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鉋台直しの実際|The tuning of Japanese Hand Plane DAINARASHI and completed structure | 一枚刃・二枚刃_荒鉋・中鉋・仕上げ鉋包み彫り_要所・細部の違い_日本平台鉋構造の完成|平台鉋新考続々 ハンドツールジャパン – 45

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

「台直し」は「ナラシ」「ナオシ」_削り具合を調整するチューンニングであり、台下端の平面度を保ち、刃の喰いつき加減や面精度・仕上げ肌を整えるものです。楔形の鋼合わせ刃を打ち嵌め、刃口を空けると樫台は強く締め付けられ、台の収縮変形がおきるので切削面の調整が必須_日本台鉋の宿命なのです。

前稿「鉋は木工のシンボル | 台鉋の宿命台直し・調子を整える刃口口木入れ・木っ葉返し| ハンドツールジャパン極め造り替えと調整詳細|國政流の相伝ー11

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コンテンツ

①「鉋下端は真っ平ら」青山鉋店の基本

② 一枚刃鉋・二枚刃鉋の違い_木型職の荒鉋アラシコ・中鉋・仕上げ鉋調整例

③ 長台鉋の下端調整_指物木口台・留台削りでは刃口先をスク微妙な加減

④ 三代相伝で完成された台鉋構造の要所細部_「青山鉋は刃が躍らない」

⑤ HINA 大工舎の手早い下端調整

面直し器で平面にナラシ、立刃台直し鉋でスキ、仕上げは逆勾配斜め刃の台直し鉋仕上げ

⑥ 日本台鉋の来歴「突き鉋・推鉋」工匠具のルーツ

「刃を起こすと逆目はとまる_刃を寝かせると、引くのは楽だが逆目になりやすい。

刃先角は、30°標準 / 逃角 6ー8°でよい。刃物・砥石には相性があり、研ぎ手の個性も反映する。」 青山鉋店青山駿一 談 2002年

❶「鉋下端は真っ平らにする」青山鉋店の基本

台入れ専門職三代115年の経験から、下端のナカスキ調整をしません。

❷  一枚刃・二枚刃の違い_木型職の荒鉋アラシコ・中鉋・仕上げ鉋調整例

 

荒鉋の刃口上スキは、チョウナ削りの後に平らに削るため台頭をおさえて、推し削りした初期台鉋の特長を引いています。

座りこんだ姿勢でシコシコ動かして板を削りました。逆目を抑え、平らにするため「鉋刃穂」の角度を40°(約8分勾配)におこしています。

「木型制作法」では、「荒仕上鉋」「中仕上鉋」「仕上鉋」と分類していますが、本稿では、指物職人用語の「荒シコ」「中シコ」「仕上げ」とします。 当て字「仕工」(「仕上げ」は最終段階になるので「荒・中」には「仕上鉋」をつけません。現場では使わないので、管理職が推敲して整えたと思われます。)

鉋穂の角度 (押さえ溝角度)

・荒しこ  40°内外 →     約8分勾配  42°   粗削りに多く使われる

・中しこ  32°内外 →  約7分勾配  31°   木型制作作業では最も多く使う

・仕上げ  29°内外 →  約6.5分勾配  26°   仕上げ鉋は二枚鉋が多い

※ 木型サイズは大きいものではないので実削する面積は狭く、中鉋_仕上げ鉋と順に台長さが短くなっています。「シコ」は指物職人用語 「ヒ」「シ」が発音しにくい江戸弁では、アラ彦ヒコという人もいました。( 図版は現場職のメモ描きしたもの_角度・刃口は正確ではない。)

1枚鉋の塲合

1 2枚鉋に比して力量を餘り要しない。

2   削り面に光澤が有り美麗である。

3   逆目の立ち易い木は削れない。

4   裏金 (押金)を穂と合わせる手數が省ける。

5   節や瘤があるものはその部分がよく削れない。

6   刃先の破損が多い。

而して木型作業に使用する木材は餘り硬木を用ひず又節や瘤のある木材は用ひない関係上一般に1枚鉋を多く使用している。原文ママ

(刃の研ぎ減らしが速いので穂寸法が長め_自作でき、台入れは難しくなく価格も安い。ベテランは、一枚刃で仕上げます。)

2枚鉋の塲合

1   仕上げ作業では一枚鉋に比し骨が折れる。

2   削った面に光澤がない。

3   逆目でも良く平坦に削れる。

4   裏金(押金)さは良く穂と合わせないと2枚鉋の効果を失ふ。

5   節や瘤の部分も良く削れる事ができる。

6   1枚鉋に比して刃先の破損が少ない。

■「木型制作法」 昭和12年 合資会社共立社発行

堀 兼作・杢子潤二郎 共著   p. 198   152mm  x  225mm x13mm

 

 

 鐵道省新小岩工場・大宮工場の鋳造物木型制作に関する現場実務_基礎作業を詳述した内容で工業學校や工場徒弟養成参考書として刊行されたもの。現場職の口述を教導管理職が整理して編纂されたという印象ですが、引用はすくなく実際の作業内容に即しています。

■現在は木型制作に木材を使わない

木型用材には、明治以来、狂いが少ない檜、姫子松(高級木型用)、ホウの木(小物用)、桂が使われていましたが、2005年頃に木型材料は発泡スチロールに替わり、木材が急に使われなくなりました。

❸  長台鉋の下端調整_指物木口台・留台・合掌台削りでは刃口先をスク_ 微細な加減です。長台摺台では、刃口先の平アタリは少なく、被削材木理により刃の喰いつきを整えます。

長期間使わないと台下端は動いています。

鉋刃の切削性は、職種・材質、研ぎ方・刃口調整によりマチマチです。

 樫台は収縮変形するので、「刃の喰いつき」を良くするために台頭_刃口周縁_台尻の三ヶ所を平にして被削材面と刃当たりを加減します。削り方により、刃口をわずかに下げるなどの工夫をします。現在まで出会った大工職・指物・建具・家具制作、木型、箆杓子、額装、宮師、鞘師各位も大方似たような台の調整をしていると思います。楽器製作の塲合、堅木・針葉樹材の扱いに特別なものがあります。

西洋鉋は推し削りですが、切削面をサンディング・塗装仕上げにするので、日本台鉋ような綺麗な木地を尊重し、神経質な扱いはしません。長く使われ、台直しで薄くなり、一代限りのライフタイムです。

❹ 三代相伝で完成された台鉋構造の要所細部_「青山鉋は刃が躍らない」

 数人の鉋専門職に制作を依頼して記録していますが、三代115年余り続いた青山鉋店の手仕事は別格です。刃身の締めつけ固定と脱着を配慮し、要所細部の合理的て丁寧な造りが判ります。長い時間を経てきたシンプルな台鉋構造ですが、洗練され完成された構造となりました。形状・刃口部分は、職種で異なり、材質や削り方も一様ではないのです。

青山駿一作 台鉋の要所細部 1993 – 2003

刃口上端の損耗例

刃口上端の損耗_ストレートに切ると衝撃で傷みやすい。青山鉋では、刃研ぎにあわせた緩い湾曲をつけ刃のストレスを軽減しています。要所細部は、他の専門職には見られない丁寧な仕事でした。

制作者が異なるモノを買い揃え、使いナラスころには鉋台も変わり果てており、単純に比較することは難しい。

❺ HINA 大工舎の手早い下端調整 _青山鉋御用足し

■現役大工職の台直ナラシの方法

変形歪みを直定規で診る→平面確認の鉛筆転写→平削り具で摺り合わせ→立刃台直鉋・逆返りコケ鉋で平に仕上げる。

下端定規は、金属ゲージで仕上げ確認につかいます。丁寧に台の調整をする工房作業では、変形歪みをとりながら刃口部分もあわせて削り具合を調整します。道具刃物の手入れも骨休めと言いました。

  

「青山鉋は長く良く切れて、躍らない」

名工作品を所持している現職の伺うとその個性などが判ります。

 

(寸八鉋・台直しハイス刃は青山鉋店製 協力:HINA大工舎 朝比奈龍成)

■立鉋二種  ストック品

垂直刃・逆1分コケ筋違いハイス刃_兼房特注HISS

※刃先がぶれない靑山鉋の新品ストックあり _制作費12.000-実費で販売しています。

問い合わせページからお申込みください。(2022年6月現在)

世紀末、青山鉋店では評判の高い「も作」「碓氷」「宮本」「貞時」等、鍛造鉋刃の品質を極めたものが多くなり、別注名工作品をズラリ揃えることができました。日本平台鉋が完成した重要な時期となります。

❻ 日本台鉋の来歴_「鉋」・「突き鉋・推鉋」工匠具ルーツ

■「新撰類聚往来 上巻 番匠之具 鍛冶之具」 室町時代後期書写本_丹峯和尚 作 慶安元年版 1648

現在でも同じ名称が使われいます。計曳ケヒテは、「罫引き」「毛引きケビキ」に変わりましたが、500年間近く変わらない_完成された大した道具なのです。

 

■「和漢三才図彙・百工具」には、「豆木加牟奈マキカンナ」「突鉋ツキカナ」「竪鉋タテカンナ」「圓マル鉋 「脇鉋ワキカンナ」を記載、江戸時代中期 正徳2年 1712 年版

 

■「和漢船用集巻第十二」  金澤兼光編 文政10年  1827

初期の台鉋立刃は、抜き差しの支柱と刃形を舟の帆に見立てていたところから、「穂」という名称が残りました。

「和漢船用集  工匠之具」では、材料のほうを刃先にあてる突き削り「正直ショウジキ」からの改良である「推鉋オシ鉋カンナ」の解説や「麁鉋アラカンナ」「中鉋ナカカンナ」「上鉋アゲカンナ」「短臺ミジカダイ」の記事があります。

■台鉋系統図

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木の総合学研究2021 「日本台鉋新考_台直し」「一枚刃・二枚刃鉋削りの違い」「台直し鉋のルーツ・文献」「台打ち専門職三代により完成された日本台鉋の要所細部」

 

 

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