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刃物は斜めにすると切れ味が上がる / 良く長く切れる筋違い鉋刃斜め刃つかい|実際の実削角度と台鉋の動き_木口台・留台・合掌・摺台_朴研ぎ| SUJIKAI Diagonal blade works sharp and long life-planing|國政流の相伝-12  ハンドツールジャパン -43   

阿部蔵之|木とジョイントの専門家

台鉋刃角度は、外見では識別出来ない微細な違いですが、板目・柾目、木口面では木理・材質はいろいろ。複雑で実際の切削力に影響します。刃角度は、広葉樹堅木類と針葉樹や桐・沢胡桃の軟材に対して切削性能に大きな違いがあります。

普通の平台鉋と良く切れる筋違い鉋斜め刃にかかる力の違い

■刃先にかかる力と方向 筋違い斜め刃の高い切削性

 斜め刃にすると刃先にかかるベクトルは、斜め方向の分力が働き、横斜め方向に分力 Fb が生じ、木理組織を鋭利に切削することができます。

三分拈り斜め刃にすると約2割り軽減され、同じ力Fで鉋台を引くと切削力が増強し、良く切れるという実感があるのです。普通の鉋でも切れ止んだまま、研ぐのが面倒で鉋を斜めに引くと、回復してまだ少しはいける。短い時間ならば、なんとか削り続けられる。

 逆目やバイヤスに当たると抵抗が増え、台の方向は傾きますので、自然に切れる方向を覚えて感覚が身につきます。長切れする刃は、研ぎに関係する地金や鋼鍛造熱処理・成分組織に影響をうけ、安定した丁寧な造りの名作が多かった時期があります。

木口台_留め台_合掌台・摺り台 斜め削りの刃角・手の動き

① 木口台削り  Cut end Planing Board

 

木口台は、直角・45°二種

② 留め台削り

 

 

③ 合掌台削り

 

④ 摺台・長台アテ 返し削り突き鉋

 台鉋刃角度は、外見では識別出来ない微細な違いですが、板目・柾目、木口面では木理・材質はいろいろ。複雑で実際の切削力に影響します。刃角度は、広葉樹堅木類と針葉樹や桐・沢くるみ等の軟材に対して切削性能に大きな違いがあります。

筋違い斜め刃は、良く長く切れ、木口面や逆目・バイヤス、交差木理・節回りを綺麗に削れる。

 沢クルミ、栗・椎、シウリ等は、春夏材部と秋冬目が斜め逆向きに肥大し、交走木理と呼ばれます。

  立木は、倒れまいと内部応力が拮抗するように肥大成長すると同時に、複雑な歪んだ組織をつくり出し、刃を寝かせると刃先からむしれてケバタチ、鉋刃先を起こすと逆目はおさまります。逆目や堅木材は、研ぎ角度・裏金、刃口を調整するとともに、斜め刃削りと勾配をきつくした立刃、返り・逆コケ鉋で対処できます。

切れが止まった時の一時凌ぎ「ホウ研ぎ」について

 平台鉋刃では、木材組織に均等にあたり(等分布荷重)摩耗して先端部がシャープではなくなり切れがとまる。 直ぐに研ぎ直せない時は、朴の木口面でこすると一時的に切れ続けます。

ホウの木は、晩秋一斉に葉を落として冬目は一時停止したまま春まで動きません。年輪が微細で、均質緻密な材質ですので、微細な刃先カエリ_切れ戻りをつけることができます。仕上げ砥の「カエリトリ」と同じような使いができます。こすると刃先が少し回復するのですが、水研ぎ研磨紙相当で#1000 ぐらい。

 

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前稿「送り蟻」と「呼子」「木口台・留め台・合掌台の組み削り台」

國政流の相伝-4. 木工ジョイント -23. http://kurayuki.abeshoten.jp/blog/9888

以上、実際の斜め削り刃角について明らかにしましたが、実削では刃物品質や削り手のスキルに左右されるので、いろいろな樹種を経験することが鉋かけが楽しみになる常道と言われてきました。優れた道具刃物は、背中を押し、出来映えが自信となり、気分を高揚させるものです。

組み削り台は、洗練された動作を導き、完成度を高めます。

 

 ◉実削重要コメント-01.  2021/05/01    

「興味深く拝見、大変有用な記事ですね。イラストが簡潔で理解しやすいです。

阿部さんのブログは、手道具の使い方を後世に残す意味でも大切ですね。

留め型のイラストと写真、今は残念ながら懐かしい物となってしまいました。

留めを合わせた時の精度は丸鋸切りっぱなしの場合とは別次元の気持ちよさですね。

この気持ち良さこそほんとは重要な事なんですよね。

手道具の衰退と共に人間が鈍感になってしまった。

私は留め台や木口台用の鉋は刃口を少し低くして、台から出た分だけ削るようにしていました。

長台鉋の頭と台尻が留め台と接するようにすれば、留め台を削ってしまうのを少なく抑えられます。」

「襖屏風・額縁専門職二代目 家具制作漆工 牧野弘樹

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木の総合学研究 2021 「斜め鉋刃の優れた切削性」「木口台、留め台、合掌台、摺台の実際の切削角度・手の動作について」

 

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