接「かせ」カエシ先端 (鍛接境界線)地金肌模様つけ加飾仕上げ
また、銑がけから、鑢ハンドワーク、グラインダーへの移行が起き、仕上げ方法での制作年代が識別できます。鋼境も位置を線キリ、散らすのが少し違和感がありますが、知らなければチビルまでわからない。美しい鍛造アート的鑢仕上げには、鉋鍛冶「も作」や玄翁鍛冶の長谷川幸三郎が有名でした。
価格を抑え、見栄えを良くした簡易仕上げは、半端な職人に判らない。本物の造り、取り扱い伝来の知識は風前の灯火。歴代の名作ツールジャパンの頂点、篝火(かがりび)ぐらいは研ぎ減らさず、錆びることなく、鍛造史に残したいと考えます。
銘 千代鶴貞秀(本名 神吉義良)鑿・鉋鍛冶四代目
輝き出す貞秀鍛造鉋刃に青山駿一の白樫台入れ_名工コラボレーションは次世代へ渡します。
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木の総合学研究 201-2020 「世紀末名工鉋刃の評価・細部技法」「台鉋の刃鋼端接・地金の芸術的造形 ハンドツールジャパン」